2022.07.22
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やさいげんき2年1くみGOGOGO!!(4) 【食とくらし】【2年・生活科】

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。
第186回目の単元は「やさいげんき2年1くみGOGOGO!!④」。前回は、兵庫県西宮市立北六甲台小学校の2年生が他学年の子どもとの出会い・交流を通して、協働的な学びが生まれ、学びを深めた姿を紹介しました。第4回は、個別の見取りから、個別最適な学びを目指して取り組んだ事例を具体的な子どもの姿からお伝えします。

1.個別の見取りシートの活用

図1 個別の見取りシート抜粋(野菜の栽培)

誰一人取り残さない学びとするために、子どもそれぞれに指導の個別化を目指して取り組む。
そうした個別最適な学びの在り方を考える際に、子どもそれぞれの学習進度、子どもの思いや願いの把握といった個別の見取りが欠かせない。

そこで、子ども一人ひとりを見取るために、朝や休み時間のお世話の様子、発話、朝の会におけるスピーチ、生活科の授業における姿を個別の見取りシートとして記録する。
そうすることで、子どもたち一人ひとりに応じた学びの在り方を検討する手立てとした。(図1)

2.Eさんの個別の成長を見取る

個別のシートから、今回はEさんの野菜の栽培活動について、どのように取り組み、学びを深めたのか見ていくこととする。
Eさんは、以前、家庭のベランダですいかを育てていた。しかし、世話を怠り、枯らしてしまった経験がある。そのような姿からも栽培活動に対してムラがあり、継続的にお世話に取り組むことが難しい子どもである。

そんなEさんは、今回、大玉すいかを土嚢袋で栽培することにした。
以下の資料(図2)は、Eさんの見取りを抜粋したものである。

図2 Eさんの個別の見取りシート(野菜の栽培)

【Eさん】大玉すいか
・日当たりの良いところに移動。(日当たりを意識してお世話している)
・水やりもこまめにやる。家のベランダで小玉すいかを植える。
5/26 野菜名人に聞いて、つるを切る。
5/27 みんなで育てている野菜のプランターを雨の中、軒下に移動した。
5/31 きゅうりのつると茎の違いを先生に言う。よく気づいている。
6/8 虫が地面からのぼってくることを主張。
6/9 放置しておいたピーマンの中に種が入っていることに気づく。(シャカシャカして鳴らす。)
6/10 地面に段ボールを敷いて、すいかのつるが友達に踏まれるのを防ぐ。虫よけネットで虫を防ぐ。
6/15 雄花が咲いていることに気づく。全部、雄花だと主張。◎雄花と雌花の見分けがつけられる。
6/21 雌花のつぼみを発見。楽しみにしている。
6/24 朝、「先生、友達が触っていたら、雌花がとれた」。Iさんに雌花を触られて、ぽろっととれた(たぶん受粉していなかったからだと考えられる)。「今日、雌花がぽろっととれました」(朝のスピーチ)さわったらいけないと、改めて気づく。
6/25 朝一番に「先生!雌花咲いた~」とうれしそうに訴えてきた。雄花と合体させる(受粉させる)。「今日、朝、大玉スイカの雌花と雄花をくっつけました」(朝のスピーチ)
6/28 「スイカを見たら、二個同時に大きくなっていました」(朝スピーチ)
6/29 「すいかが昨日よりでかくなっていました」(朝のスピーチ)
7/1 「すいか2つ(雌花と雄花を)くっつけて大きくなっているけど、片方のスイカの成長が止まった」(どうする?とる?)「ん~観察してみる」毎朝、観察する。
7/2 「すいかが大きくなっていました」(朝のスピーチ) 放課後、1年生がすいかを触っていて「さわらんといて」ときつくいってしまう。「先生さっき1年生にきつく言ってしまったんやけど触ってほしくなかったんや」切実に語る。素直に一年生に謝る。
7/7 「すいかのでかさ(大きさ)が変わっていません」(朝のスピーチ)
7/20 「すいかが元気だと自分も元気になる」(朝のスピーチ)
8/1 すいかを収穫しにやってきたが、カラスに食べられていた。しかし、「(すいか)持って帰る。ここらへんは、食べられるかも。だから、ぶわ~ってかぶりつくわ」と言い、持ち帰った。

(1)対象への切実な思いが気づきの質を高める

個別の見取りシートからわかるように、Eさんは自分の育てていたすいかに対する思い入れが強くなっていることが見て取れる。すいかのつるが友達にふまれるため、段ボールを設置したり、虫から守るためにネットをかぶせたりするなど、すいかができるように大切に育ててきたのであった。

6月15日には、雄花と雌花の違いがわかり、見分けていた。自分のすいかには、雌花しかないため、実ができないということにも気づくことができた。すいかに実がついてほしいという切実な思いの高まりが気づきの質を高めていることが確認することができた。

(2)野菜の栽培が自分自身の日常生活へも良い影響を与える

図3 Eさんの1学期の生活科のふりかえり

1学期終業式の7月20日には、朝のスピーチで、「すいかが元気だと、自分も元気になる」と発表したように、すいかの成長を楽しみに学校生活を送っていたことがわかる。Eさんの姿として、毎朝、世話が続くようになり、野菜に対する距離が縮まり、主体的に栽培活動に取り組むことができるようになった。
Eさんは、1学期最後の生活科の授業で(図3)のように振り返りを書いた。

Eさんは、育てていた野菜を自分のことのように書き、野菜を元気に育てることで自分の気持ちも元気になり、楽しくなると自分の生活につなげて振り返った。対象に働きかけ、自分も楽しく生活できていたことがわかる。
個を見取り、指導を個別化して支援することで学びに対する意欲は格段に高まり、思いや願いの実現に向けて取り組めるようになったと考えられる。

(3)夏休みにやってきたEさん 

Eさんは、夏休みにやってきて、すいかの収穫を行った。しかし、すいかは、前日にカラスに食べられ、半分しかなかった。担任は「悲しい気持ちになるだろな」と考えていた。以下はその時の対話である。

先生「すいか、どうする」

Eさん「持って帰る。ここらへんは、食べられるかも。だから、ぶわ~ってかぶりつくわ」

図4 夏休みにすいかを収穫したEさん

予想とは違い、Eさんの表情は、すいかが「やっとできた」という喜びに満ちていたように見えた。大人は、すいかがカラスに食べられた時点で、もう食べられない、悲しくなるのではないかと考えていた。しかし、栽培活動に主体的に取り組んだ子どもは違った。対象に対して思いや願いを込めて一生懸命世話をしたので、少しでも食べられるところは食べたい、何とかしたいという思いが見られたのであった。

対象に対する毎日の積み重ねがこのような姿を生んだのだと考えられる。夏休み明け、すいかのことを聞いてみたのだが、やはり食べられなかったそうだ。しかし、この経験はEさんにとって、今後の学校生活を過ごしていく上で大きな成長に繋がることとなった。
このように野菜の栽培活動一つをとっても子どもの姿は一人ひとり違うことがわかる。継続してお世話を続けられる子どももいれば、そうでない子どももいる。

野菜を大切に思い、継続的にお世話に取り組むことができた子どもは、それが大きな自信となり、「もう一度育てたい」「新しいことに挑戦したい」と考えるきっかけとなるのだと感じた。
こういった子どもの姿を生み出す個別最適な学びの実現が、自立に向けた学びへとつながっていくと考える。

授業の展開例

○夏野菜の栽培体験をもとに冬野菜の栽培に挑戦してみよう。

○地域の伝統的な野菜を農家の方に応援してもらってさいばいしてみよう

箱根 正斉(はこね まさなり)

兵庫県西宮市立北六甲台小学校 教諭
教員11年目。生活科・総合的な学習の時間を中心として子どもが切実に学び続けることができる姿を目指して、単元づくりや授業づくりに日々取り組んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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