2023.02.11
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「弱音が吐ける職員室」を目指して(その1)

研究担当として目指している職員室の姿を簡単に紹介したいと思います。

兵庫県公立小学校 教諭 羽渕 弘毅

はじめに

文部科学省がおこなった令和2年度公立学校教職員の人事行政状況調査(概要)[1]によると教職員の精神疾患による病気休職者数は全教育職員数の0.5%となっています。さらに、兵庫県内では計114人の教員が不足していることがあきらかとなっているのが現状です[2]。(神戸市立を除く県内の公立学校)
原因としては、休職した教員の代わりが見つからない事例が4割を占めています。また、記事によると現場からは「朝7時出勤で休憩はなく夜9時退勤。新任が7日で辞めた」という声も上がっていたようです。

目指す学校文化

研究担当として、若手教員、中堅教員、ベテランの教員の融合を強みとし、さらに高みをめざしたいと考えています。
中堅やベテラン教員が若手教員の力を引き出し、それぞれが磨き合って互いの存在を大切にする学校文化、職員集団を生み出すことはどの学校であっても今後の課題となるはずです。

参考とした先行研究

タイトルにある「弱音が吐ける職員室」とは、諸富(2013)『教師の資質:できる教師とダメ教師は何が違うのか?』から引用しました。教員が抱える悩みの現状をあきらかにしながら「弱音が吐ける職員室」の重要性について、諸富は以下のように説明をしています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
こうした現状の中で求められるのは、「お互いにお互いを支え合う職員室」づくり、「弱音を吐ける職員室」づくりです。
(中略)
「弱音を吐ける職員室」「支え合える職員室」が個々の教師を支えます。学級崩壊のような危機的状況にあっても、その問題をみんなで共有できる学校では、ともに危機を乗り越えていくことを通して、一人ひとりの教師が成長していくことができるのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

教職員一人ひとりが上手に助けをもとめる力をつけることの必要性、「仲間」の存在こそが教員人生の最大の支えとなることが述べられています。研究担当として研究テーマを中心としつつ、校内研修を通して、「弱音を吐ける職員室」づくりをめざしています。

また、魚住(2013)は社会的な体験が不足する中で、大人も子どもも対人スキルの低下が目立ち、他人とうまくつながれない人が増えていることを説明しています。子どもはもちろん、教員にも「つながる技術」が重要であると述べられています。

校内研修のあり方については木原(2010)や石井(2017)を参考にしました。

木原(2010)では普段おこなわれている校内研修には、企画・運営に関わる5つの問題点があると述べています。

  1. 機会が限定的
  2. 個々の教師の問題意識を反映しがたい
  3. 型はめに陥りやすい
  4. 閉鎖性・保守性は強い
  5. 適切なリーダーシップが発揮されない

これらの問題点を解決し、さらに「お互いにお互いを支え合う職員室」、「弱音を吐ける職員室」づくりをめざすために石井(2017)を参考に校内研修を企画・運営を目指しました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
教師の学びは、同年代や先輩教師たちとの間の、タテ・ヨコ・ナナメの重層的な共同関係の下で遂行されていく
(中略)
教師は、さまざまな困難に直面するたびに、自らの教職アイデンティティを問い直すことで成長していく。それは学校や同僚に支えられながら、子どもから学ぶ余裕があってこそ可能になるものである。しかし、昨今の教師をめぐる状況は厳しい。教育に対する要望や期待は高まる一方で、教師や学校に対する信頼は崩れ、教師は一切の「失敗」が許容されず、大胆な取り組みもできにくい状態である。何より、本業以外の事務作業や保護者対応などの増加により、手応えの得られない徒労感や多忙感が、教師を精神的・肉体的に追い詰めている。子どもをめぐる問題が複雑化し、教職の高度化が求められる今だからこそ、教師が教育活動に専念でき、その専門的成長が支えられる環境づくり(条件整備)が急務である。(※太字はすべて筆者による)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

以上の先行研究をもとに、校内研修の企画と運営のポイントを以下のようにしました。

・参加者全員が主役であること
・「弱音を吐ける」関係作りの一助となること
・教員としての専門性を高めること

次回は、このポイントを生かした実際の校内研修の企画や運営、あり方について述べたいと思います。

(次回へ続く…?)

羽渕 弘毅(はぶち こうき)

兵庫県公立小学校 教諭
専門は英語教育学(小学校)、学習評価、ICT活用。 広島大学教育学部を卒業後、高等学校での勤務経験を経て、現職。 これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。 働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科修士課程)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。 自称、教育界きってのオリックスファン。

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