2026.06.26
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カナダBC州から届ける、日本語を「つないでいく」ための学び~字幕翻訳で、教えられる日本語から届ける日本語へ~(第4回)

前回は、継承語の学びを教室や教科書の外へ広げる取り組みとして、字幕翻訳を思いついた経緯を書きました。
今回は、翻訳を通して、生徒たちが日本語を教えられるものではなく、誰かに届けるものとして捉え直していく授業の様子を紹介します。

カナダBC州公立学校教諭、日本語継承語学校教師 高井 マクレーン 若菜

字幕翻訳で日本語を届ける側へ

字幕翻訳体験を通して、継承語としての日本語を、生徒たちが誰かに教えられるのではなく、他の誰かに届けるという、言葉に本来の意味を持たせる側に回ることができるのではないか。
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日本の伝統文化も、教えられる側から外部へ(インターネット上であれば周辺の地元コミュニティだけでなくもっと多くの人たちへ)伝える側に立つことができます。そうすることで、学び自体が、つなぐ媒体ともなり、学び手が継承の主体者になるのではないか。
すべてがつなぐというキーワードで合致すると思ったのです。

翻訳の経験がプロジェクトを後押し

今でこそAIの登場で翻訳という仕事は少なくなってきているかもしれませんが、私自身が学生の頃にとてもあこがれていました。
中学一年ではじめて英語の授業を受け、この言葉をどうしても身に付けたいと決め、高校での留学を経て、学生時代に英文学を専攻し、その後翻訳・通訳学校でコースを履修しました。カナダに移住後、在宅で仕事をするために試験を受け、BC州公認翻訳者となりました。

このように、自身が翻訳を仕事としてきたことが、このプロジェクトへの後押しになったことも否めません。
プロジェクトにおいて、年齢の幅は考えないとはいったものの、幼児や小学校低学年では無理があり、学ぶ側の継承語のレベルも高いものが求められます。
教える側がSource Language(今回は日本語)とTarget Language(今回は英語)に精通していなければなりません(注1)。そしてルーツが全く異なる言語を変換するのは、たとえ両方に長けていたとしても、簡単な作業ではありません。

翻訳の奥深さに気づいた子どもたち

授業は「翻訳って何」という問いかけで始まりました。
子どもたちからは、「一つの言葉から別の言葉に置き換えること」というしっかりした返事がありました。
絵本や書籍、学術本、マンガの日本語版と英語版を手にとって確認し、アニメの日本語版と英語版を耳で聞き、字幕を目で追いました。日本語と英語を日常的に使いこなすバイリンガルや、学校ではフランス語で過ごしているトライリンガルでありながら、生徒たちは字幕や翻訳に関して、これまでそれほど意識してこなかったことを知り、驚きの連続でした。

字幕は一つの画面に2行までしか入っていない、画面に残るのは2秒程度しかないなど技術的なことを発見しました。訳すと一口に言っても、訳、校正、それを繰り返す複数回にわたる作業があります。そして言葉にも賞味期限のようなものがあり、文学作品には何通りかの訳が存在することがある、など。

自分たちの頭の中では当たり前に捉えられている言葉と、もう一つや二つの言葉の行き来は、想像以上に複雑で、不思議なものです。それを日常的に行っていることに、少し高揚感を覚えた様子がこちらに伝わってきました。
そして自分たちだからできるにちがいない、ちょっとだけ難しそうだけどきっとおもしろい、だからやってみたいという好奇心が、くっきりと顔に表れていました。
ほんの少しだけできることの上を目指しつつ、学習者が好奇心で自ら進んでいく学びになる予感にあふれていました。

(注1)翻訳や通訳で、Source Languageはもとの言語、Target Languageは訳した言語を指します。今回の場合、子どもたちは日本語から英語字幕を作ったため、Source Languageは日本語、Target Languageは英語でした。

高井 マクレーン 若菜(たかい まくれーん わかな)

カナダBC州公立学校教諭、日本語継承語学校教師


群馬県出身。関西圏の大学で日本語および英語の非常勤講師を務めた後、カナダ国ブリティッシュ・コロンビア州へ移住。現在はBC州の公立学校で教えながら、継承語学校でも日本語日本文化を教えている。

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