捉え方が違っても、相手の立場で考える環境を!
先日、学び合い授業スキルアップ研究会で「叱る」をテーマに話をしました。そのお話の中では、次の2点が話題になりました。
- 子どものちょっとした言葉遣いや捉え方の違いがトラブルになること
- 先生が子どもを叱るときに先生や子どもの捉え方の違いが生じていること
では、捉え方の違いが必ずしもトラブルになるのでしょうか?今回は、捉え方の違いに目をつけて、相手の考えを知ることの良さについて考えていきたいと思います。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
答えが同じでも考え方が同じであるとは限らない
例えば、算数の授業で考えていきましょう。次の図を見てください。
この図は、以前ある5年生の教科書に載っていた問題です。
図を見て、●の個数を求める式を考えます。
まず、ご自身でどんな式になるか考えてみましょう。
私は5×4-4=16と考えました。私がどのように考えたかわかるでしょうか?
次の図を見てください。私は、5が4つあると考えました。ですから、赤い線で5つ囲っています。囲った部分が4つありますね。ですから、式は5×4です。すると、赤い線が重なっている●が4つあります。それで、あとに4個分引きました。式は、5×4-4になります。だから、式が5×4-4=16になったというわけです。私と同じ考えの方はいたでしょうか?
この式はかなりオーソドックスな考え方なので、同じ考えの方は多いと思います。では、Aさんが式を3×4+4=16と考えました。どのように赤い線で囲んだでしょう?少し考えてみてください。
この式では、次の図のような囲み方が考えられます。式が同じでも、囲み方が同じとは限らないのです。この授業は式を読むことを大切にしています。式を見て、どんな方法で●の個数を求めているのかを考えるのです。また、赤い線で囲まれている部分を見て、式を考えます。同じ式でも囲み方が違っていたり、同じ囲み方でも式が違っていたりする面白さがあります。
ただ、ここまで読んでくださった方はわかると思いますが、3×4+4=16という式だけでは、相手がどういう風に求めているかわかりませんね。この授業では、●の並んでいる様子から、5×4-4=16と見えたり、3×4+4=16見えたりと、子どもたちの捉え方は違います。ですから、相手の立場になって考える必要があるのです。
しかし、生活場面での子どものたちのトラブルはどうでしょうか?●の個数を求めるようにはうまくはいきませんね。相手の立場で考えることが難しいからです。なぜなら、子どものトラブルには、「僕は腹が立った」「私は悲しかった」など、その子の激しい感情が介在しているからです。もし、その激しい感情が落ち着いたらどうでしょう?きっと、●の個数を求めるように相手の立場で物事を考えることができるのではないでしょうか?
先日、学び合い授業スキルアップ研究会では、「叱る」をテーマにトラブルを起こした子どもへの対応の仕方について考えました。今後も取り扱っていく予定ですので、もしご興味のある方はぜひご参加ください。
また、授業に関する内容は、『子どもがなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)もぜひ参考にしてみてください。
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神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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