道徳科における個別最適な学び
「令和の日本型学校教育」を目指すうえで重要となるもののひとつ,「個別最適な学び」。
授業の中で,どのように位置づけていけばよいのでしょうか?
キーワードは【決める】【選ぶ】ではないでしょうか?
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭 古市 剛大
ここ数年のマイブームがランニングです。
兵庫県のフルマラソンや,地元岡山県のトレイルランに参加しました。今年は,24時間で100㎞歩くという企画にも参加しました。健康維持のために家の周りを走ることから始めたのですが,やればやるほど体力がつくので,結構楽しんでいます。
仕事が休みの日には走るようにしているのですが,先日ランニング用のズボンを見ると糸がほつれたり破れたところがあったり。これでは格好悪いので新しいものを購入しようと思ったのですが,ネットショッピングは本当に便利ですねえ。店舗に行かなくてもすぐに買うことができ,2~3日で自宅に届く。さっそく注文し後日,自宅に届いたのを履いてみるとまさか,サイズが小さく,きつきつでした。一瞬レディースかと思ってしまいました。
実際に手に取ったり試着したりすることも大事だなと感じた出来事です。
話を聞いたり本を読んだりして得る知識も大事ですけど,実際に自分でやってみたり子どもたちの反応を確かめたりするも大事だということにちょっと似ていますよね。(ちなみに,もったいないので履いています)
全ての子どもたちの可能性を引き出す
「令和の日本型学校教育の構築を目指して」には,このような言葉が書かれています。
もともと子どもたちがもっている「学ぶ力」を引き出すためには,従来の一斉学習だけでは限界があるとされています。
一斉学習だけでなく,子どもたち自身が学ぶ内容や学び方を選択する(学習の個性化や指導の個別化)場を授業者が意識してつくることが大切です。
では,道徳科の授業ではどこに個別最適な学びを取り入れることができるのでしょうか。
授業のめあてはだれのもの?
授業の導入で,めあてを提示する先生は多いのではないでしょうか。この1時間の授業で考えてほしいことを端的な文章で表したものです。
ここで一度考え直したいのは,そのめあては目の前にいる子ども全員が考えたい内容なのかということです。私自身もこれまでめあてを提示するとき,「今日はこのめあてを考えましょう」と言って提示することがほとんどでした。教師主導ですよね。もちろん,子どもたちと一緒にめあてを考える時もあります。
先生「今日考えたいめあては何ですか?」
A 「どうしたら正直にできるのか?です」
B 「ぼくは,うそはどうしてついてしまうのか?がいいです」
C 「正直になるためにどんな気持ちがいるの?がいいです」
先生「なるほど。では,3つ意見が出たので,みんなどれがいいか手を挙げてね」
これって,一見子どもたちが決めているように感じますよね。
この後,全員が同じ意見で手を挙げるのなら問題はないと思います。
しかし,クラスの中に,自分が手を挙げためあてにならなかったと感じる子どもはいないのでしょうか?
誰一人取り残さない,全ての子どもたちの可能性を引き出すことを大事にするのであれば,これでは不十分だと私は考えます。
子どもにめあてを任せる
ではどうすればよいのか?
A,B,C,それぞれが考えためあてをそれぞれが追究できるようにしてあげるのです。
授業の最後に,自分のめあてに対して自分が納得できる答えをつくるように伝えましょう。
自分が追究したいことがめあてになっていれば,きっと自ら追究したり,友達とどんな考えになったか話し合ったりしたくなるはずです。
中には,すぐに思いつかなかったり悩んだりする子どももいると思います。
そんなときは
「友達のめあてでいいなあ,自分も知りたいなあと思ったら同じめあてでもいいよ」
と言えばいいのです。
子どもがめあてを【決める】【選ぶ】場をつくってあげましょう。
「子どもが自由にめあてを決めたら,誰がなにを追究しているのかが分からないじゃないか?」
そうならないために端末があります。共有ソフトを使って,そこに個人のめあてを打ち込めるようにします。そうすれば,リアルタイムで友達のめあてが見られますし,授業者も全員のめあてが一度に確認できます。
「AとCの子のめあてはほぼ同じだ。こういうのはまとめてしまえばいいんだ!」
確かに同じようなめあてはまとめておくと子どもも授業者も把握しやすいですよね。しかし,せっかく自分でつくっためあてです。他の子とまとめられることを不快に感じる子どももいるかもしれません。「これじゃあ自分のめあてじゃない」と口には出さなくても心の中で思っているかもしれません。(実は若い頃,指導案検討でベテランの先生方がせっかくアドバイスをくださったのに「こんなに直したら僕の指導案ではなくなります」と言ったことがあります。恥ずかしい記憶です)
共有ソフト上でこちらが色付けするなどして,授業者が把握しやすくするのはいいと思いますが,子どものめあての文言までそろえる必要なないのかなと思っています。
「めあて」を個別最適にするというアイデアでした。

古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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