2013.07.23
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18th New Education Expo 2013 in 東京 現地ルポ(vol.2)

「New Education Expo 2013 in 東京」が6月6~8日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。今年で18回目を迎える本イベントの目玉の一つが、タブレット端末やデジタル教科書を活用した筑波大学附属小学校の公開授業だ。会場は大盛況で、300席用意された座席は満席。その周りを立ち見客が取り囲み、テレビや新聞などのマスコミも多数取材に訪れていた。第2回目はその模様と、外国語学習の展示についてお届けしよう。

進化したシステムやアプリが、1人1台タブレット授業を魅力的に演出

[公開授業]筑波大学附属小学校 公開授業 ~ICTを活用した国語・算数の授業~

【国語】筑波大学附属小学校……青山 由紀 氏
【算数】筑波大学附属小学校……盛山 隆雄 氏

国語授業

学年・教科:4年生 国語科
単元:新聞づくり、パワーアップの秘密をさぐる~段落どうしの関係を読みとろう~(全10時間)
教材:アップとルーズで伝える(光村図書4下)
本時の目標(第4時):(1) 写真と文章の関係を読み取り、対比的に述べられているアップとルーズの長所と短所や、第6段落までの段落相互の関係をつかむことができる。(2)導入で使用した写真の違いについて、対比的な説明の仕方を使って表現することができる。
指導者:青山 由紀 教諭
使用教材・教具:タブレット端末(1人1台)、電子黒板、学習者用デジタル教科書、デジタルスクールノート、授業支援システム(ActiveSchool/FCR)、プロジェクター

タブレット端末やデジタル教材が進化

筑波大学附属小学校の公開授業が、これまで以上に洗練されていた。昨年は各班1台ずつのタブレット端末だったが、今年はキーボード脱着可能の新型タブレット端末が1人1台。それぞれ無線LANでつながっており、授業支援システムを使って児童のタブレット端末の画面を個別・分割・一斉に電子黒板で表示できる。もちろん、すでに学習者用のデジタル教科書がインストール済みだ。

これらICTを使って今日学ぶのは、先生方にはおなじみの教材「アップとルーズで伝える」。教材写真を参照しながら、一文ずつ読み解くことが求められる説明的文章だ。

アナログにはない、デジタルならではのメリット

公開授業の流れは、本文を読み解き、発表し、班内で意見交換し、また発表する。これを繰り返しながら読解を進めていくオーソドックスなもの。だが随所に、タブレット端末や電子黒板ならではの良さが発揮されていた。

まず、「指示が通りやすい」。説明文の授業では、一文ずつ細かく読み解き、比較する活動が頻繁に行われる。これがもし、紙の教科書と黒板だけなら、「○段落目の○行目を見て」という教師の指示は伝わりにくいだろう。「え? どこ読んでいるの?」と戸惑う子どもが必ず出てくるものだ。

筑波大学附属小学校 青山 由紀 教諭

その課題をICTが解決していた。この日の授業は、まずアップについて書かれた段落の読解からスタート。デジタル教科書を電子黒板に大きく映し、注目させたい箇所をマーカーツールで塗ったり拡大表示したりすることで、どの文について今話し合っているかを周知徹底させる。その後、教材文のあちこちに点在している一文を次々に読み解いていったが、「どこ?」という子どものつぶやきは一度も漏れてこなかった。

指示が通りやすいから、考える活動に多くの時間を割ける。そして、「学びを深めることに集中できる」。これが、第二の良さだ。

公開授業では、本文の中から「アップの良さについて書かれている文」を探し、教材写真を見てその良さが発揮されている箇所に印をつける活動に取り組んだが、ここでタブレット端末が活躍。子どもたちはタブレット端末の画面を指でなぞり、該当する文や写真にマーカーツールで線や印を書いたり消したりして、自分の考えをまとめていった。試行錯誤することで、考えが深まっていく様子がよくわかった。紙ベースで同じことをやろうとしても、水性ペンなどを使うと書き直しできないし、かといって鉛筆では教材写真への書き込みが見えづらくなってしまうだろう。

また授業の最後には、教材文を一文ずつ「アップとルーズが伝えられること・伝えられないこと」に分類する活動が行われたが、ここでもタブレット端末とデジタルワークシートが威力を発揮していた。文を書き写さずとも、一文ずつドラッグ・アンド・ドロップすれば、簡単に分類できるのだ。作業を簡単にできるから、子どもは考えることに集中できる。これを紙ベースで行おうとしたら、文を書き写す時間と手間がかかり、子どもの集中は途切れるのではないだろうか。

第三の良さは、子どもたちの学びを「スピーディに、わかりやすく共有できる」点だ。子どもたちのタブレット端末の画面は教師用タブレット端末で一覧できるので、任意の子どもの画面を選択して瞬時に電子黒板に提示できる。スピーディに次々と発表できるので、多くの子どもに発表の機会が与えられていた。

そして発表は、とても見やすく、わかりやすい。カラー写真にカラーのマーカーツールで書き込んでいくので、一目瞭然。どんな意見かがすぐ伝わり、その意見が正しいかどうかの議論に時間を割くことができる。班内で意見交換する時にもこのわかりやすさは有効のようだった。子どもたちはお互いのタブレット端末を見せ合い、学び合っていた。

授業の密度が濃厚に

タブレット端末などのICTを使ったことで、45分の授業はとても濃い内容になっていると感じた。指示が通りやすいため、全員が「今、どの文について話し合っているのか」をすぐ理解し、考えを深めることに集中できる。意見をスピーディにわかりやすく共有できるので、学び合いも深まる。そして、これら活動がすべて効率的に行えるので、テンポ良く展開できるというわけだ。

どの学校の教室でも、タブレット端末を従来の授業の中に上手に取り入れ、効率化を図り、教育効果を高めている。そんな未来図が見えてくる授業だった。

算数授業

学年・教科:3年生 算数科
単元:表と棒グラフ
題材:どこの場所かな?
本時の目標:乗り物の通過する様子の特徴を調べるために、その様子を数値化し、表に整理して表したり、グラフに表したりすることができる。
指導者:盛山 隆雄 教諭
使用教材・教具:タブレット端末(1人1台)、電子黒板、スクールプレゼンターEX、デジタルスクールノート、授業支援システム(ActiveSchool/FCR)、プロジェクター

交通アニメーションを見て、どの場所か推測する

続いて、3年生の算数の授業が行われた。ここで活躍したのが、学習支援アプリ「デジタルスクールノート」だ。これは、タブレット端末上で児童が手書きで自由に書いたり消したりできる、文字通りのデジタルノートである。

まず授業の初めに、この「デジタルスクールノート」を使って、頭のウォームアップが行われた。タブレット端末上に方眼紙を表示し、団子取りゲームを実施。機能をあえてシンプルに作ってあるので、3年生でも迷わず簡単に操作できるのも特徴だ。

筑波大学附属小学校 盛山 隆雄 教諭

続いて、本時のメインである交通量調査と集計の活動へ。まずは教材作成ソフト「スクールプレゼンターEX」で作ったアニメーションを電子黒板で観賞。乗用車やトラック、自転車、タクシーなどが通り過ぎていく1分間のアニメを2種類観察させた後、町の地図を表示し、どこの場所の交通量かを考えることになった。

ここでタブレット端末の出番。子どもたちは町の地図画像を画面に表示し、タッチペンを使って「このあたりだ!」と書き込んでいた。盛山教諭は、子どもたちが書いた画像をすばやく電子黒板に映し、皆で回答とその理由などを共有する。

班で協力して、交通量調査を行う

今度は、場所の特徴を明らかにするために、アニメーションの中で通過した乗り物の種類と台数を調査することになった。ここでも「デジタルスクールノート」が活躍する。

まず盛山教諭が電子黒板にデジタルスクールノートの方眼紙を表示し、調査表の作り方を解説。それを参考に子どもたちもタブレット端末で調査表を作成し、交通量調査を開始。しかし、電子黒板でアニメを見ながら数えて、タブレット端末でメモをとるのでは手が追いつかない。そこで子どもからの提案で(教師のねらい通りなのだが)、各班で「通過したクルマを読み上げる係」と「記録する係」とに役割分担して、再チャレンジ。二人で力を合わせることで、正確な数を記録することができた。

各班とも数え終えた所で、集計結果を電子黒板に提示し、皆で答え合わせをした。最後に、タブレット端末で地図を開き、それぞれどの場所かを考え、書き込んでいった。

この授業で注目すべきは、やはり「デジタルスクールノート」だろう。子ども自身がタブレット端末上で書いたり消したりしながら考えを深め、まとめていくツールとして非常に有効だった。今後、現場でニーズが高まっていくアプリだと感じた。

展示ゾーン

[外国語学習]学校でも、家でも、通学中も。 ユビキタス学習がより便利に!

「ATR CALL BRIX」や「PC@LL」を活用したCALL教室。学習者用PCを一元管理し、指名や教材配布、モニタリング等を行える

外国語学習に関する展示ブースがにぎわいを見せていた。小学校での外国語活動が活発になっているせいもあるのだろう。

中でも、最新のICTを駆使した語学学習システムが人気を集めていた。「ATR CALL BRIX」は、シャドーイングやディクテーションなど90種類の教材を利用できるe-learningシステム。「PC@LL」は、CALL教室用の教育支援システムで、話す・聞く・書く・読むの学習活動を、ICTで効率的・効果的に行えるようになっている。

1人1台のタブレット端末やテレビ会議システムを使った模擬英語授業。これからの外国語学習に来場者は興味津津

また、今回特に目を引いたのが、ユビキタス学習の充実ぶりだ。授業で出された課題を持ち帰り、自宅や通学中の電車で、PCやスマホで勉強できるという。いつでもどこでもシームレスに学習できるのが、現在のトレンドのようだ。

こういった語学学習システムは大学が導入するケースが多かったが、近年は企業が導入する事例も増えているという。社員の英語力を鍛えて、国際競争を勝ち抜こうとする企業のねらいが窺える。

写真:赤石 仁/取材・文:長井 寛

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