2026.06.02
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教科横断で「好き」を育み「得意」を伸ばす実践

「好き」を育み、「得意」を伸ばすは、次期学習指導要領のキーワードにもなっている言葉です。それぞれの児童が、自分の好きを突き詰める過程で、学びを定着させ、新たな学びの原動力につなげることを想定しています。
まさに、今の時代の理想的な教育ではあると思いますが、実際はどのような教育活動が考えられるのでしょうか。従来の教員主導の一斉授業から、このような教育に転換することは、これまでの常識を覆し続けなければならない、とても力がいる作業ではないかと思います。
ここでは、そうした授業スタイルに向けた実践を紹介します。

岡山県矢掛町立小田小学校 教諭 角田 直也

教科横断で学びを効率化する表現活動

出典:文部科学省「資質・能力の育成に向けた内容の改善・充実について」より

次期学習指導要領のキーワードである「好き」を育み、「得意」を伸ばすや、「学びをデザインする高度専門職としての教師」をどのように教育実践に生かしていくか、教員の手腕が問われるようになっています。
「柔軟な教育課程」においても、教員の自由度が増す一方で、効率的な学びにより児童へのカリキュラム負荷を減らし、学びを深める必要があり、教員としての責任を感じるところです。

その中で、今後の教育のカギとなるのが、表現(言語)活動だと感じています。児童が学んだことを、自分事としてとらえて、アウトプットする過程で知識の定着を促すことを目指します。

そこで今回は、教科横断的な授業の展開例について実践を紹介します

社会科の政治学習を軸にした町づくり

6年生は、社会科「わが国の政治の仕組み」(日本文教出版)で政治について学習します。政治は、社会問題にもなるほど関心をもちにくい題材です。この学習を軸に、表現活動を行いました。

社会科では、日本国憲法に記載されている三原則や三権分立について学習をします。表現活動としては、法令や予算などに着目して、国や地方公共団体の政治の取組を捉えて表現することが求められています。また、児童が生活する地方自治体の条例や施策についても学習と関連付け、知識を広めます。

ここで私は、「理想の町づくり」と称して、児童に自治体の長や議員になったつもりで政策を提言する活動を行いました。それぞれの自治体は、人口の推移や予算の扱い、現在の政治の方向性などが書いてある総合振興計画があります。すべて読むことは児童にとって負荷が大きいので、AIに読み込ませることにしました。

そのうえで、AIとの対話を通して、理想の町の施策や予算の扱い方などを考えるようにしました。児童にとっては難しい内容を扱うことを懸念していましたが、AIが児童にもわかりやすく情報をシンプルに伝えていたので、児童はさまざまな施策を立案していました。

国語で提案する文章に書き表す

国語「デジタル機器と私たち」(光村図書)では、構成を考えて提案する文章を書く活動に取り組みます。情報を集めて、相手を効率よく納得させる文章の構成を考えたり、データを使ったりすることが目標です。

そこで、「理想の町づくり」について考えたことを、文章に書き表していきます。すでに社会科の学習で、多くの情報を得ることができていますし、理想の町づくりのイメージはできています。

学習指導要領に定められている、文章の構成の作り方や書き方などは、国語科の授業で確実に指導します。児童にとっては、社会科と国語科で2つの表現活動について考える負担が減るだけでなく、気持ちが乗りにくい国語科の書く活動についても自分事として取り組むことができました。

図画工作科で理想の町を表現する

図画工作科「まだ見ぬ世界」(日本文教出版)は、画用紙に1枚の写真を貼り、その周りを想像して描く授業です。発想力やひらめきを高めることがねらいの授業です。今回は、地域のお気に入りの風景や、模範とする町の様子を印刷した写真を使い、その周りを自分の理想の町になるように仕上げていきました。

ここでも、作品の構成や技法などをゼロから考えるのではなく、社会科や国語科でブラッシュアップされたイメージを絵で表すため、児童の負担軽減と目的の明確化によって児童が自分事として主体的に学習をすることができました。また、地元の風景とともに絵を描くため、郷土を愛する心情を育むことも意図しています。

地域に届ける表現活動の集大成

教科横断学習のイメージ図(筆者作成)

最後は、来校者が多く通る廊下や地元公民館に掲示してもらうことで、児童の考えを地域の人に見てもらいました。シールや投票箱などを活用して、実際の選挙をイメージしてみるのも一つの例として考えることができます。

児童が長い時間をかけて行った表現活動を、作ることが目的で終わらないようにすることが教員のミッションであるように思います。また、このように複数教科を横断的に学習することで、個別最適化された学習を達成することができるかもしれません。

国語科の書く活動が苦手な児童は、図画工作科の描く活動を重点的に取り組んだり、社会科の授業の中で画期的な施策を考えたりするなどの方法も考えられます。児童の「得意」を中心に、他の授業にも取り組むことができるような学びのデザインです。

今回の実践は一例にすぎませんが、教員のアイデアと実践力次第で、児童に対してカリキュラムの負担を軽減し、自分事として取り組む授業を展開することができました。これからの教員は、ますますアンテナを広げ、前例踏襲にこだわらずユニークな実践を行っていくことが求められるのかもしれません。

角田 直也(かくだ なおや)

岡山県矢掛町立小田小学校 教諭


特別(聴覚)支援学校、青年海外協力隊(マラウイ)、公立小学校に勤務。
近年は、総合的な学習の時間に行う地域をフィールドにした活動を軸として、教科横断的なカリキュラム編成を実践・検証し、地域学習と教科学習の双方の深化について研究しています。
また、先輩教員のノウハウと新しい"観"の教育を融合しつつ、若手教員と共に学ぶ新しい研修方法を実践しています。

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