18th New Education Expo 2013 in 東京 現地ルポ(vol.3)
「New Education Expo 2013 in 東京」が6月6~8日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。教育の情報化や学校経営などに関する様々なセミナーや展示が行われる中、今年特に注目を集めていたのが、情報モラル教育に関するセミナーだ。第3回目は、この情報モラル教育セミナーと、図書館の展示についてお届けしよう。
進化するICTに情報モラル教育はどう対応すべきか?
スマホとSNS時代の情報モラル教育 ~ネットいじめの現状と対策~
【コーディネータ】熊本市立総合ビジネス専門学校 教頭……桑崎 剛 氏
千葉大学 教育学部 教授……藤川 大祐 氏
鎌倉女学院中学校・高等学校 教諭……佐藤 正二 氏
LINE株式会社……髙橋 誠 氏
ソーシャルゲーム協会(普及啓発委員)……金子 哲宏 氏
学校や企業はネットいじめにどう対応しているか
「昨年も同じテーマでセミナーを行いましたが、今年は去年よりも参加者がかなり多いようです。スマホやSNSにどう対処すればいいのか、先生方の関心が高まっているのがうかがえます」
とは、去年に続いてコーディネータを務めた熊本市立総合ビジネス専門学校の桑崎剛・教頭の冒頭での発言だ。
「学習指導要領にも記載されるなど、この10年で情報モラル教育はかなり浸透しました。子どもの情報モラルも以前より向上し、たとえばチェーンメールに引っかかる子は激減しています。ですが、新たな問題も出始めています」(桑崎氏)。
その一つがネットいじめだ。ネットいじめに詳しい千葉大学の藤川大祐・教授は、こう指摘する。
「近年、児童生徒の携帯電話所持率は漸減傾向にあったのですが、スマホの普及で増加に転じています。利用率が上がれば、それだけトラブルが起きる確率も高くなります」
藤川教授は、「LINE外し」と呼ばれるネットいじめについても解説し、コミュニケーション系アプリのLINEで友だちとグループを作ってメッセージをやりとりする中高生が増えているが、このグループから外されるいじめが起きているという。
このような問題に、どう対処すべきか。鎌倉女学院の佐藤正二・教諭は、10年以上も前から学校裏サイトなどへの不適切な書き込みに対応してきた経験から、こう話してくれた。
「中高生になってくると、教師が注意するよりも、上級生や同級生から注意される方が素直に聞くようです。そこで本校では、高校生が中学生に教える情報モラル教育講座を開催。ソーシャルゲーム企業などの協力も得て、何をどう教えるか、生徒自身が考えています」(佐藤氏)。
一方、ゲームやアプリ等を提供する事業者側も対策に余念がない。
「ソーシャルゲームを巡る高額の料金請求が問題になったのを受け、ソーシャルゲーム各社は業界団体を設立し、自主規制や啓発活動に努めています」
とは、ソーシャルゲーム協会(普及啓発委員)の金子哲宏氏だ。たとえばソーシャルゲーム内での不適切な書き込みは、各社がサイバーパトロールを行なって削除。青少年向けのシンポジウムなどを開催し、正しい利用を呼びかけている。
今や全世界で1億5,000万ユーザー、日本だけでも4,500万ユーザーが利用するLINEも、自主規制と啓発活動を推進している(ユーザー数は講演日時点)。その取り組みを、LINE株式会社の髙橋誠氏が解説してくれた。
「青少年保護のため、18歳未満のユーザーはLINEのID検索を利用できなく、検索されなくする仕様にします。現状、携帯電話会社と話を進めていて、すでにKDDIのAndroid版で実施、ドコモとは先日提携を発表して、実施に向けてお話を進めています」
また、「LINE安心安全ガイド」の公開や、教職員・ネット指導員・生徒を対象とした啓発活動も実施しているという。
小学生への情報モラル教育が今後の課題
各登壇者の講演の後、トークセッションが行われた。そこで指摘されたのが、小学生への情報モラル教育の重要性だ。
「今の中学・高校生や大学生は、もう何年も携帯電話を使っていますし、情報モラル教育も受ける機会も増してきたので、(トラブルに対し)ある程度対応スキルが鍛えられています。その一方、携帯電話を持ち始めたばかりの小学生に、問題やトラブルが多発している。特にネットいじめは、小学生の割合が中高生よりも多い。小学生の情報モラル教育をどう行うかが、今後の課題です」(桑崎氏)。
「スマホやSNSが急速に普及するなど時代の変化は激しい。しかし、相手を思いやる心やマナーといった情報モラルの本質は不変です。本質をしっかり認識した情報モラル教育を行えば、時代がどう変化しても対応できます」(藤川氏)。
目まぐるしく変化する情報通信機器への対応に、苦慮する教育現場にとって、非常に有益な助言が出揃ったセミナーであった。
展示ゾーン
[図書館]ICTで知的資産を有効活用、“知る喜び”を引き出す
図書館の利用者により良いサービスを提供する。そのためのICTソリューションが、「Ubiquitous Library」に数多く展示されていた。
ICTを使うことで、情報の連鎖・知の連鎖を活性化することができる。内田洋行の「オイテミンホン」は、本棚などに設置されたモニターに本をかざすと、同じようなテーマを扱ったオススメ本や、関連するイベントの情報が表示されるシステム。例えば、どんな人がよく借りているか、その人たちは他にどんな本を借りているか等の情報も表示する。1冊の本をきっかけに、知の世界をもっと広げてもらうのがねらいだ。
ICTは眠っている貴重な資料の活用にも効果を発揮する。図書館には、表には出てこない貴重なコンテンツが豊富にある。それを劣化・破損する前に(もしくは修復をして)デジタル化し、誰でも閲覧できるようにしたのが「ディスプレイテーブル」。資料の内容だけでなく、関連情報や図書館からのお知らせなども同時に発信できる。高精細な画面なので、資料をつぶさに観察できる。大学図書館のほか、企業のショールームなどでもニーズがあるという。
ICT化することで、図書館の持つ知的資産を今まで以上に有効活用し、利用者に知る喜びをより多く提供できるという、まさに「いつでも、どこでも、誰でも」恩恵を得られるユビキタスな提案だ。
写真:赤石 仁/取材・文:長井 寛
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