初任の先生に知ってほしいーベテラン教師がやっている、たった2つの話し合いのコツー
この記事をご覧になっている初任の先生は、授業で「子どもが話し合いをしない」「なかなか意見を言ってくれない」という悩みを抱えているかもしれません。
実は、私も初任の頃、同じ悩みを抱えていました。全く子どもが発表をしてくれず、話し合いが進まなかったからです。
今回、紹介する方法は誰でもできて、子どもが話し合いに参加してくれる方法です。
初任の頃の自分に伝えたい方法だと思っているくらいです。是非お試しください。授業がガラッと変わりますよ!!
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
先生のリアクションは子どもよりワンテンポ遅らせる
結論から言うと、先生のリアクションを子どもよりワンテンポ遅らせると子どもは自由に話をすることができます。もし、子どもの考えに対して先生が先に「その考えは素晴らしいね」とリアクションをするとします。すると、子どもたちは「先生が認めているから、その考えはいい考えだ」と捉えるからです。また、「この考えはあまりいいと思わないんだけどなぁ」と思っている子どもは反対意見を言いにくくなってしまいます。
もちろん、例外もあります。その一つに「間違えているよ」と思える場合です。例えば、2.3×3=69です。この誤答は筆算で計算した後に小数点をつけていません。しかし、先生が「この計算で答えは合っているね!」と先にリアクションすると、「これは合っているよ」「いや間違っているよ」と意見が分かれるからです。先生のリアクションによって意図的に子どもの意見が分かれます。私はこれを「ダウトをかける」と呼んでいます。
しかし、子どものリアクションがない場合やリアクションが遅い場合があります。その時は、発表した子の方を見て「みんながリアクションしてくれないと、不安だよね」と発表した子の気持ちに寄り添います(これについては今後詳しくお伝えしたいと思います)。聞き手の子どもたちの心を揺さぶり、話し合いに巻き込むためです。また、「って言っているけど、みんなはどう?」と問い返します。これについては、この後詳しくお伝えします。
子どもの話し合いの主体はあくまでも子どもです。だから、子どものリアクションを優先することが大切です。それでは、ここでのまとめをしておきましょう。
まとめ
・先生のリアクションは子どもよりワンテンポ遅らせる。
「って言っているけど、みんなはどう?」と問い返す
次の方法は、「みんなはどう?」と問い返す方法です。なぜ、この問い返しをするかというと、「どう?」という大まかな問い返しは、話を広げる役割があり、子どもがこの問い返しの後に必ず意見を発表するからです。
現在、本校では教育実習の学生が授業をしています。本当に彼らは一生懸命教材研究をして、授業を頑張っています。あまりに頑張りすぎて、子どもが発表した後に、その発表をわかりやすく上手にまとめて説明をするのです。大変わかりやすい。これを読んでいる先生方も子どもの発表の後に説明をしていませんか?
実は、これは落とし穴なのです。先生が子どもの発表を説明することで、子どもは発表を聞かなくなるのです。だって、聞かなくても、先生がその後わかりやすく説明をしてくれるからです。また、発表する子も次第に減っていきます。自分が発表しなくても先生が上手に説明をしてくれるからです。
では、どうすればいいのでしょう?その方法とは、ズバリ「みんなはどう?」と問い返す方法です。
皆さんは、『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ)という番組を知っていますか?番組を見ていると、明石家さんまさんは出演者の身なりやちょっとした話題や発言などを取り上げて、「どうなん?」と話を振っています。ある種ファシリテーターのような立ち位置です。これは、授業でも同じです。授業では、一人の意見だけでなく、いろんな子どもの意見を引き出して、話し合いをします。私は、どの授業でも私の授業では話し合いのスタンスは以下のように言葉をかけます。
- 「君はどう?」
- 「あなたはどう?」
- 「みんなやっぱり同じなの?」
- 「みんながそういうんだったら、そうなんだね。」
たとえ同じ意見であっても、「あなたの言葉で言ってごらん。もしかしたら、あなたの使っている言葉でわかってくれる友達がいるかもしれないよ」と言って、自分の言葉で意見を述べるようにします。そして、「って言ってるけど、みんなはどう?」と聞いている子どもたちに話をふります。
今、この原稿を書きながら、過去に指導案の検討会をした時のことを思い出しました。
「もうさぁ、俺は今回の授業で、『どう?』としか言おうと思ってないからね。」
私の尊敬する先生の放った言葉です。私はこの言葉を聞いた時、「この先生は本当に子どもの話し合いを大事にしているんだな」と思いました。
この記事をご覧になっている方は「この発問で本当にいいの?」と思うかもしれません。確かに、大まかな発問なので、突拍子もない意見が出る可能性もあります。私もそう思います。なかなか、思い切った方法なので、私には「どう?」と連発する勇気はありません。なぜなら、「どう?」という発問により、自分が教材研究して想定している以外の、思わぬ意見が出てくるかもしれないからです。だから私はせめて、授業の後半、子どもたちの考えをまとめるときに「どう?」と問い返すようにしています。
結びになりますが、「どう?」と問い返すことで、子どもに意見を求め、話し合いを活性化させることができます。もしよければ、これまでの授業に1回だけでもいいので、「どう?」という問い返すスパイスを加えてみてはどうでしょうか?きっと子どもたちが話し合いに自ら進んで参加するようになるはずです。それでは、ここでのまとめをしておきましょう。
まとめ
・「どう?」と問い返すことで、話し合いが活性化する。
最後に
今回のお話はいかがでしたか?
本当は、3つ伝えようと思っていたのですが、原稿が長くなってしまったので、2つに厳選しました。今回紹介しきれなかった方法は、今後紹介しますね!
この内容は、授業スキルアップ研究会 でも扱っています。また、授業に関する内容は、『子供がなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』 (東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』 (明治図書)もぜひ参考にしてみてください。
関連リンク
神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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