2023.06.27
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当たり前を疑え~道徳の〇〇~

「当たり前」を信じ切ってしまうと,他を考えることを放棄してしまいます。
「なぜそうなっているのか?」その考えの先に,新しい発見があるかもしれません。
一緒に考えませんか?

岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大

『きみのふた、どんなの?』

みなさんのクラスに内向的な子はいませんか?
おとなしくて,あまり自分から話をしようとしない子です。ちゃんと課題にも取り組むし,聞かれたことには答えることができるので,そこまで心配はされていないのかもしれません。
でももしかしたら,その子にも,ちゃんと伝えたいことがあるのかもしれません。
そんなことを考える出来事がありました。

先日,私が書いた絵本が出版されました。(少し宣伝させてください)
『きみのふた、どんなの?』という作品です。
きみのふた、どんなの? | 古市 剛大, MIKI 
手に取って読んでいただけると嬉しいです。

ありがたいことに,学校で保護者の方に会うと「先生,絵本出されたんですね。すごいですね」と声をかけていただくことがあったのです。
その立ち話中,本当は絵本について熱く語りたい,こんな作品なんですと伝えたいという思いがあったのですが,結局「そうなんですよ,ははは」で終わってしまったんです。
照れくささなのか何なのか,その保護者の方と別れた後に,あんなことも話したかったのに…と,ちょっとした後悔がおそってきました。
もう少し会話のラリーがあったら,もう少し質問されていたら,なんて考えると,
クラスにいるあの子も同じことを考えているのかもしれない,そんなことを考えながら放課後の職員室へと帰っていきました。

道徳の当たり前

まだ教員経験が浅かった頃,道徳にはたくさんの「当たり前」があったように思います。(もしかしたら,その地域だけだったのかもしれませんが)
・教材の良さが失われてしまうので,教材を分けてはいけません
・導入で道徳的価値(例えば「親切って…」)を直接問いかけてはいけません
・最後は,教師の説話で終わります
・「自分だったら」は,子ども自身が考えることだから,教師からは聞かない

みなさんも,一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
当時の私も「そういうものなのだなあ」ぐらいにしか考えていませんでした。でも,今では本当に多様な指導法やアイデアが実践され,教師一人一人が工夫された授業を展開しています。
しかし,ある部分に関しては,まだまだ「当たり前」が残っているなと感じることもあります。

板書の「当たり前」

よく校内や他校の先生方の授業を参観しに行くのですが,道徳に関しては圧倒的に「縦書き&時系列板書」が多いのです。(もしかしたら,参観するタイミングでそうなのかもしれませんが)
もちろん,それがダメはわけではないです。教材や授業展開によっては適している場合もあります。
「教材研究した結果,この板書でいこうと決めました」という場合もあるでしょう。それも素晴らしいです。
ただ,もしかしたら道徳って「縦書き&時系列板書」が当たり前で,そこを疑うことなく(他の選択肢を考えずに)授業を行っている方もおられるのではないでしょうか。

何のための板書?

「先生は,何のために板書をしていますか?」と聞かれたら何と答えますか?
答えは一つではないですが,私なら「子供が1時間の学びを振り返る際の手掛かりにするため」と答えます。
そのためにも,板書を見て,今日はどんなめあてをもって考え,友達はどんなことを考えていて,それに対して自分はどう思ったのか,が見て分かるようなものにするべきですよね。
言い換えると,それが分かりやすい板書であれば,どんな板書でもいいわけです。
大事なのは、教師がその選択肢をもっていることです。
知らないことには,使いようがありませんもんね。
ここからは,私のおすすめの板書を紹介します。

矢印型

登場人物の成長を表す際に使いやすいです。
はじめの道徳的な問題をもっている場面を取り上げた後に,「どうして変われたのか?」と問い,矢印の部分を話し合うようにしています。
そして子供の発言を矢印の周りに板書していくことで,変容のきっかけや登場人物の心情の変化を捉えやすくしています。

くもの巣型

様々な要因が関わっている際におすすめです。
「どうして主人公はこんな行動をしたのだろうか?」と問う際に,一つの価値だけではなく,複数の価値が子供の発言から出てくることがあると思います。
そういう時には教師が分類して板書すると,振り返りで「自分の考えは〇〇に近かったなあ」と子供が考えやすいはずです。

吹き出し型

これは二項対立のような教材におすすめです。
有名教材「絵葉書と切手」の「料金不足を伝える・伝えない」のような場合に,吹き出しに子供の発言を書き込んでいくと,それぞれの選択肢のメリット・デメリットが一目で分かりやすくなります。
さらに「自分だったら?」を問えば,第3の選択肢とその理由も比較しながら考えられるはずです。

もちろん,まだまだ他にもたくさんあるはずです。
我々教師の板書の引き出しを増やして,
子どもたちのよりよく生きようとする力を更に引き出していきましょう。
御後が宜しいようで。

(添付の図は筆者作成)

古市 剛大(ふるいち たけひろ)

岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭


「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。

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