2017.07.05
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22nd New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.2) 次期学習指導要領が求める教育の情報化とは?

22nd New Education Expo in 東京 現地ルポ(vol.2)

「New Education Expo 2017 in 東京」が6月1~3日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。第2回目の現地ルポでは、中央教育審議会で次期学習指導要領の審議に携わった堀田龍也・東北大学大学院教授の講演と、最先端のICTで教室環境を構築した「フューチャークラスルーム(R)」展示ブースの模様をお伝えする。

次期学習指導要領を実践するには「どこが変わったか」だけでなく「なぜ変わったか」を理解しよう

次期学習指導要領と教育の情報化
東北大学大学院 情報科学研究科 教授……堀田 龍也 氏

2030年代に大人になる子ども達のために学校教育がすべきこと

東北大学大学院 情報科学研究科 教授 堀田 龍也 氏

東北大学大学院 情報科学研究科 教授 堀田 龍也 氏

次期学習指導要領が告示された。現場教師の興味関心は高く、今回のNEEでも、次期学習指導要領に関するセミナーが特に盛況だった。中でも、中央教育審議会初等中等教育分科会等の委員を務め、次期学習指導要領の審議に携わった堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授の講演は、鈴なりの満席。参加者の耳目を集めた本講演を、今回は特別に堀田教授のナマの声そのままに、ダイジェストでお送りしよう。


次期学習指導要領では、小学校でプログラミング教育が必修化され、小学校高学年では外国語科が始まるなど、教育内容の変化に目が向きがちです。でもその前に、まず次期学習指導要領が何を目的として改訂されたかを理解してほしいと思います。

学習指導要領は約10年に1度、改訂され続けています。高度経済成長時代の学習指導要領は、教育内容を増やすことが良しとされました。昭和50年代に入って高度経済成長が終わり、日本が豊かになると、ゆとりある充実した学校生活を実現しようとしました。いわゆる「ゆとり教育」ですね。

このように、社会の変化に合わせて、学習指導要領は改訂されてきました。今回の改訂も、社会の変化に対応するためなのです。

今、私達の社会は激変しています。情報化が進み、人工知能は急速に進化を遂げ、今ある職業の半分が人工知能に取って代わられ消滅するとも言われています。一方で、日本の少子高齢化は歯止めがかからず、労働人口は2050年には今より約2,000万人も減ると予測されるほどの危機的状況になっています。

このような変化の激しい社会へ羽ばたいていく子ども達のために、今、学校教育に何ができるか。何をすべきか。次期学習指導要領は、まずこのような根本的な議論を長い期間かけて行いました。2030年代に大人となる子ども達が、社会で生きていくために必要な力を学校教育で育みたい。そのために、次期学習指導要領は作られたのです。

では、どんな力を子ども達に育くめばいいのか。次期学習指導要領では、新しい時代に必要となる資質・能力を、三つの柱で整理しました(図1)。「生きて働く知識・技能」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等」「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等」の三つです。

図1
文部科学省「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)【概要】」p24より引用

文部科学省「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)【概要】」p24より引用

日本の教育は、これまで学力を重視してきました。しかしこれほど社会が激変する今、何かを知っているだけでは足りないと、皆さんも実感しているのではないでしょうか。だからこのような三つの柱を、新しい時代に必要な「資質・能力」として定めたのです。

ちなみに今、日本だけでなく諸外国でも、社会の変化に対応すべく教育改革が進行中です。外国でも社会で生きるために必要な資質・能力の見直しと再定義が進められていますが、多くの国でも、日本と同じ様な三つの柱構造になっています。

再び図1を見てください。今までの学習指導要領は、「何を学ぶか」を定めるにとどまっていました。でも、学んだことがちゃんと活用できていたでしょうか? 社会で生きる力になっていたでしょうか? その反省から、次期学習指導要領では「何を学ぶか」だけでなく、「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」まで定めました。

「どのように学ぶか」は、今までは先生方の裁量に任されていましたが、次期学習指導要領では、こういう学び方ができるように授業を見直しましょうと示しました。

これから社会がどうなるか、まだ誰にもわかりません。だから人から教わるだけでなく、自ら主体的に学んだり、他者と協働して道を切り拓いていく必要がある。学んだことを関連付けて深く掘り下げ、課題を発見して解決策を探していく必要がある。だから、子どものうちからこういう学び方を経験させておこう。それが「主体的・対話的で深い学び」、いわゆる「アクティブ・ラーニング」です。

ここで注意してほしいのは、「主体的・対話的で深い学び」は目的ではないこと。例えばグループで対話することが目的化して、ただ話し合って終わりで実りがなかったでは困るのです。主体的・対話的で深い学びは、「どのように学ぶか」という手段であり、授業を見直し改善していく視点なのだと、胸に留め置いてください。

ところで、「アクティブ・ラーニング」という用語が次期学習指導要領に見当たらないと少し騒ぎになり、「アクティブ・ラーニングはやらなくてよくなったの?」と早合点する人も出ましたが、「主体的・対話的で深い学び」という用語に置き換わっただけです。「アクティブ・ラーニング」という用語が独り歩きして、「子どもに活動させればそれでいい」などの誤解を生んだのと、法令である学習指導要領では概念が十分定着していない横文字言葉は使いづらいという事情があったのです。

図1に書かれている「カリキュラム・マネジメント」も、次期学習指導要領の重要キーワードです。これはどういうことかというと、授業を作る時は、目の前の子ども一人ひとりに合わせて設計しますよね。カリキュラムすなわち教育課程も、その学校で学ぶ子ども達の実態や地域の特徴に合わせて編成しましょうということです。

次期学習指導要領に書かれていることは、すべての学校、すべての先生が必ず行わなければなりませんが、その中で軽重をつけてもいいですよと言っているのです。例えば「うちの学校は外国人の方が校区内に多く住んでいるから、特に外国語教育に力を入れたい」というのでも良いでしょう。最低基準を満たしたあとは、すべての学校が同じ教育をやらなくてもいいですよ、どんどん特色を出してください、というメッセージです。

カリキュラム・マネジメントは学校長など管理職がリーダーシップを発揮して実施していくことになりますが、「カリキュラム・マネジメント主任」という役職を新設してもいいと思います。

次期学習指導要領で「教育の情報化」はどうなる?

次に、次期学習指導要領で「教育の情報化」はどうなるか、お話します。

次期学習指導要領では、「情報活用能力」が、言語能力と並んで学習の基盤となる能力と定められました。例えば次期学習指導要領では、国語科の内容が次のように書かれています(図2)。下線部を引いた箇所が、情報活用能力に関する記述です。これほど多く、盛り込まれたのです。

図2:次期学習指導要領 小学校国語科の内容

〔第3学年及び第4学年〕
(2) 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 考えとそれを支える理由や事例,全体と中心など情報と情報との関係について理解すること。
イ 比較や分類の仕方,必要な語句などの書き留め方,引用の仕方や出典の示し方,辞書や事典の使い方を理解し使うこと。

〔第5学年及び第6学年〕
(2) 話や文章に含まれている情報の扱い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。
ア 原因と結果など情報と情報との関係について理解すること。
イ 情報と情報との関係付けの仕方,図などによる語句と語句との関係の表し方を理解し使うこと。

文部科学省「小学校学習指導要領」より抜粋

こういった情報活用能力を育成するのに、今まで通り黒板とチョークだけで十分でしょうか? ICTがあった方が、情報を調べたり、まとめたり、発表するのが効果的で効率的になるのは間違いありません。

だから国も、「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(平成26-29年度)」を実施するなど、ICT環境整備を働きかけているのです。しかし、ICT環境を整備するかどうかは自治体の判断に委ねられています。その結果、自治体間の格差が深刻なまでに広がっています。

国もこの格差を深刻に受け止めており、ICT環境整備の指針を示そうと今動いています。これは史上初の試みであり、この夏には発表される予定です。整備すべきICTの優先順位を示し、各自治体にICT環境整備の現状と課題を自覚してもらい、少しずつ段階的に整備を進めてもらうねらいです。

ちなみにOECD加盟国における「授業におけるコンピュータの使用状況」(2009年)調査によると、国語では1位のデンマークが76.8%なのに対し、日本はわずか1.0%で17か国中最下位です。数学・理科でも1%台にとどまり、最下位に低迷しています。この状況を改善する必要があります。

次期学習指導要領の総則には、こう書いてあります。「各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ること」。

小学校の次期学習指導要領は2020年に全面実施となりますが、実はもう来年度から「先行実施」が始まります。今までは学習指導要領を全面実施する前に「移行期間」を設けて各学校の足並みが揃うのを待っていましたが、今回は違います。できる学校・自治体から、どんどん積極的に次期学習指導要領に取り組んでくださいと強く呼びかけているのです。

まずは次期学習指導要領をしっかり読んで、自分の授業や学校を振り返り、何が欠けているか、何をすべきか考え、アクションを起こしてほしいと思います。(構成・長井寛)

展示ゾーン

[フューチャークラスルーム(R)]次期学習指導要領が示す学びをICTで効果的・効率的に実現

「フューチャークラスルーム(R)ライブ」の様子

「フューチャークラスルーム(R)ライブ」の様子

株式会社内田洋行が最先端のICT機器を組み合わせた教室環境と授業の形を提案する「フューチャークラスルーム(R)」。ICT活用の最新トレンドを体験できる展示コーナーとして毎年人気だが、やはり今年のトレンドは「次期学習指導要領への対応」だった。

「観客参加型の模擬授業『フューチャークラスルーム(R)ライブ』を毎年行っていますが、今年はプログラミング教育や英語教育、アクティブ・ラーニングなど、次期学習指導要領で先生方が注目している事柄を、模擬授業形式でたくさんお見せすることを心掛けました。次期学習指導要領ではこんなICT環境があれば便利だなと、実感していただければと思います」と担当者。

天気について学ぶ理科の模擬授業では、「IoT百葉箱」が活躍していた。その名が示す通り、これはインターネットにつながった百葉箱。内蔵された定点観測用カメラや気温計・湿度計・気圧計の画像やデータを、インターネット経由でいつでも見ることができる。画像やデータは自動保存され動画化・グラフ化されるので、定点観測画像をつなげた動画で一日の雲の動きを観察したり、一日の気温の変化をグラフから考察したりといった活動が行える。

模擬授業では、「IoT百葉箱」が撮影した定点観測動画を大型スクリーンで観察しつつ、天気情報サイトにアクセスして、気象衛星が撮影した同じ日の雲の動きの動画や、天気図の移り変わりもスクリーンに表示。「IoT百葉箱」で定点観測した空の様子と、気象衛星から見た雲の動きや天気図と見比べることで、雲が徐々に西から近づき東へ去っていく様子が、とてもわかりやすく理解できた。また、「IoT百葉箱」が記録した気圧や気温のグラフと天気図の移り変わりを見比べることで、寒冷前線が近づき去っていくと気圧や気温がどう変化するかも、体感的に理解できた。

次期学習指導要領の総則には「ICT環境を整備し、ICTを活用した学習活動の充実を図る」と書かれているが、最新のICT環境によって学びがより深まり、充実するのがよくわかった。

ネット経由の定点観測動画や天気図等のデータを駆使した理科授業を披露

ネット経由の定点観測動画や天気図等のデータを駆使した理科授業を披露

このように、今や教室には様々なICTがあふれ、活動に応じてICTを使い分ける授業が当たり前になってきているが、これらたくさんのICTをワンストップでコントロールするアプリ「codemari(コデマリ)」も注目を集めていた。

「codemari」はタブレット端末上で動くアプリで、大型スクリーンや大型テレビに表示される映像の選択や、プロジェクタの入力切り替え、スピーカーの音源切り替えなどを、タブレット端末で簡単に行える。そのほか照明のオンオフや調光、エアコンの設定なども可能だが、注目すべきは音声入力に対応している点だ。

「昨年のNEEで参考出品した所、高く評価いただき、ご要望に応えて今年商品化しました。大学のラーニングコモンズに導入されるケースが多いですね。今の学生は音声入力に慣れていて、SNSに上げる短文や検索ワードの入力などは、音声入力で行う傾向があります。ラーニングコモンズで学生がプレゼンの作成・発表する際に、音声入力で映像を素早く切り替えたりするのに役立っています」とのこと。

次期学習指導要領では、ICTの存在感はますます高まりそうだ。

取材・文:長井 寛/写真提供:New Education Expo実行委員会事務局

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