2017.11.29
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教師はもっとたくさんの人と関わるべき

私は現在の短大に移る前、長く小学校に勤めていました。小学校の教員の生活では、多様な人との関わりはあまりありませんでした。現在、様々な場所で、様々な人と出会い、多くの学びを得ています。今回は、教師の学びと人との関わり、そして学校のあり方について書いていきたいと思います。

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師 鈴木 邦明

「後手後手の対応になっている学校現場」

私は小学校の教員をしているこの3月まで、年齢のこともあり、少し対応の難しい子どもを担当することも多く、自分のクラスを空けてまで、研修などにはあまり行けていませんでした。そういった状況においては、新たな出会いや刺激なども多くなく、どうしても保守的な感じになってしまいがちです。勿論、土日に様々な研修会などの自主的に参加し研鑽を積んでいる人や平日の夜に地域の教育サークルなどへ参加している人もいます。現在の学校が置かれた状況を見ると、残念ながらそういった人は少数派でしょう。

教員の仕事に目を向けると、教員は様々な状況の子どもや親と関わらなければなりません。感覚としては、以前よりも家庭が多様化してきているように感じます。個性を認めようという流れもありますし、ICTなどの発達がそういった部分を加速させているようにも思います。そういった多様化した子どもや親に対して教員は柔軟に対応していくことが求められます。しかし現状は対応しきれていないという状況にあるように思います。

どうしても人間は自分の経験から物事を考えてしまいます。教員も同様です。教員になる人は、ある程度真面目で、勉強も嫌いでなかったということが多いです。学生時代に勉強が嫌いだった人は、教員免許を取り、採用試験を受け、教壇まで辿り着くことが難しいからです。また、家庭環境を含めて、ある程度整った環境で育ってきた人が多いです。

「文科省と学校現場のギャップ」

教師に働き方改革が議論になっています。国レベルやマスコミでは大きく話題になっています。しかし、現場レベルとなると、そのトーンが落ちてくるように感じています。国レベルでの議論などは、どれも真っ当なものです。しかし、それを現場に落とし込もうとすると、現場からは「そうは言ってもなあ・・」と言う声が聞こえてきそうです。学校を早く退勤したけれども、その仕事を結局自宅でやっているようではあまり意味がありません。形だけの「働き方改革」になってしまいます。国レベルでは、素晴らしいものが、県、市町村と伝わるに従って少しずつ意味合いが変化し、末端の現場まで届いた時には、別物のようになってしまうということがあります。

「改革のキーパーソンは校長」

現在の教師に働き方改革においてキーポイントとなるのは、現場の校長先生でしょう。学校は、校長の考え方次第で変わります。現在の働き方改革についても条例などを変えるようなことをしなくとも、校長が学校内の意識改革をしていくことで十分成功させることは可能です。横浜市立永田台小学校などは正にその一つです。他にも全国には意欲的な校長が子どもにとっても、親にとっても、教師にとっても、地域にとっても喜ばれる形で学校改革を進めている所があると思います。そういった学校の知見がもっと共有できると良いと思います。

今の校長と呼ばれる立場の人は、40~50年前に自分自身が学校で教育を受け、昭和の終わり頃から平成の始めの頃に教職に就いた人達です。自身の経験だけを頼りにしたとしたら、随分と時代遅れの教育となってしまいます。逆に校長が様々なことに関心を持ち、自らが学び続けるような人の場合、学校も変わってきます。

先程も書いたように世の中は多様性に満ちています。学校、学級は世の中の縮図だとも言われます。学級も多様性に満ちています。そういった多様な状況に対応すべく、教員も様々な経験をして、資質能力を高めることが求められます。朝から夜遅くまで学校で仕事をし、その後、疲れ果て、寝てしまうような平日、身体を休めることが最優先の休日という生活では、資質能力の向上は望めないでしょう。

「終わりに」

現在、働き方改革が話題になっています。どうしても「時短」のようなものがテーマの中心になっています。もっと「教員の資質の向上」という部分が取り上げられてくると良いと感じます。採用された時、教師として素晴らしい資質を持っていると感じた若者が、忙しさなどの中、数年間で擦り切れていくような感じになっていく姿を見た事があります。本当は先輩である私たちがしっかりとフォローをしていかねばならないのですが、中堅は若者同様、もしくはそれ以上に厳しい状況でした。学校全体に余裕が無く、本来非常に大切であろう「教員の資質向上」の部分に力を入れることができなくなっているという状況でしょう。ちょうど今、学習指導要領の改訂に向けて、学校教育活動の様々な部分に手を入れている最中だと思います。教師の働き方改革がマスコミなどでも取り上げられ、行政、議会などでも話題になっています。そして、社会も関心を持っています。学校が大きく変わるチャンスです。戦後、現在の学校教育システムが出来て以来の大きな変革のチャンスだと思います。この機会を逃すとまたずっと様々な問題を抱えたままの学校が続いていくことが予想されます。教師が主体的に動き、自分たちが働く場である学校をより良いものにしていって欲しいと願います。

鈴木 邦明(すずき くにあき)

帝京平成大学現代ライフ学部児童学科 講師
神奈川県、埼玉県において公立小学校の教員を22年間務め、2017年4月から小田原短大保育学科特任講師、2018年4月から現職。子どもの心と体の健康をテーマに研究を進めている。

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