2021.03.18
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震災を取り上げた実践(3) さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さん

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さんが5回にわたって紹介します。第3回では、新聞記者を招いて学習する予定が緊急事態宣言によって延期となりつつも、子どもたちが自分で記事を読み、調べることで理解を深める様子をリポートいたします。

社会科で津波から街を守る対策を知る

被災地の様子を伝える新聞記事を掲示

前回の報告で、社会科の授業を起点にして、東日本大震災を題材とした教科横断型の学習をスタートさせたことを述べました。この単元に入る前に、東日本大震災に関する写真などを使って、児童に震災の様子を伝えてきました。児童は自分が生まれたころに大きな震災があり、今でもその被害で苦しんでいる方がいることを知りました。また、自分が震災当時に何をしていたかを保護者へのインタビューを通して調べることで、震災を自分事としてとらえることができるようになりました。

授業を計画した段階では、授業の導入部で、東日本大震災について取材した新聞記者を招いて話をしていただく予定でした。児童は年度当初の国語科で、「新聞の読み方」を学習しています。そして、授業後に定期的に新聞を読む活動を行ってきました。東日本大震災のことも、新聞を活用して学びました。そこで、震災の直後から被災地に入り現在も取材を続けている朝日新聞社の元釜石支局長や震災当時から福島第一原発の取材にかかわっている共同通信社仙台支社の記者に学級に来ていただく予定を立てていました。しかし、新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言発令のため、予定を延期せざるを得なくなりました。それでも、児童は来ていただくはずだった記者の記事を読み、東日本大震災の被害や現在の被災地の様子などを理解できました。

埼玉県や、さいたま市の地震対策を調べる

社会科:防災について調べる

今回の取り組みでは社会科を軸に、まずは地震が起きた時に人の命や街を守るために自治体が行っていることを調べる活動を取り入れました。その導入で予定していた記者による授業が延期となったため、記者から提供いただいた記事を児童と読みながら、社会科の学習を進めました。これまで被災地の視察で撮影してきた写真や震災当時の新聞記事などを示しながら授業を行っていきました。

調べ学習では、まずは県や市で出している防災関係の資料を読むことからスタートしました。すべての家庭に、防災に関するチラシを配り、日々の備えを行う工夫が行われていることに気が付きました。また、地域で避難所を指定し、いざというときに避難できる場所を確保していることも分かりました。これらを確認した後に、児童がふだん使っている端末でインターネットを利用して調べ学習を行いました。調べ学習により、以下のような取り組みが分かりました。

社会科:インターネットを利用して調べ学習

<埼玉県や、さいたま市が取り組んでいることの例>

・県の防災センターが県内の小中学生に防災に関するチラシを配って、啓発している。
・県の防災課がハザードマップを作って、ホームページに載せている。
・県の防災課が震度7以上の地震が来た際にどのくらいの被害が出るかの予想をホームページで公開している。
・さいたま市で地区ごとの避難訓練を実施している。
・学校や市の建物が地震で倒れないように耐震工事を行っている、
・さいたま新都心の庁舎の上にヘリポートがあり、災害時でもヘリが飛んでこられるようにしている。また、さいたま新都心駅近くに防災公園を整備し、たくさんの方の避難に対応できるようにしている。
・各学校が避難所に指定されており、防災倉庫には毛布や非常食などが備蓄されている。
・赤ちゃんや老人のための生理用品などが備蓄されている。
・断水に備えて、水を配る施設を整えている。
・自衛隊や消防、警察が災害時にどのように役割分担をして動くかを検討する委員会を設けている。 

他にもたくさんの取り組みを知ることができました。10年前の東日本大震災を教訓として、様々な備えを行っていることがわかりました。

さらに必要な対策を考える

地域の防災対策について学ぶ

 自治体の地震対策に関する調べ学習により、埼玉県や、さいたま市が県や市の特徴を踏まえた地震対策を行っていることが分かりました。児童はこの後、さらにこれから万全な地震対策をするためにどんなことが必要かをグループで話し合いました。

「学校が避難所になっているけれど、夏は体育館がものすごく暑いよね。お年寄りや赤ちゃんはとてもつらいと思う。学校の体育館にも冷房の設備があるといいよね」
「新型コロナウイルスの流行で人が密集できないから、今、地震が起こったらどうするかを考えておく必要があるよね」
「避難する場所がわからない可能性もあるから、普段から避難する場所を知らせておく必要があるよね」
「学校の周りには古い建物が多くあるから、普段から倒れないかどうかの検査をしておく必要があるよ」 

など、たくさんの意見が出ていました。児童は友達と話し合ったことを受けて、次の国語科の学習で自分の考えを提案文にまとめていきます。東日本大震災を題材に地震の大きな被害について知り、調べ学習で自分が住んでいる自治体の地震対策について詳しく学ぶことで、これからさらに必要になる地震対策がたくさん思い浮かびました。児童が書いた提案文は地元の新聞社に投稿し、いくつかを取り上げていただくことになっています。次回から提案文の作成に取り組みたいと思います。

文・写真:菊池健一

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