2024.09.09
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子どもの哲学(p4c)とは何か 道徳の授業で対話する(vol.5)

p4cを知っていますか。p4cとはphilosophy for childrenの略称で、子どもの哲学、子どもの哲学対話などと訳される教育実践です。
私は子どもの哲学(p4c)の道徳での活用に注目し、授業実践について日々模索しています。

仙台市公立小学校 教諭 齋藤 祐佳

p4cの基本的な流れ

これまでの記事でご紹介した、p4cの流れを復習してみます。
p4cの基本的な流れは、以下のようになります。

  1. 輪になって座る:参加者で輪になって座ります。
  2. 問いを立てる(問いを選ぶ):今日、みんなで考える問いを、みんなで考えます。
  3. 対話のルールを確かめる:対話を始める前に、ルールを確認します。
  4. 対話を行う
  5. 対話の振り返りをする

今回の記事では、道徳の授業でp4cを実際に取り入れる実践をご紹介します。
それでは、これまでの記事に引き続いて、対話を行うところからご紹介します。

道徳の授業で対話する

私が昨年度、小学校高学年の担任をしていた際には、以下のような流れで行いました。
私自身、年間を通してp4cを子どもたちと進める中で、最終的にこのような流れに落ち着きました。

私は、子どもが事前に教材文を読む時間を取り、子どもから問いを集めておき、道徳の授業内で多数決で問いを選びました。
問いが決まったら、みんなで輪になって対話をはじめます。
私は、音楽室に移動したり、教室の後方に机を移動させて教室にスペースを作って輪になったりしていました。

対話の実際

では、実際がイメージできるよう、ファシリテーター(教師:T)の台詞と想定される子ども(C)の発言を書き出してみます。

T「最初に、p4cのルールを確認します。ルールの1つ目は、コミュニティボールを持っている人だけが話せる。2つ目は、まだ話していない人にボールを回す。3つ目は、話せないときはパスができる。話したくなかったり、まだ自分の考えが決まっていなかったりして、話せないときはパスができます。ボールが回ってきたからといって絶対に話さないといけないわけではないから安心してね。最後のルールは、相手を傷つけるようなことは言わないことです」

(全員でルールを確認します)

T「では、今日みんなで考える問い『○○は本当に○○か』を出してくれた人はだれかな?」
(最初の問いをだしてくれた人を確認します。問いを出したのが自分だと意思表示することに抵抗がある子もいるかもしれないので、確認できなくても構いません)

T「○○さんは、どうしてこの問いにしたのかな?...どうしてこれが気になったのかな?」
C1「○○だから、気になって…」

T「…ということだけど、ほかの人はこれについてどう思う?」
(話したい人は手を挙げたり、はい、と言ったりして意思表示をします)

C2「私は、それについて○○と思いました。前に、○○で…」
C3「うーん、ぼくも考えてみたけど、ぼくは違う考えでした。○○は、本当は○○に思えるけど、○○のこともあると思いました」……

と続いていきます。

対話が停滞したら...

対話が停滞した時には、以前の記事(vol.2)でご紹介した、WRITEC(ライテック)を活用し、問いを深めていきます。

WRITEC(ライテック)は対話を深める視点を与える6つの単語です。
6つの単語のアルファベットの頭文字をとって、WRITEC(ライテック)と呼ばれています。

  • What(意味)どういう意味かな ?
  • Reason(理由)なぜそう思うの ?
  • Assumption(前提)それって当たり前かな ?
  • Inference/If~then~(推論)もし~なら~ということになる ?
  • True(真実 事実性)本当にそうかな ?
  • Example/Evidence(事例 証拠)例えば ? 証拠は ?
  • Counter-example(反例)でも、こういうこともあるのでは ?

これらを使うなら、以下のような、対話を深める視点が生まれます。まだ慣れないうちは、ファシリテーターである教師が率先して使えば、自然に子どもからもライテックを活用した問い返しが出てきます。

「○○はどういう意味かな?」
「○○さんは、なぜそう思うの?」
「…と、いうことは、もし○○なら、○○ということになる?」
「本当にそうかな?本当にこの方法しかないかな?○○って本当?」
「じゃあ、例えばどんなことがある?例えば、どんなときに○○?」
「みんなの意見では、○○が多かったけど、○○っていうこともあるんじゃない?」

問いや対話に正解はありません。ですから、私はその時々の対話をどこかに方向付けようとせず、楽しむことが大切だと思っています。

次回は、対話を終えて、対話の振り返りの方法をご紹介します。
また次回もお読みくださるとうれしいです。

参考資料
  • 「探究の対話(p4c)」はじめの一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 3月改訂
  • 「探究の対話(p4c)」次の一歩 宮城教育大学 上廣倫理教育アカデミー 2019年 11月発行

齋藤 祐佳(さいとう ゆか)

仙台市公立小学校 教諭


公立小学校にて勤務しながら、よりよい教育を模索している。
宮城教育大学教職大学院にてp4c(子どもの哲学対話)を研究し、現在は心理的安全性を高める学級経営、子どもと対話し考えを深める道徳教育に生かす。
『初任者教師のスタプロ ハッピー学級経営編』(東洋館出版)にてコラムを執筆。
note(https://note.com/haru_kaneko)では、子どもとの日々をありのままに綴っている。
日本教育心理学会所属。

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