2026.09.18
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それは費用ですか、資産ですか―教師の「貸借対照表」を考える―

私たちの働き方は、何時に帰ったかで語られることが多いと思います。
でも、その数字には出てこないものがあります。かけた時間が費用で終わるのか、資産として残るのか。そんな見方をしてみませんか。

福島市立福島第一小学校 教諭 横山 淳平

何時に帰ったかで、何を測っているのだろう?

「今日は早く帰れましたか?」
働き方の話題は、たいていこの問いから始まります。今月の時間外は何時間だったか。減っていればよく、増えていれば問題がある。とてもわかりやすい指標です。

ただ、この見方だけでは落ちてしまうものがあるのではないか。最近、そう思うようになりました。

きっかけは、教員をしながらファイナンシャルプランナーの資格を取ったことでした。お金の勉強をしていると、会社の状態を見るのに、性格のまったく違う2つの表を使うのだと知りました。それを知ってから、学校のことも、この2つで見てみたくなったのです。

会社を見る、2つの表

1つは損益計算書、P/Lです。ここで使う言葉は、収益、費用、利益。ある期間にどれだけ稼ぎ、そのためにどれだけ使い、いくら残ったか。今年の成績表のようなものです。

もう1つが貸借対照表、B/Sです。こちらの言葉は、資産、負債、純資産。ある時点で何を持っていて、何を借りていて、差し引きどれだけの純資産があるか。これまで積み上がってきたものの一覧です。

どちらが優れているという話ではありません。ただ、片方だけを見ていると、判断を誤るのではないかと思います。

教師の忙しさは、P/Lでしか語られていない

学校で共有されている数字を思い浮かべてみてください。
今月の時間外は何時間だったか。この行事にどれだけ手間がかかったか。研究授業の準備に何日かかったのか。

どれも、ある期間に使った量の話です。つまり、P/Lでいえば全部が費用なのです。

では、その分何が積み上がったのか。この問いは、あまり出てきません。

研究授業で考えてみます。指導案を何度も書き直し、資料をつくり、放課後に検討会をする。ここまではたしかに負担かもしれません。
ですが、終わった後、その先生の中には教材のつくり方が残り、単元の組み立て方が残り、子どもの見取り方が残っている。来年も、その次の年も使えるものです。

負担と積み上がったもの。両方あるのに、話題になるのは負担の方が多いのではないでしょうか。もしかすると、だからこそ校内研究が、消耗としてしか語られなくなっていくのではないでしょうか。

もちろん、時短そのものに反対したいわけではありません。減らすべき仕事は、まだいくらでもあります。
ただ、物差しが片方しかないと、減らしてはいけないものまで一緒に削られてしまう。そこが心配なのです。

同じ支出でも、消えるものと、残るものがある

会計では、支出したものの扱いは分かれます。その期で使い切るものはP/Lに費用として計上し、何年も使うものは、まずB/Sに資産として計上する。消耗品を買うのと機械を買うのとでは、帳簿への書き方が違うのです。

教師が使う時間も、同じように分かれるのではないでしょうか。

書籍代を払って、教材の読み方を手に入れる。休日を使って県外の研究会に出て、そこで人とつながる。その日の帳簿の上では、まぎれもない費用です。でも使い切ってはいません。別のかたちで手元に残っています。

一方で、何にも換わらずに、ただ流れていく時間もあります。

やっかいなのは、この2つが混ざったまま、まとめて「忙しさ」と呼ばれていることです。同じ「今日は遅くなりました」の中に、資産になるものと費用で終わるものが両方入っている。P/Lだけを見ていると、その区別がつきません。

ここまで読んで、捉え方を変えればいいという話だと感じた人もいるかもしれません。しかし、私はそうは思っていません。

前向きに受け止めれば負担が資産に変わる、というものではないと考えています。実際に残るものと、残らないものがある。だから、区別する目が必要なのだと思います。

同じ時間の使い方を「これも成長のうち」と言い換えてしまったら、この考え方は一番厄介なものに変わってしまいます。

費用で終わらせないために

ここまで書いてきて、前回までの内容とつながってきました。

校内研究が「やらされるもの」になってしまうのは、負担の側面しか記録されないからではないか。今年の研究で何が積み上がったのかを言葉にする場が、そもそもないのではないか。

研究物に書かれるのは、子どもの変容についての成果です。書いた先生自身に何が残ったかは、たいてい書かれていません。
年度末の振り返りで、「今年の研究で自分の中に何が残ったか」を1人ずつ書いてみる。それだけでも、ずいぶん見え方が変わるように思います。

2学期は、行事も研究授業も重なります。かけるコストそのものは、たいてい選べません。それでも、その時間を費用で終わらせるのか、資産として残すのかは、選べる部分があるはずです。

今年の研究授業で、自分は何を受け取るのか。始まる前に、1つだけ決めておく。同じ時間をかけても、終わったあとに残っているものが変わってくるのではないでしょうか。

皆さんのこの2学期を費用としていきたいですか?それとも資産にしていきたいですか?

せっかく同じだけ時間をかけるなら、少しでも多くを残していきたいと思います。

横山 淳平(よこやま じゅんぺい)

福島市立福島第一小学校 教諭


早稲田大学大学院教育学研究科修了 修士(教育学)、日本金融教育支援機構教員アンバサダー、東北社会科を面白がる会・ふくしま社会教育士の会事務局、その他FPやICT関係の資格保有。
「子どもがいるから学校がある」をモットーに、教師としてできることを考えています。

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