2023.08.05
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保護者から見た学校 ―熱中症の対応について思うこと―(前編)

我が家には中学生の子どもがいます。数年前から「これ今の保護者の立場としてどう思いますか?」と行事の計画や配布プリントについて,職場で意見を求められることが増えました。私の考えていることが保護者にとっても学校にとっても,役に立つことがあるのかもと思うようになりました。保護者から見た学校について,また一教員として前向きにあくまで前向きに!考えてみたいと思います。 この連載は私の個人的な意見であることと合わせて,今までの勤務校や教職員の方たちへの批判,我が子の通う学校や担任への苦情では決してないことをご理解いただけると幸いです。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

熱中症警戒アラートって何?

「熱中症警戒アラート」は、熱中症の危険性が極めて高くなると予測された際に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、 熱中症予防行動を促すための情報です。環境省と気象庁から発せられ、令和3年4月から運用が始まりました。全国を58の地域に分け、暑さ指数(WBGT)の予測値を使って、発表しています。
「今日は(または明日は)、熱中症にかかる危険性が極めて高いので、いつも以上に積極的に、熱中症予防に努めましょう」という情報です。

令和3年7月には文科省からも「学校における熱中症対策ガイドライン作成の手引き」の作成が出され、各学校では熱中症対応のマニュアル等が作成されているはずです。

しかし、熱中症警戒アラートが発出されているにもかかわらず、子どもたちは普通に登校しているし、体育の授業や学校行事の練習、中学校に至っては部活動が行われていることがあります。そして、中止する・変更するなどの判断が実際には各担任・もしくは教科担任に任されています…中には、組織ぐるみでマニュアルが遂行され、管理職の判断がきちんと守られている学校もあるのかもしれませんが、私の住むご近所の校区ではあまりありません。それこそ「熱中症警戒アラートって何?」状態です。

熱中症の事故が相次ぐ現実…

2018年7月に豊田市で児童が亡くなった悲しい事件から、愛知県ではエアコンの設置が急ピッチで進みました。その時に指摘された教員の知識不足については、その後研修を行い、WBGT計(熱中症指標計)を設置するなどして対策を進めていたと記憶しています。学校の危機管理マニュアルがなかったことも指摘されていました。それでも、毎年のように熱中症の症状で搬送される事例が後を絶ちません…

先日も部活帰りの中学生が亡くなるニュースがありました。本当に胸が苦しくなります。なんとかしてそういった事故をなくしたい。みんなの意識を変えたいと思います。熱中症の関する記事などはいたるところに散見されますので、自分なりの一保護者・一教員の視点で考えてみたいと思います。

地方の中学校の部活の現状…

我が子も中学生ですが、夏休みも部活へ行きます。熱中症アラートが出ていても行きます。先日、名古屋市に住んでいる知人と話したら、「アラートが出ている日の部活は、基本すべて中止だよ」と言っていました。なんと…ありがたい。親としては、不安で仕方ありません。毎日、帰ってくるまで心配です。部活がある日は自分が休暇を取るか、夫に在宅にしてもらうかしています。

我が子とは「体調が少しでも変だと思ったら、先生に言って休む」「気温が高くなってきたら、帰る」など約束していますが、早く帰ってきたことはありませんし、顧問の先生に言ったこともありません。子どもに言わせると、もう少しやれるのではないか(実際彼はインフルエンザの日も変だなと思いつつ筋肉痛と勘違いして学校へ行っている…そして早退)、レギュラーから外されるのではないか、先輩たちもやってるのにさぼっていると思われるのではないか、などと思うと言えないようです。

私は時には学校へ行って様子を見ています。顧問の先生にとっては嫌な保護者かもしれませんが、凍らせたスポーツドリンクや冷感グッズを持っていっています。帰ってきても、体調に変化がないか、しつこく聞いてしまいます。うっとうしい母親です。部活って命かけてまでやることなの?
顧問の先生に確認したところ、WBGTが31を超えたら活動は中止する、テントを張って日陰を作る、こまめに休憩をとるなどして対応する、子どもの命を守る判断をすると返答をいただきました。先日WBGT計を持って部活の現場に行き、測ったら値が33ありましたが、活動をやめる気配はありませんでした。…不安になりました。どこかで改善できるようにしたいです。何か方法はあるはずです。

子どもたちの意識をアップデートしよう

まず、当事者である子どもたちの意識をアップデートする必要があります。保護者は「自分の調子が悪かったら言ってもいいんだよ。休んでいいんだよ」ということを家庭で何度も伝えてほしいと思います。もちろん、教員も共通理解して毎日のように伝えていく。学校ではさらに「自分が元気で余力がある時なら、友達の体調を気にしてほしい」ということも伝えていく。そして、「体調が悪いというのは、さぼっているわけじゃない」ということも理解させる。

もちろん、伝えるだけではだめです。行動できるようにしていかないといけません。ですので、やはり学習や日頃の活動などでも、自分を大切にしたり、友達の様子を気にかけたりできるような体験を積むことは有効です。私が推進している共同学習も然り。みんなで問題を解決していく、自分で考えて協力して行動していくという姿勢は緊急時(災害時)にも発揮されるのではないでしょうか…

また、子どもたちが考えていることを話しやすいように、教師は日頃から気軽に話せる雰囲気を作り、子どもたちの体調に気を遣いたいものです。

後編は「教師の意識をアップデートする」ことについて書きたいと思います。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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