子どもに集中するために~日本での3週間と教室の空気のこと
アメリカ・モンタナ州のボーズマンという町で、モンテッソーリ保育士として働くかたわら、大学院でも学びを深めています。
今回は、3月の日本帰国中に感じたことについて綴ります。
ボーズマン・モンテッソーリ保育士 城所 麻紀子
日本で見つけた、教室へのおみやげ
今年の3月、私は3週間、日本に滞在していました。父の七回忌を無事に済ませ、家族や友人たちと過ごしながら、いつもの仕事から少し距離を置く時間を持ちました。
とはいえ、気持ちが完全に仕事から離れていたわけではありません。ボーズマンの教室にあるカルチャー・バスケットに入れる日本のものを探していて、最初は浴衣がいいかもしれないと思っていました。けれども、浴衣は帯を結ぶのがなかなか大変で、小さな子どもたちが自分で扱うには少し難しそうです。
そこで今回は、甚平を二組購入してみました。男の子も女の子も一緒に楽しめそうな柄を探し、紫陽花柄と花火柄のものを選びました。子どもたちにどんなふうに紹介しようか、そんなことを考える時間もまた、楽しいものでした。
日本とアメリカ、子どもたちを見て気づいたこと
日本で過ごしていると、つい子どもたちの姿を目で追ってしまいます。妹の家の近くの海辺では、学童保育の子どもたちがにぎやかに過ごしていました。なかなか大人の言うことを聞かない子もいて、その様子を微笑ましく感じながら、しばらく眺めていました。
また、街を歩けば、保育園や「キッズ○○」という看板が思っていた以上に多いことにも気づきました。都会の小さな公園でも、保育園や幼稚園の子どもたちが先生と一緒に遊んでいる姿に出会うと、つい足を止めて見入ってしまいます。
日本に来る前、私はどこかで、日本の子どもたちはアメリカの子どもたちより静かなのではないかと、勝手に想像していました。
けれども実際に見てみると、もちろん子どもは子どもで、それぞれです。大きな声で叫ぶ子もいれば、友だちとふざけ合う子もいるし、大人の声かけにすぐには応じない子もいます。
そのあたりは、日本でもアメリカでも案外変わらないのかもしれないと思いました。
離れて見えてきた教室の空気
一方で、日本に滞在しているあいだ、私の働くモンテッソーリの現場では、少し落ち着かない変化が続いていました。
もともと大人どうしの小さな行き違いや、コミュニケーションの掛け違いが重なっていることは感じていました。それが教室の空気にも影響することを、離れた場所から考えていました。
私は以前、一般企業で働いていましたが、そのときは、組織の中で意見の違いや摩擦が起こるのは珍しいことではありませんでした。
けれども、保育の現場では、その重みがやはり違うように感じます。相手は単なる「顧客」ではなく、保護者であり、その先に子どもたちがいるからです。
園の中の大人どうしのぎくしゃくした空気は、目に見えないかたちで教室全体に広がり、子どもたちの安心や保育者の落ち着きにも影響してしまうように思います。
本来、私たちがいちばん意識を向けるべきなのは、目の前の子どもたちです。だからこそ、大人どうしの関係が整っていることの大切さを、今回あらためて感じました。
教具だけでは整わない「準備された環境」
モンテッソーリ教育では、「準備された環境」が大切にされています。私はこれまで、この言葉を教具や棚の配置、動線の美しさ、子どもの手に届く秩序、そして大人一人ひとりの安定したあり方として受け止めることが多かったように思います。
けれども今回、準備された環境はそれだけでは成り立たないのだと感じました。
大人どうしの関係が落ち着いていてこそ、子どもは安心して過ごすことができ、保育者もまた落ち着いて子どもを見ることができます。さらに、そうした空気が保護者にとっても、子どもを安心して託せる場につながるのだと感じます。
日本で子どもたちの姿を眺めながら、私はできるだけ大人たちのごたごたに引っぱられすぎず、子どもたちに集中したいと感じました。
環境を準備するとは、物を整えることだけでなく、人と人とのあいだを整えることでもあるのだと思います。

城所 麻紀子(きどころ まきこ)
ボーズマン・モンテッソーリ保育士、元サンディエゴ日本人向け補習校講師、モンタナ州立大学院家族消費者科学科 修士課程
2020年からアメリカのモンタナ州の人口5万人の町で、モンテッソーリ保育園の保育士をしています。
アメリカといっても、白人約90%、アジア人約2%(最近増えました!)という環境です。
あまり日本人の方に知られていない、アメリカの田舎での教育や生活の様子などを共有できたらいいなあと思っています。
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