2017.07.26
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22nd New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.5) 外国語教育はどう変わり、どう指導すべきか?

22nd New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.5)

「New Education Expo 2017 in 東京」が6月1~3日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。次期学習指導要領では、小学校高学年で外国語科がスタートするなど外国語教育が大きく様変わりする。そこで第5回目の現地ルポでは、外国語教育に関するセミナーと、最新の外国語教材を取り揃えた展示ゾーンについてお伝えする。

次期学習指導要領で求められる外国語教育とは?

どう変わる? どう指導する? 外国語/外国語活動
~次期学習指導要領のポイント~

信州大学 学術研究院 教育学系 教授……酒井英樹 氏
岐阜県教育委員会 学校支援課 指導主事……山田誠志 氏

外国語教育は次期学習指導要領でどう変わるか

信州大学 学術研究院 教育学系 教授 酒井英樹 氏

信州大学 学術研究院 教育学系 教授 酒井英樹 氏

信州大学学術研究院教育学系教授の酒井英樹氏は最初に、小学校高学年で新設される外国語科では今までと何が変わるかについて解説してくれた。
「まず外国語活動から外国語科へ教科になったことで、検定教科書を用いて教えるようになります。また、外国語活動では『評価』だけでしたが、外国語科では『評価』に加え『評定』も行うようになります。

学習内容も変わります。今までの外国語活動では、『聞く』『話す』の2技能を中心に学びましたが、外国語科ではこれに『読む』『書く』が加わり、4技能で力をつける必要があります」(酒井氏)

「慣れ親しむ」から「定着」へも、大きな変化だと酒井氏は指摘する。
「今までの外国語活動は、英語に『慣れ親しむ』ことが主目的でした。例えば、自己紹介の表現を学ぶときは、英語表現に慣れ親しむのが主目的であり、しっかり覚えなくても良しとされていました。

しかし外国語科では、慣れ親しむだけでなく、習ったことを『定着』させる必要があります。例えば、自己紹介の表現を習ったら、しっかり定着させて、次時以降もその表現を活用できるように指導していくことが求められます」
と酒井氏。そのため、授業計画や年間指導計画も様変わりするという。

「外国語活動は『慣れ親しむ』のが目的でしたから、系統的な指導があまり意識されていませんでした。これに対し外国語科では、年間の指導計画を立て、系統的に、段階的に学ぶ必要があります。例えば、レッスン1で学んだ表現を、レッスン2でも使って定着を図りつつ、新たな表現も習って次々と積み上げていくのです。算数など他の教科も、このように学びを積み上げていますよね。どんな単語や表現をどの時期に学ぶか、どう学びを積み上げていくか、最終的に年間を通してどんな力を育むかを考え、年間指導計画を立てましょう」(酒井氏)。

続いて酒井氏は、次期学習指導要領における外国語活動や外国語科でどんな力を養うことが求められているかについて、話してくれた。
「次期学習指導要領では、各教科の目標や内容が、『知識・技能』『思考力・判断力・表現力等』『学びに向かう力・人間性等』の三つの柱で整理されました。これは、外国語科も外国語活動にも当てはまり、この三つの資質・能力を育成することが求められます」

「見方・考え方」というキーワードにも注目したいと、酒井氏は言う。次期学習指導要領に記された外国語科の目標にも、「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次の通り育成することを目指す」と書かれている。

「中央教育審議会の答申では、『外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方』を、こう定義しています。『外国語で表現し伝え合うため、外国語やその背景にある文化を、社会や世界、他者との関わりに着目して捉え、コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じて、情報や自分の考えなどを形成、整理、再構築すること』。

『見方・考え方』とは、三つの柱で整理された各教科の特性に応じた資質・能力が、統合的に育成され、発揮できることを示すと考えます。次期学習指導要領では、系統的な年間指導計画を立てて三つの柱で整理された資質・能力を子ども達に育み、外国語ならではの『見方・考え方』を持てるように指導していきましょう」(酒井氏)。

次期学習指導要領で注目される言語活動「Small Talk」とは?

岐阜県教育委員会 学校支援課 指導主事 山田誠志 氏

岐阜県教育委員会 学校支援課 指導主事 山田誠志 氏

続いて、岐阜県教育委員会学校支援課指導主事の山田誠志氏 が、外国語教育における事例を紹介してくれた。同教育委員会では、英語拠点校区事業として、小学校高学年の英語の授業で「Small Talk」という言語活動を実施している。拠点校の一部は文部科学省の研究指定校も兼ねており、
「新たに作られる小学校外国語科の新教材には、この『Small Talk』が盛り込まれると思われる」
と、山田氏は言う。

その「Small Talk」の流れを、山田氏は解説してくれた。合計4ステップ、時間にして10分程度の活動だ。

1.教師と児童のやりとり
まず、今日の「Small Talk」のテーマや目的、使いたい表現などを、子ども達とのやりとりの中で伝える。ちなみに、ここで使用する英語表現は、既習のものだ。
【例】
教師:Do you like Japanese food?
子1:Yes.
(他の子どもを次々指名して、何回か繰り返し)
教師:What Japanese food do you like?
子4:I like sushi.
教師:Oh, sounds good. Why do you like it?
子4:Because...it's yummy.
教師:That's nice.
(他の子どもを指名して、何回か繰り返し)

2.児童と児童のやりとり【1回目】
このようなやりとりを、子ども同士ペアを組んで行う。

3.わからない表現を皆で考える
1回目のやりとりをすると、「伝えたいのに、英語表現がわからない」というもどかしさが必ず出てくる。その時、教師が答えを教えるのではなく、子どもに表現のアイデアを出させるのが大事だと、山田氏は強調した。
「英語での伝え方がわからない時にすぐ日本語でごまかしていたのでは、外国語ならではの『見方・考え方』を養えません。日本語に逃げずに、既知の英語表現を駆使して、伝える工夫をさせることが大事です」
【例】
子1:個性的、って伝えたいのだけど、英語でなんて言えばいいのかな?
子2:original なんてどう?

4.児童と児童のやりとり【2回目】
ペアを変えて、やりとりを行う。

「先程酒井氏がおっしゃったように、次期学習指導要領では外国語ならではの『見方・考え方』を養い、働かせることが求められています。この『見方・考え方』とは何か。私は次のように考えます。

(1)目的や場面に応じて、(2)自分の考えや気持ちを、(3)学習した英語表現で伝えようとする時に、『見方・考え方』が養われ、働くのだと思います。この(1)~(3)の要素が、『Small Talk』には盛り込まれています。また外国語科では、英語表現に慣れ親しむだけでなく、定着することが求められますが、既習表現を活用する『Small Talk』は、定着にも効果があります」(山田氏)。

セミナー参加者同士でも実際に「Small Talk」を行ってみたが、大いに盛り上がると同時に、伝えたいのに英語を知らなくて伝えられないもどかしさを強く感じた。この「もどかしさ」が、英語をもっと学びたいという意欲にもつながりそうだ。

「英語が得意な先生でないと『Small Talk』は行えないのでは? とよく質問されるのですが、そんなことはありません。本県では、英語が苦手な先生方にも『Small Talk』を実践してもらっていますが、皆さん見事にできています。

それは『Small Talk』が、子ども達とのコミュニケーションの中で既習事項を再確認し、学んだことを活用する場面を与え、もっと知りたいという子どもの欲求に応えて新たな学びにつなげていくという、授業の基本に則っているからだと思います。普段からこういう授業を実践している先生なら、英語の得意不得意に関係なく、すぐできると考えます。ぜひ皆さんも、自分の学校や学級で、試してみてください」(山田氏)。

展示ゾーン

[外国語教材]ICTを使い、次期学習指導要領が求める外国語教育を実現しよう

学習指導要領改訂に伴い、外国語教育にはICTがますます活躍しそうだ

学習指導要領改訂に伴い、外国語教育にはICTがますます活躍しそうだ

次期学習指導要領では、小学校高学年で外国語科、中学年から外国語活動が始まるとあって、「外国語教材」コーナーは例年以上に熱気であふれかえっていた。

「学習指導要領改訂に伴い、外国語デジタル教材への関心がますます高まっているのを感じます。『ICTを使って、外国語科の授業をなんとか上手に行いたい』『英語の発音に自信がないので、デジタル教材で子ども達にネイティブの発音を毎日届けたい』といった先生方の要望をよく耳にします」
と説明してくれたのは、昨年もご登場いただいた株式会社内田洋行ICTプロダクト企画部の須藤綾子氏だ。今年のオススメ製品は、e-Learning用教材「ATR CALL BRIX」とのこと。

「読む・書く・聞く・話すの4技能をバランスよく学べるデジタル教材です。英語の基礎を学ぶ小学校向けコースから、TOEICや英検対策の学習ができる高校・大学向けまで、豊富なコースコンテンツを用意していますので、校種や目的に合わせて選べます」(須藤氏)
通常のPCでの使用はもちろん、タブレット型PCにも対応。大学をはじめ、大阪市などの自治体にも導入されており、小学校でも活用されているという。

また、
「小学校では、短時間学習や個別学習などで用いられています。ネイティブの音声を収録していますので、『英語のシャワーを毎日浴びられるのが良い』と好評ですし、『子ども一人ひとりが自分のペースで個別学習できるのも良い』と評価いただいています」
とのこと。

そして、教師にとっても便利な機能が搭載されている。誰がいつどの問題に取り組んだか、正答率や勉強時間はどのくらいかといった学習履歴が自動で保存され、教師はいつでも閲覧できるのだ。
「学習履歴を見れば、誰がどれだけ頑張ったか、どのぐらい伸びたかがひと目でわかります。外国語科では評定も行う必要がありますが、こういった学習履歴があれば評定の際にとても便利です」(須藤氏)。

次期学習指導要領では、ICTを有効活用することも求められている。こういったデジタル教材を使って、外国語教育の改善・充実に向けて対応されてはいかがだろうか。

取材・文:長井 寛/写真提供:New Education Expo実行委員会事務局

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