ちょっとした工夫で保護者との信頼関係を築ける!個人面談で使える私の方法
GWも終わり、学校によっては個人面談や家庭訪問が始まっているところもあると思います。学期初めは、家庭での子どもの様子や前学年の取り組み、アレルギーの確認など、限られた時間で確認することがたくさんありますよね。ちょっとした一工夫で、保護者との信頼関係を築ける方法があります。今回はその方法を紹介します。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
扉を開けた瞬間から子どもの頑張りを伝える
第一印象ってとても大切なことは、皆さんご存知だと思います。ですから、普段スーツを着ない先生もこの日はビシッとした服装で臨んでいるでしょう。私もその一人です。きっと、保護者もどんな先生かを知りたがっています。できれは、わずかな時間でも子どもを大切に思っていることも伝えたい。しかし、服装だけでは、子どもを大事にしている気持ちは保護者には伝わりません。
そんな時は、扉を開けた瞬間から子どもの頑張りを伝えましょう。扉を開けて席に着くまでの間に、以下のようにあいさつと簡単な自己紹介、子どもの頑張りを1つ伝えます。
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「こんにちは。担任の〇〇です。よろしくお願いします。実は、△△さんがいつも授業が終わった後に黒板を消してくれるんです。クラスのことを考えた行動をすることって簡単なことではないのです。でも、毎日続けて取り組んでいてすごいなと思ってます。去年からそうだったんですか?」
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この出だしがとても大切です。「こんにちは。よろしくお願いします」と伝えて、そのまま席に着く場合と比べてみましょう。子どものよさを先に伝えることによって、保護者の緊張も和らぎます。そして、保護者に、子どものよいところを見てくれているんだという安心感を持たせることができます。自己紹介は、席について改めて行えばよいので、先に雰囲気作りをしておくことの方がメリットがあります。
保護者の大変さに共感する
子どもの家での様子や学校での課題点を伝えるときに、保護者は自分の思いを伝えてきます。例えば、次のような感じです。
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「子どもがなかなか言うことを聞かなくて困ってます」
「仕事が忙しくて子どもの話をなかなか聞いてあげれません」
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先生からすれば、「おうちでしっかりみてあげてください。」と思うかもしれません。しかし、1日24時間のうち学校にいるのは8時間、おうちで過ごすのは16時間なわけです。学校で過ごす時間の約2倍の時間、子どもと接しているのです。学校や学級での指導を効果的に行っていくためには、保護者との協力が必要です。ですから、先生が学校や家庭で過ごす時間の感覚を持っていることが大事です。
前置きが長くなってしまいましたが、だからこそ、保護者の大変さに共感することが大切です。共感といっても何か特別なことをする必要はありません。例えば、こんな感じで声をかけます。
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「お仕事でお忙しくても、時間をつくってくれてありがとうございます」
「子どもが言うことを聞いてくれないのは大変ですよね」
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ポイントとしては、時間や手間をかけていることに対して、共感する言葉をかけることです。もしかしたら、お母さんだけ(お父さんだけなど、その保護者だけ)で子どもの問題を一人で抱えているのかもしれません。そういった、保護者の大変さに共感することを通して、保護者の持つ子どもの教育観をとらえることも大切です。
子どもの様子は9:1の割合で伝える
学校での子どもの様子を伝える場面では、最初に前の学年での様子を聞きます。その上で、今子どもが頑張っていることを3つ伝えるようにします。できれば、扉を開けたときに伝えた内容とは違う内容を伝えます。その後に、課題点を伝えます。伝えたいことが10個あったとすると、課題点はそのうちの1つです。つまり、伝えたい頑張りと課題点の割合は、9:1です。
また、保護者の中には、我が子に課題を感じていて、子どものよさに気付きにくい方もいます。
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「漢字を書くときに『とめ』『はね』『はらい』に気を付けて丁寧に書くことができていますよ」
「床に落ちているゴミをそっと拾ってくれる優しさが素敵ですね」
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上記のように、具体的な場面と褒める観点を伝えるようにしていきます。お話ししていると、保護者によっては「こんなこともよいことなの?」という反応を示す方もいます。1年間をかけて少しずつ伝えていくようにしていきましょう。課題についても、先生がたくさん伝えたい気持ちはよくわかります。もちろん、課題を伝えることは大切です。課題を伝える場合は、1つに厳選して(どうしてもの場合は2つまで)おくとよいでしょう。それに、課題を伝えるタイミングはまだいくらでもありますので、時間をかけて保護者と共有していきましょう。5月の家庭訪問や個人面談では、「今度の先生は、子どものよいところをたくさん見つけてくれるんだ」そういった安心感をつくり、信頼関係をつくっていくことが何よりも大切なことです。
今回のお話はいかがでしたか?この内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っています。授業に関する内容は、『子どもがなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)もぜひ参考にしてみてください。
関連リンク
神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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