2023.09.26
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初任の先生に伝えたいーベテラン教師がやっている算数の授業が上手くなる3つのことー

まだまだ暑さが続いていますが、2学期は「勉強の秋」と言われるように、子どもの学習を大切にしたい時期です。
そのために、ベテラン教師がやっている、算数の授業が上手くなる3つのことを伝えます。
今からでも遅くはありません。
少しずつやっていきましょう。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児

問題は先生の板書とともに書き終わる

図1 問題文

算数の授業で図1のような問題文を子どもに書かせるときに、早く書き終った子となかなか書き終わらない子がいますね。そのため、早く書き終った子は手持ち無沙汰になってしまい、ザワザワと話し始めてしまう結果につながることに…。これを防ぐために良い方法があります。次のように子どもに伝えます。

「先生と一緒に書き終わりましょう。」

そして、次のように進めていきます。

  • 「色紙が」とゆっくり言いながら、黒板に書いていく
  • 一番書くのが遅い子に合わせて板書するのがコツ
  • 先生が「なりますか。」と書き終えるころには、全員の子どもたちが問題文を書き終えている
  • 問題文は赤鉛筆で四角囲みすると見栄えがよくなる
  • 四角囲みするときは、ものさしを使って囲むようにすると、とても整った板書に見える(板書のコツ)

発表をするときはお天気キャスターになる

子どもが発表するときは、できるだけ前に出てきて発表するようにします。子どもが説明するとき、発表する子どもの顔や体がどちらを向いているのかに注目してみてください。よく見てみると、黒板の方に向かって説明をしていませんか?
そんな時は次のように言ってみましょう。

「お天気キャスターのつもりでお話ししてみよう」

ニュースのお天気コーナーでは、天気図を使って、お天気キャスターが今日の天気の様子を説明します。どのように説明しているかというと、顔と体を視聴者に向けていることがわかります。授業で発表する時も同じです。顔と体を座って聞いている友達の方に向けて説明するのです。

「今までに学習したことのうち、どんなことが使えるかな?」と問いかける

図2 5年「異分母分数のたし算」

算数の問題解決的な学習でとても大切なことは、「前に学習したことを使う」ということです。要するに、今ある武器を駆使して戦うということです。皆さんはドラクエやFFをしたことはありますか?いわゆるRPG(ロールプレイングゲーム)です。私は、RPGのゲームには次のような特徴があると思っています。

  • キャラクターを操作して、試練を乗り越えながら目標の達成を目指すゲーム
  • ゲームの進行とともに、敵も強くなっていく
  • 敵に対抗するために、強い武器や防具を買ったり、宝箱を開けて見つけたりなどしていく
  • ゲームだから、使う武器や防具によっては、敵に大きなダメージを与えたり、全く歯が立たなかったりする
  • どの武器を使うと敵との相性がいいのか、悪いのかを考えることにゲームの面白さがある
  • ゲームのスタート時に、どんな敵にも対抗できる最強の武器や防具を持っていると、簡単に敵を倒してしまい、全く面白くない。

これは算数も同じです。今ある武器で問題に挑むのです。例えば、図2です。これは、5年生の異分母分数のたし算です。異分母分数とは、簡単にいうと、分母が異なる分数のことです。4年生までは、同分母分数(分母が同じ分数)の計算をしていました。ですから、4年生までの分数の計算では、図2の問題は太刀打ちできないことになります。

子どもは、「分母が同じだったら計算できるのになぁ」とつぶやきます。これは大事なつぶやきです。このつぶやきが聞こえたら、次のように子どもに問いかけてみましょう。

「今までに学習したことのうち、どんなことが使えるかな?」

図3 通分

ここで使える方法が「通分」です。図3を見てみましょう。通分して分母を同じにしています。こうすることで、4年生で学んだ同分母分数の計算の仕方で解決することができます。

使える武器は持っているけど、どの武器をどのタイミングで使ったらいいのか、使い所がわからないのです。ですから、「今までに学習したことのうち、どんなことが使えるかな?」と問いかけるのです。すると、子どもたちは、今持っている武器を探して、どの武器が使えるのかを考えるのです。

今回のお話はいかがでしたか? 
この内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っています。また、授業に関する内容は、『子供がなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)もぜひ参考にしてみてください。

神保 勇児(じんぼ ゆうじ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭


2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/

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