2018.03.28
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防災について調べ、新聞記事にまとめる【後編】(リポート5) さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さん

東日本大震災を取り上げた授業を、さいたま市立海老沼小学校 教諭 菊池健一さんが6回にわたってご紹介します。第5回目は、全員で防災新聞を作る活動です。

感じられる防災意識の高まり

児童がグループでの話し合いを基に考えた「大見出し」

児童がグループでの話し合いを基に考えた「大見出し」

前回の学習では、児童がグループの仲間と学校で大地震が起こった際にどのように身を守るかを調べ、調べたことについて違うグループの友達と発表し合いました。そしてその新たなグループでお互いの発表から大切なことを抽出して、新聞の「大見出し」としてまとめました。大見出しには、

「すぐに頭を守ろう」
「ダンゴムシポーズが一番大切」
「近くのもので頭を守る」
「第一に頭を守ろう」

等があり、児童が身につけるべき身の守り方がしっかりと見出しの形で表れていました。この単元の授業にゲストティーチャーとしてかかわってくださった、朝日新聞社元釜石支局長の山浦正敬氏は、
「この大見出しを見ると、児童の防災意識が高まったことがよくわかる」
とおっしゃっていました。また、同じくゲストティーチャーとして指導をしていただいた、防災士の長田香氏は、
「児童の積極的な活動によって、身を守る際に大切なことを短い言葉できちんとまとめることができている」
とおっしゃっていました。これらの言葉からも、児童が国語科の学習を生かしながら、防災についての知識をきちんと身につけられたと言えるのではないかと考えています。

この単元の授業の最後は、児童が作成した記事を模造紙に貼って大きな防災新聞を作る作業です。児童には、作成した防災新聞を学校の中央廊下に貼り、学校の全児童や先生達に見ていただくことを告げてあるので、大変意欲的に活動を開始しました。

新聞制作を行う児童

新聞制作を行う児童

防災新聞を作る

新聞作りに関しては、児童が使用している教科書(教育出版)では4学年で取り上げられています。そこで、今回は割り付けなどの工夫は行わず、新聞の題字と大見出し、そして児童がそれぞれ書いた新聞記事で防災新聞を構成しました。児童は教師の見本を参照しながら、自分達のオリジナルの新聞を作ることができました。授業後の児童の反応は以下のものです。

「この活動をして、防災について詳しくなった気がする」
「この新聞で、学校の皆に身の守り方を伝えたいと思います」
「他の場所でもし大地震があった時にどうすればよいか、続けて調べていきたいです」

これまでの、活動の充実度が分かる感想が多く見られました。児童が作成した新聞は学校のみんなが見られる場所に掲示していく予定です。

児童が作成した「防災新聞」

児童が作成した「防災新聞」

この単元の学習を通して、児童の防災意識が十分に高まったと考えています。現在、防災に関する取組は中学年では特別活動や総合的な学習の時間での実践が主なようです。今回の実践では国語科で防災を取り上げました。その理由は、児童が防災を取り上げることで、学習内容を自分事として考え、より積極的に学習に取り組めるようになるのではないかと考えたからです。新学習指導要領では学力の一つ「学びに向かう力」に相当します。

また、防災を取り上げることで、新聞などのメディアを資料として活用しました。また、新聞記者や防災士の方をゲストに招聘して指導していただくなど、社会とのつながりも意識した実践としました。新学習指導要領では「社会に開かれた教育課程」が重要視されていますが、この視点も取り入れて実践に取り組みました。今後も、教科における防災指導の実践に取り組みたいと思います。児童は、この単元終了後も新聞スクラップなどを通して、引き続き防災について考えていきます。

文・写真:菊池健一

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