2020.08.18
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運動遊びとトップアスリートの運動理論(その2)

サーキットトレーニングも子ども向けの遊びに!

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

幼児とトップアスリート

みなさんもご存知のサーキットトレーニングですが、トップアスリートもその効果に注目し取り組んでいる人も多いです。そのようなトレーニングも、行い方によっては幼児向けにすることができます。それがサーキット遊びです。ここ数年でサーキット遊びが徐々に行われるようになってきていますが、幼児向けに行うにはどのような点に注意したらいいでしょうか。

サーキットトレーニング

まず本家本元のサーキットトレーニングですが、休憩することなく次々と筋力トレーンングをしていくことで、筋力増強だけでなく筋持久力や心肺持久力にも効果のあるトレーニングです。次の種目に行く際には同じ筋肉に負荷をかけず、異なる筋肉に負荷をかけるように取り組んでいきます。簡単な一例をあげると、腕立て伏せ(腕の筋肉)→腹筋→スクワット→背筋というように、上半身の筋肉→お腹の筋肉→下半身の筋肉→背中の筋肉というように別の部位にアプローチしながら取り組みます

サーキット遊び

それでは幼児期はどのようなことを考えてサーキット遊びに展開していくといいでしょうか?幼児期はスキャモンの発育曲線からわかるように神経がもっとも発達する時期です。5歳にして20歳の90%にまで達します。そして小学校高学年くらいから中学生にかけては持久力が伸び、高校生くらいになると筋力が発達する時期となります。そのため、幼児期は筋肉ではなく様々な神経にアプローチするような活動を取り入れてサーキット遊びを考えていくといいです。

大きな悪い例として二つあげてみます。一つ目は、筋肉に着目したような活動です。例えば、逆上がりをできるようにしたいとします。筋力視点で腕の力を強くしたい、腹筋を強くしたい、蹴る力を強くしたいという視点で考えてしまうと幼児向きではない方向にいってしまいます。神経視点で考え、逆さになった姿勢の時に、ぶら下がる感覚、お腹を曲げる感覚、脚で地面を蹴る感覚を発達させたいと考えると幼児向きの良い活動となります。

二つ目は似たような活動を続けることです。例えば両脚ジャンプした後に、ケンケンし、その後にうさぎ跳びをするといったようなサーキットです。同じような動作を繰り返しているため、様々なという視点からみると幼児向きではありません。脚を使ったり、腕を使ったり、バランスを取ったり、登ったり、くぐったりといったように様々な動作を行うようにしていくといいでしょう。

サーキット遊び実践

これらを踏まえて一例として次のようなサーキット遊びをあげておきます。

①ボール入れ→②繩跳び→③フープ渡り→④平均台でぶらさがり→⑤跳び箱のぼり→⑥じゃんけんダッシュ→最初に戻る

①はボールをボールカゴに投げ入れ、物を扱う感覚を養う。
②は保育者1のポーズをマネしてからジャンケンし、勝ったら普通のダッシュ、負けたら脚の間をくぐるようにし、反応して動く感覚を養う。
※保育者1は①のボールにも視野を入れておく
③はフープを渡り、空間を把握する感覚を養う。
④は平均台にぶら下がって移動し、逆さの感覚を養う。
⑤は跳び箱をよじ登ることで、身体のいろいろな部分を同時に扱う感覚を養う。
⑥は保育者2が動かす「へび縄」をよけながら通り抜け、とっさに対応する感覚を養う
※保育者2は⑤の跳び箱も視野に入れておく
(大学生で行った実践の写真を掲載しておきます)

これをそのまま行うのでもいいですが、ごっこ遊びのような模倣遊びの要素も加えて行うと発達段階的にもいいです。そのため「目指せニンニン大忍者!」のようにして行うのもいいです。(例 ①はボールを手裏剣に見立てる。②は忍者ポーズをする。③床のマークを蓮の葉に見立てる。④は木の枝に見立てる。⑤は城壁に見立てる。⑥は敵の攻撃をかわす。など)

サーキット遊びとコーディネーショントレーニング

このサーキット遊びは、動き的に様々な要素を取り入れていますが、実のところドイツでトップアスリートのために考案されたコーディネーショントレーニングの要素を取り入れたサーキット遊びにしています。コーディネーショントレーニングについては次回ご紹介しようと思います。

「部活動や競技スポーツ」と「社会体育やコミュニティスポーツ」

最近、部活動や競技スポーツの強化についてあまり推奨されないような空気感が漂っています。そして社会体育、コミュニティスポーツへと変換して行こうとしています。コミュニティスポーツの推進に関してはとても賛成です。皆がスポーツに取り組める環境は、心身の健康にもつながり、とても大事なものだと考えます。しかし私は部活動や競技スポーツの強化も同じくらい大事だと考えています。今回のように強化されることによって得られた最先端の理論や実践が、方法を変えてコミュニティスポーツのように一般化されていくからです。どちらか片方という考え方ではなく、両方を伸ばしていくことが大切です。部活動や競技スポーツの根を絶やさずに、コミュニティスポーツを発展させていく流れになってほしいと思っています。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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