2023.12.05
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まかせて きゅうしょく〜わくわくきゅうしょくパーティーをしよう〜 【食と文化】[小学1年生・生活科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第201回目の単元は芦屋市立朝日ケ丘小学校の「まかせて きゅうしょく〜わくわくきゅうしょくパーティーをしよう〜」です。

授業情報

テーマ:食と文化

教科:生活科

学年:小学1年生

栄養教諭を含め3名の教師で授業を進めます。複数の教師で支援することで個人やグループの活動を丁寧に見とることができます。食育の視点では、年長児に給食について伝える活動を通して、給食についての理解を深め、苦手意識を少しでも減らし、栄養のバランスを考えて食事をとることができるようにしたいと考えました。また、OPPシートを使って、子どもたち自身が自分の学習の足跡となり、次の課題や学習活動に取り組みやすいように学習に取り入れました。

給食室探検「ここは どこでしょう」

ここはどこでしょう

授業は、給食室探検をすることから始まりました。
調理室には直接入ることができないので、栄養教諭が準備した動画や写真を参考に給食室の様子や調理師さんの思いについて知ることができました。
「いただきます」「ごちそうさま」には意味があることを知りました。どちらの言葉にも「ありがとう」の気持ちが込められています。
他には、少しでも給食に興味を持ってほしいという願いから、栄養教諭から給食に関するクイズを出題してもらいました。

朝小の自慢を考えよう

次に、朝日ケ丘小学校のじまんを考えました。
4月からの学校生活をふりかえり、小学校の自慢をグループで話し合い、学年全体に広げることをしました。
班で話し合いながら自慢を話し合っています。どの班からも給食について、たくさん作るからすごい、いろんな道具を使っている、ワゴンで運ぶから便利、もちろんおいしい!ということが自慢に出ました。
このことを「おうちの人に伝えたい」という意見はもちろん、「年長さんにも伝えたい」という意見も出たので、伝える方法として、「いっしょに給食を食べたい!」ということで給食に招待することになりました。

わくわく給食献立を作ろう

きまったよ!わくわくこんだて

「わくわく給食パーティー」という会の名前をみんなで考えました。年長児はもちろん、自分たちもわくわくできるパーティーを開くという思いをこめて決めました。
まず、年長児に喜んでもらえるような献立を班ごとに相談して考えました。いくつかのメニューを栄養教諭に準備してもらい選択することにしました。
なぜ、このメニューを選んだのか理由も話し合いました。班ごとに発表し、それぞれの献立の良さに気づくことができました。

わくわく給食パーティーを計画・準備しよう

わくわくきゅうしょくパーティーをけいかくしよう

わくわく献立が決定したら、次に「わくわくきゅうしょくパーティー」を楽しむためにどんなことができるのかを班で話し合いました。招待状を作りたい、ポスターで知らせたい、看板を作りたい、パンフレットを作りたい、味わって食べてほしい、クイズをしたいなどの意見がでました。これは、朝小まつりを経験しているので、どんなことをすると楽しくなるのかを思い出すことができました。
班ごとに役割を分担し、準備を進めました。出来上がった招待状は、幼稚園、こども園、保育所に届けました。ポスターには、今日の献立について説明をしたり、給食のルールについて知らせたりしました。「年長さん、喜んでくれるかな」「隣で食べたいな」などつぶやいていました。自分たちもわくわくしながら、年長児に寄り添って活動していました。

わくわく給食パーティーを開く

「わくわくきゅうしょくパーティー」は2回に分けておこないました。1回目は、保育所、こども園(24名)、2回目は、幼稚園(48名)の年長児を招待しました。1年生がランチルームで給食を配膳しました。配膳した給食を取りに行く方法や食器の並べ方を教えてあげることができました。食事中も今日の献立について説明したり、朝小の自慢を話したりすることができました。給食後には、班ごとに考えた3択クイズをし、楽しむことができました。「6年間で給食を何回食べるでしょう?」「朝小の人気メニューはなんでしょう?」などがありました。1年生も年長児も楽しい時間を過ごすことができました。

これまでの学習を踏まえてOPPシート(学びのあしあと)を活用し、自分の学習の軌跡を残せるようにしました。
「どうしたら、給食を喜んでくれるかな」という問いを学習前と学習後にしています。
以下が学習後の子どもたちの振り返りです。

子どもたちの振り返り

〇「わくわくきゅうしょくパーティー」はすごいと思った。年長さんが「クイズが正解してうれしい」と言ってくれたので自分もうれしくなった。
〇いっしょに給食を食べることができて楽しかったし、飾りも喜んでくれてうれしかった。

〇学校のことをまだ知らないので、知らないことをクイズで教えたら喜んでくれました。

国語科「しらせたいな、見せたいな」につなぐ

「わくわくきゅうしょくパーティー」の様子を保護者に文章で伝えました。年長児と楽しく給食を食べたことだけでなく、自分たちが年長児のために考えたことや準備したことを表現し伝えることができました。それとともに、OPPシート(学びのあしあと)を持ち帰り、保護者から感想をもらいました。「計画から準備、実行する楽しさが伝わってきた」「キラキラした目で話してくれたことがうまくいってよかった」などの感想がありました。子どもたちの満足感や達成感が保護者にも伝わったようです。

授業の展開例

・調理師さんが給食を作る姿を通して、給食への感謝の心を育てる。【道徳】

友延 光代(とものぶ みつよ)

芦屋市立朝日ケ丘小学校
低学年を担任することが多く、生活科や国語科等の教科と関連付けた食育の学習に子どもたちと楽しみながら取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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