2020.11.02
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実社会で活きる・使える英語教育! (前編) 静岡大学教育学部附属浜松小学校のPBLの外国語授業をリポート

2020年10月7日に静岡県浜松市の静岡大学教育学部附属浜松小学校3年1組にて、海洋プラスチックごみやごみ処理を切り口にした、PBL(Project-Based Learning:課題解決型学習)の単元構想に基づく英語授業が実施された。
単語やフレーズを覚えるなど「英語を学ぶ」のではなく、「英語を通じて学ぶ」というCLIL(Content and Language Integrated Learning/内容言語統合型学習)を取り入れた授業とは一体どんなものなのか。
今回のレポートでは、同校で実施された授業の様子を取り上げる。

授業概要

学年・教科:小学校3年生 外国語活動
単元:「Unit4 Where is the rubbish?」〜SDGs14 海洋プラスチックごみをへらそう〜(全5時間+総合1時間)
本時(第5時/6時間)の目標:英語を使って仲間とごみの分別について話し合う。
指導者:常名剛司 教諭
使用教材・教具:タブレット端末(2人で1台)、黒板、大型ディスプレイ、絵本『Animosaics: CAN YOU FIND ME?』

まずは歌とPhonics Quizで準備運動

35名の子どもたちが参加した本授業は、英語での挨拶からスタートした。教師が「Let’s sing a song.」と促すと、子どもたちは一斉に立ち上がり、モニターに英語の歌詞が表示された動画に合わせて歌う。難しい単語も出てくる歌詞だが、戸惑うことなく子どもたちも楽しみながら歌っている姿が印象的だった。

その後、ABC Phonics Song の動画を見ながらアルファベットの発音を練習。最後にPhonics Quizで子どもたちの発話を促す。今回は、単元の内容に関連した単語「plastic」を活用していた。クイズの時間には、答えがわかった子どもたちは「I know!」と言いながら手を挙げる。皆、楽しみながらクイズに参加している様子が伝わってきた。

Phonics Quizに続いて、教師が使ったのは、『Animosaics: CAN YOU FIND ME?』という絵本。こちらもテレビ画面にページを映し出し、画面に映っている動物を見つけ出すクイズが始まった。教師の「Can you find〜?」と問いかけに対して、こちらもほとんどの児童が「I know!」と挙手。当てられた児童は、「Where is the 〜?」という教師の質問に対してテレビ画面を指差して答えていた。

テレビモニターを使いながらのこうしたアクティビティは、児童たちも楽しみながら取り組めていたようだ。

動画などを使いながらテーマの確認

教室の空気があたたまったところで、いよいよ授業は『「Unit4 Where is the rubbish?」〜SDGs14 海洋プラスチックごみをへらそう〜』の本題に入っていった。

これまでの授業で、浜名湖や佐鳴湖といった浜松市内にある水辺のごみの種類や分別について話し合ったことを振り返った。また、その日のテーマとなる場所は、これまで見てきたごみがさらに流れて行き着く先(=海)であることを説明。「(市内にある)中田島砂丘のごみを〇〇〇〇して分別しよう」と教師が板書し、子どもたちは各自で〇〇〇〇に当てはまる言葉を考え、プリントに書いて発表しあった。

「中田島砂丘のごみを(英語で)何回も言って分別しよう」「中田島砂丘のごみを友達と話し合って分別しよう」など、子どもたちからは様々な答えが発表された。この時間を通じて、今日の授業のテーマを子どもたちはすんなりと理解した様子だった。

続いて教師が子どもたちに見せたのは、実際に中田島砂丘で教師が撮影した動画。動画内では「どんなごみがあるでしょうか」と話しながら、中田島砂丘に落ちていたごみを拾っていく。靴やペットボトル、アイスの袋などさまざまなごみが画面に映し出される様子に、子どもたちは「こんなごみもあるの?」「うわ、いっぱいある」など興味深そうに見ていた。

印象的だったのは、動画内で教師がごみを棒で叩くなどして、どんな音が出るかを聞かせることで素材を推測させるヒントを提示していたこと。実際に実物を手で触れたりできない分、少しでも五感を使ってどんなごみがあるのかを感じられるようにしていた。コロナ禍で課外授業の実施もなかなか難しい状況でも、少しでも子どもたちがリアルな体験をできるような工夫は、他の授業でも行かせるのではないだろうか。

タブレット端末を使いながらごみの分別について話し合う

動画を見た後は、今日これから使う“ごみに関する単語”をおさらい。「burnable rubbish」「plastic items」「bottle」「can」「recyclable rubbish」など難しい単語も、絵とともにカードになって黒板に掲示されているため、いつでも確認できる。とはいえ、子どもたちも今までの授業を通じてこれらの単語はすでに理解して使えるようになっていた様子だった。

今日使う単語をおさらいしたら、動画内で教師が拾ったごみを映し出した写真を、児童のタブレット上に表示。写真を見ながら2人1組となって、コミュニケーションの練習だ。

「Where is the rubbish?」「This is burnable rubbish. Because it’s paper.」など、児童はペアで写真のごみを指さしながら分別方法を2分間話し合った。

2分経過後、教師は「言いたかったけれど言えなかった言葉はありますか?」と問いかけ。「スニーカーって何ごみだろう」など、ペアで話し合っていた場で出てきた疑問に対して、解説をしながら、「自分が言いたいことが英語で言えない!どうすればいい?」という児童の気持ちをうまくくみ取り、実際にコミュニケーションで使えるように誘導していた。

また「スニーカーって何ごみだろう」という疑問から、「スニーカーは布も使われているよね」「布は英語でなんていうんだろう。先生が教えるね」と誘導。コミュニケーションの場で出てきた子どもたちの疑問から新しい単語を教えるなど、実際のコミュニケーションの場でも出てくる“知りたい”“使いたい”という気持ちをうまく活用しながら、新たな単語も学んでいく流れは、児童にとってもすんなりと頭に入っていた様子だった。

子どもたちが身近なテーマで外国語を使って学ぶ授業

動画やタブレットの活用など、教材やツールの活用なども大いに参考になるところが多かった。しかしながら、やはり一番注目したいのが、実際の社会課題やごみの分別という身近なテーマを元に、生活のシーンで使える英語を学んでいたところだ。

浜松市内には、外国語を母語とする外国籍の人も多く在住している。子どもたちは近所に暮らすこうした人たちにごみの分別に関して英語で教えてあげるシーンもあるかもしれない。また、海洋プラスチックごみなどのごみは、海を通じて世界とつながっている。実際に、授業で登場したごみの中には、韓国語が書かれた外国から流れてきたと思われるごみも混じっていた。

こうしたことから、子どもたちは自分たちの暮らしは世界と身近なところでつながっていると感じられるきっかけになり、外国語学習にもより興味を持って取り組めるのではないだろうか。

今回の授業を実施した常名先生の狙いは、ただ外国語を身につけるのではなく、外国語学習と通じて異文化や他者への理解を深めること。そして、実際の生活の場で外国語を使ったコミュニケーションできるようにすることだ。

後編では、常名先生が取り組んでいるPBL(Project-Based Learning:課題解決型学習)の外国語教育について、インタビューする。

取材・構成・文・写真:学びの場.com編集部

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