2026.10.01
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「管理統率」から「状況調節」へ ――安心と自治を育む学級経営(3)

最終回となる今回は、これまでの議論の総括として、「1人も見捨てない、でもブレない」教師のマインドと、子どもたちとつくり上げる、頼り合える(ケアリング)関係性の未来についてお話しします。

埼玉県公立小学校 石井 雄大

「1人も見捨てない」覚悟と、流されない「ブレない軸」

インクルーシブ教育を現場で実践するとき、多くの先生が「どこまで受け入れるべきか」という葛藤にぶつかります。
1人も見捨てないという温かい姿勢は、決して何でも許容することではありません。

私が考える1人も見捨てない姿勢とは、その子がどれほど不適切な行動をとったり、一時的に教室を離れたりしたとしても、「あなたとの信頼の扉は、1ミリも閉じずにいつでも開けて待っているよ」というメッセージを送り続けることです。

同時に、クラス全体の安全や安心を守るために、やってはいけないことに対しては威圧的にならず、毅然とした態度で示すブレない軸を持ち続けることが不可欠です。
特定の子の不適切な行動に流されたり、その場しのぎで基準を変えたりしないこと。「あなたのことは大好きだし受け入れるけれど、この行動は認められない」という公正でブレない基準こそが、不安心理を抱える子どもたちにとっても安心の土台となります。

子ども自身が助け合える「しなやかな自治の力」へ

教師が温かな受容とブレない軸をオープンに示す姿は、そのまま子どもたちの手本となります。

これまでは、教師が上から一律に管理することでクラスの平和を維持しようとしがちでした。
しかし、状況調節型の学級経営が目指すのは、子どもたち自身が互いの違いや不適応を再構築できるしなやかな自治の力を育むことです。

大人が「助けて」と周りを頼る姿を見て育った子どもたちは、誰かが困ったりトラブルを起こしたりしたとき、その子を排除するのではなく、「どうすれば手伝えるかな」「〇〇先生にも相談してみよう」と、自発的にリソースを使い合えるようになります。

「あの子だけずるい」という不公平感を脱し、互いの得意・苦手を認め合いながら補い合う。教師一人の力に頼らない、本当の意味で持続可能なケアリングの関係性が教室の中に立ち上がっていくのです。

一人で抱え込むすべての先生へ――教育の未来は「頼り合い」から始まる

子どもたちの成長の差や多様な背景が広がる今の時代において、全員を四角い教室というひとつの箱に閉じ込め、一斉に統率しようとすることは、先生にとっても子どもにとってもあまりに過酷な道のりです。

どうか、完璧な担任であろうとしすぎないでください。
「ひとつにまとめなきゃ」という肩の力を少しだけ抜き、教室を多様な居場所へつなげていきましょう。
先生が誰かに助けを求め、しなやかに頼り合う背中を見せることこそが、子どもたちに「人は一人で生きなくていいんだ」という人生における大切な学びを授けます。

先生が安心して息ができる場所をつくること。それこそが、多様な子どもたちを誰一人取り残さずに包み込む、温かな教育の未来を開く第一歩なのです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。今日も全国の先生方と子どもたちの教室に、たくさんの笑顔が広がることを心から応援しています!

石井 雄大(いしい ゆうだい)

埼玉県公立小学校


公立小学校教諭。教育学者。中学時代の入院がきっかけで教師を志す。大学院卒業後、教員となる。
全国の教育関係者と繋がりながら、日々の教育実践を理論化し、広く世の中に貢献したいと考えている。
執筆活動や学会発表などを精力的に行なっている。
業績等

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