日本のスポーツ教育とスポーツ産業の未来
日本の学校において、最も長時間取り組んでいるものが部活動ですが、それとは全く関係ない職種に就職していくことが多いです。
中学校部活動の地域移行はそれを正すチャンスでもあります。
スポーツでがんばってきたことが報われる世の中・地域を創生する必要があるのではないでしょうか。
旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也
はじめに
5年の長きに渡り、私の連載を読んでいただきありがとうございます。
今回が連載最後となります。
今回は「日本のスポーツ教育とスポーツ産業の未来」について考えていきたいと思います。
私が受け持っている学生
私は現在、保育者志望のスポーツ教育ゼミ生と、教員志望のバスケ部員を身近に受け持っています。
どちらにも共通して言えることは「スポーツについて特別な思い入れがある学生」ということです。
しかし、ほとんどの学生はスポーツとは関係ない職種に就職していくこととなります。
日本のスポーツ教育
日本のスポーツ教育は学校中心に部活動という形式で行われています。このシステムは全世界的に見てかなりレアなようで、他国は地域中心の形式となっているようです。学校中心に行っているところはアジアの数ヶ国しかありません。その少ない国々の中でも、ほぼ全員が所属するという大規模な学校中心形式で行われているところは日本しかないようです。
ここに私は違和感があります。これだけ学校でスポーツに力を入れ取り組んでいるのに、ほとんどがこれまで培ったスポーツの経験と全く関係ないところへと就職することになります。「忍耐力や主体性が身につく」などの意見もあるのは重々承知です。しかしそれはこれまでバスケをやってきた人に「バスケで鍛えた精神力があるからサッカーも上手いでしょう」と言っているのと同じです。無茶苦茶な理論です。もっとこれまで培ってきた努力を有効利用できないのでしょうか。
日本のスポーツ産業
現在日本では、中学校部活動を学校から切り離し地域移行させていこうとしています。しかしなかなか進んでいきません。それもそのはずです。日本では子どものスポーツは学校において無償で行うのが当たり前となっているからです。それを地域にて有償で行うのはかなりハードルが高いでしょう。
そのため始めは地方公共団体や大学スポーツが関わりリードして進めていくことが必要です。そして軌道に乗せてから民間委託していくことが求められるでしょう。日本はスポーツ産業が発展途上にあります。もっと発展させてスポーツをがんばってきた価値を生かせる社会を創っていくことが大切です。
最後に
現在、中学校部活動の地域移行が課題となっていますが、やがてそれは幼児や小学生の年代にも求められるようになってくるでしょう。そして地域のスポーツ産業が発展していくきっかけとなるでしょう。
私の受け持っている学生たちが、これまでの経験をより生かせるような社会に変えていきたいと、大学教員として考えています。ぜひ北海道旭川市のスポーツに注目していてください。
謝辞
これまで長い間、読んでいただきありがとうございます。今後も不定期に投稿させていただくことがあるかもしれません。その際はぜひご一読いただけたら幸いです。
また5年もの間(多分最長?)、学びの場.com教育つれづれ日誌の運営の方々にもお付き合いいただき、大変お世話になりました。本当にありがとうございます。今後とも引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。
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倉敷市立連島南小学校 教諭
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前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭 -
近畿大学 語学教育センター 准教授
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大阪市立堀江小学校 主幹教諭
(大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年) -
東京福祉大学 国際交流センター 特任講師
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静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
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兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭
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浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師 -
愛知県公立中学校勤務
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鹿児島市立小山田小学校 教頭
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元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長
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明石市立鳥羽小学校 教諭
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