2018.01.12
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対話から議論へ

授業の中で、「p4c(philosophy for children)」という手法により、正解のない問いについて対話する機会を設けています。以前書いた記事はコチラ→(https://www.manabinoba.com/tsurezure/016000.html)。これは、私が授業でつけたいと考えている「発信力(=自分の考えを伝える力)」を身につけることを目的としています。何度も対話を繰り返すうちに、中身も深まり、その効果もだいぶ実感できるようになってきました。

一方で、実社会においては、自分の考えを一方的に伝えるだけでなく、他者の意見に対して批判的なコメントをしたり、互いの意見をぶつけ合って納得解を得たりする場面が出てくると思います。「p4c」は「否定しない」「まとめない」といった原則を守ってやってきましたので、それとは別に機会を設けようと考えました。が、実を言うと、議論が活発化せず、失敗に終わってしまいました。そこで、自己反省をしたり、事後検討会や校外の研修会等で意見を求めたりして改善点を見出してきました。今回はそんな経緯を含め、「対話から議論へ」というテーマで記事を書いてみました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

新たなステップへ

授業で「p4c」に取り組んでから、安全・安心の場も確立され、大きな成果を感じていました。ただ、「p4c」では「否定しない」「まとめない」といった原則があり、それが守られているからこそ、口を開いた生徒もいたと思います。一方、実際の世の中はそういった原則が守られている場ばかりではありません。自分の考えに対する反対意見もあるでしょうし、お互いに譲って妥協する場面もあるでしょう。そこで、「p4c」の対話の時間とは別に、互いが議論できる時間を設けようと考えました。

なお、「対話」と「議論」について、私なりの考えは以下のとおりです。
「対話」・・・互いが互いの意見を尊重し合いながら、その価値観を共有。質問はアリだが、否定したり、まとめたりしない。
「議論」・・・出された意見に対し、根拠を持って賛成したり反対したりする。また、その意見のぶつかり合いによって、場合によっては納得解を模索する。

授業の流れ

前述した経緯を踏まえ、歴史の授業の単元のまとめとして、以下のような授業を行いました。

テーマ「あなたが第一次世界大戦前のドイツにいたら、ビスマルクとヴィルヘルム2世、どちらに賛同するか?」
単元のまとめとして実施なので、第一次世界大戦でどうなったのか、ビスマルクとヴィルヘルム2世の考え方はどうなのかといったことは既習。

(1)2人の人物の考え方の違いについて復習。
(2)テーマについてプリントに個人で意見を記入。
(3)(2)を踏まえ、テーマについて議論。
  ※ 「p4c」の対話と同様、10名程度で輪になって進めました。
(4)振り返り。

あまりに広いテーマだと、他の人が意見を出しても「そうなんだ~」くらいで終わってしまう可能性があります。なので、今回は、テーマの中に異なる2つの立場を設けることで、あえて反対意見を出しやすいようにしてみました。が、それまで「p4c」の対話は十分成り立っていたにも関わらず、うまくいかず、こちらの意図したような成果は上がりませんでした・・・。

授業の反省

うまくいかなかった原因について、自分で振り返ったり、校内の事後検討会で意見をもらったり、校外の勉強会で話題にしたりして、あれこれ考えてみました。いろんな意見があったのですが、私なりにまとめてみました。

≪うまくいかなかった原因≫
(1)教科の内容が濃く出ている問い(テーマ)だったため、生徒たちが取っつきにくかったようです。例えば「なぜ人は戦争するのか?」といった問いと異なり、自由に意見を述べるというより、「歴史的な事実を正確に踏まえる必要があるのでは?」と、生徒側が強く意識してしまい、学習内容を忘れているといった場合などに意見を言いにくかったようでした。

(2)歴史的にすでに終わっている事柄について、その単元の学習が終わった後に聞かれても・・・といった感想も出ました。こちら側の立場を選んだらこうなるという事実があるわけなので、それを議論で覆すのは難しかったと思います。これは、こちらの問いの立て方がまずかったと反省しています。

(3)「p4c」の対話と同じ時間配分で行ったため、意見を共有することはできても、そこから新たな展開を生むには時間不足となってしまいました。かと言って無限に時間を確保するわけにもいかないので、短時間で効果的に議論が生まれる工夫が必要だと感じました。

改善に向けて

上に書いたような反省を踏まえ、改善に向けたアドバイスや自分で考えたことをまとめてみました。

(1)単元のまとめではなく、単元の最初の方で問いを投げかけてはどうか?という意見がありました。歴史的事実を学んでから、それを覆す議論をするよりは、学ぶ前に意見を出し合うのはアリかなぁと思いました。

(2)問いに関して、必ずしも片方が正しくて片方が誤りといった設定はどうなのか?というアドバイスがありました。例えば、「戦争を起こさずに済ませるなら、どの時点で、どんなことをやれば良かったか?」といった具合です。

(3)議論をさせる初期段階であれば、ある程度の意見が出た段階で区切り、出た意見に対する自分の考えを書かせる個人ワークをワンクッション入れては?とも考えました。議論の途中で、「この点についてどう?」とあらためて問いかけることで、反対意見であっても出しやすくなると思いました。

本当にちょっとしたことでも、それが原因で授業がうまくいかないことは多いと思います。逆に、ちょっとした工夫がきっかけで大きな成果が上がることもあると思います。様々な場で様々な立場の方から意見をもらったことで、自分自身の授業の組み立てや問いの吟味の甘さを感じることができました。年度末まであと少しですが、そこでできることもたくさんあるはずです。「今年度はとりあえずこれでいいや」とならず、改善できるところはスグにでも見直していきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。2018年もよろしくお願いいたします。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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