先日,土曜日に参観日があり,振替休業日で月曜日がお休みでした。滅多にない平日のお休み,一人で朝から映画館へ。平日ということもあり,お客さんも少なくすぐにチケットを買って座席で待つことに。
私は大人になってからあの幸せ感を味わったのですが,どうして映画館で食べるポップコーンはあんなに美味しいのでしょうか。レジで受け取った時には量が多いなあ,ハーフサイズとかでいいのになあと思うのですが,いざ映画が始まって,クライマックスの頃にはもう手を突っ込んでも何もつかめなくなっているんです。たまに,後ろや横の席の人が勝手に食べているんじゃないかなと思うほどです。
それほど,あの美味しさに夢中になっているのでしょうね。今回の投稿を見てくださる皆様が,そして皆様のクラスの子どもたちが道徳に対して,夢中になってくださると嬉しいです。
一発勝負の授業づくりの大変さ
他の教科と違い,道徳科は1単位時間で授業を完結させることが多いです。(ユニット学習のような単元を組んで取り組む実践もありますが)他の教科では単元のまとまりで授業を行い,学習問題も提示されているので子どもたちは学ぶ方向性を捉えながら学習することができます。
しかし道徳科の場合は,内容項目1つを1時間の授業で扱っていくことが多いので毎時間価値への方向付けを丁寧にしていかなくてはいけません。ここを疎かにしてしまうと,子どもたちはねらいについてしっかりと考えることができなくなるでしょう。そう考え,導入の部分でどのように発問しようか,どんな活動にしようかと頭を悩ませ,どうにか授業案ができたと思ったら,実際に授業では導入だけ盛り上がり後は尻下がりに…
みなさん,経験ないですか?
そんな時には逆から考えてみましょう。
ゴールからつくっていく
結論から言うと,ゴールイメージをはっきりとさせることで授業の流れが見えてくるということです。
導入から授業を考えていくと,次第に「子どもがこう言ってくれたらこのように問い返して」や「この活動を入れたら盛り上がりそうだ」のような授業者の願望や理想が先行してしまったり,気付いたらねらいとする方向からそれて何を学んだかがぼんやりしたまま終わりのチャイムを迎えてしまったりします。(私自身もそうでした)
では,ゴールをつくるとはどういうことか?
授業の最後,子どもたちにこう思ってほしいな,振り返りを書く際にこのようなことについて書いてほしいなと思うことを授業者自身がきちんともっておくということです。私の場合は,それを自分のノートに書いています。このゴールを授業者自身がしっかりもっておくと,授業がブレにくくなります。
ゴールをつくる際にはもちろん教科書の朱書きを参考にするのもいいですが,学習指導要領解説もおすすめです。おすすめ理由としては,低・中・高学年それぞれの発達段階に応じて内容項目の指導の観点に違いがあるのですが,それが見比べられるようになっているところです。
例えば,「A善悪の判断,自律,自由と責任」で見ていましょう。低学年では「よいことと悪いこととの区別をし,よいと思うことを進んで行うこと」と書かれています。中学年では「正しいと判断したことは,自信をもって行うこと」と書かれています。自分で善悪を判断するだけでなく,自信をもってすることの意味や良さにも目を向けさせる必要があります。さらに高学年になると「自由を大切にし,自律的に判断し,責任のある行動をすること」と書かれているように,自分にとっての自由や他者にとっての自由,判断の基準,責任の意味についても目を向けさせる必要があります。この違いを授業者が捉えておかないと,どの学年で授業をしても同じような振り返りの内容や発言になってしまうのです。
ここまでゴールについて書いてきましたが,「ゴールをつくる=授業者の思いを押し付ける」という意味ではありません。授業がブレないために授業者が意識するということです。
ゴールがきまれば
後は,そこに向かう道筋を考えていくだけです。
ざっくりと説明すると,
① 中心発問を考える
教材とゴールをつなぐならどの場面で問うのか,はたまた登場人物の生き方・考え方を問うのか,もちろん朱書きを使うのもありです。
② 中心発問だけでは子どもが考えづらい時には補助発問や問い返しを
中心発問だけで授業が展開できてゴールへと向かうことができるならそれがいいと思います。しかしそんな切れ味抜群の職人技,私にはできません。子どもたちが比べて考えたり,自分事として捉えたりできるように,必要に応じて発問を付け加えていきます。
これについて書きだすと,ちょっとした本なみの量になってしまうので…
③ 導入やめあてをつくる
普段の子どもたちの様子や他の教育活動など,一番近くで過ごしている担任だからこそ,子どもたちに「?」を生む導入がつくれるはずです。
(文字数の関係上,かなりざっくりとした話になってしまいました)
ゴールを明確にすることで,授業がブレにくくなります。
ゴールを明確にしていると,多少意図することと違う方向に子どもたちが進んでしまっても慌てなくなります。
心に余裕をもって子供の発言をコーディネートすることができるのです。
次の道徳の授業,ゴールを何にしますか?
古市 剛大(ふるいち たけひろ)
岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭
「道徳の教科化」をきっかけに,道徳のおもしろさと難しさを感じながら,研究と実践を重ねてきました。子供の「知りたい」「話したい」を大事にした授業とは?道徳科における個別最適×協働とは?日々の授業から,そして指導教諭だからこそ見える・感じることを綴っていきたいと思います。
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