2023.03.06
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

見えてるものを見落として

先日、毎月開催している学び合い授業スキルアップ研究会で「見えてるものを見落として」をテーマに授業スキルについてお話をしました。ここでハッとした人もいるかもしれません。BUMP OF CHICKENの『天体観測』という曲がありますが、そのサビの部分に使われています。

私たちが普段、授業をしているときに、実は視界には入っているのだけど、見落としてしまうことって意外に多いんです。それは、子どもも同じです。問題の中に答えは見えているのだけれど、見落としてしまっていて解決できないのです。今回はその支援の方法についてお伝えします。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児

「見えてるものを見落として」ってどういうこと?

長方形の面積は?

筆者作成

まず、図を見てください。縦の長さが6cmの長方形があります。AとBの面積が等しくなっているとき、この長方形の面積は何c㎡でしょうか。ご自分で解きたいという先生方もいらっしゃると思いますので、答えはリンクを貼っておきますね。(答えはここにあります。授業スキルアップ研究会より★⑥R5.2.13

問題は、シンプルなのですが、一瞬「え?」ってなりますよね。学び合い授業スキルアップ研究会でこの問題を出したとき、参加された先生方もみんな「えっ?」となっていました。2〜3分して、算数な得意な先生が答えに気が付いて教えてくれました。説明してもらって、「なるほど」という先生や「いや、まだわからない」という先生もいました。答えの解き方は実は見えているのです。しかし、パッと見ただけではわかりにくい。そのせいで「この問題が解けない」といったことが起こります。

授業の指導で「見えてるものを見落として」を防ぐために

授業で「見えてるものを見落として」を防ぐためにはいくつか方法があります。ここでは、3つだけお伝えします。

(1)机間指導をする

毎年教育実習生の指導をしていますが、ある年にこんなことがありました。ある実習生が算数の授業後に「先生は授業中よく歩き回りますよね」と言って、座席表に私の歩いたルートを線で描いていました。座席表は赤ペンで描かれた線で真っ赤になっていました。それだけ、子どもの周りを行ったり来たりしていたということです。実習生が言うには、特に、よく動いていたのは、子どもが考えている時の机間指導だったそうです。机間指導では次の3つを行います。

①子どもが問題を把握できているか確認する。
②困っている子がいないか確認する。
③指名計画を考える。

(2)子どものしぐさを見ておく

授業でわかっている子は頷いていたり、わからない子は首を傾げていたりします。そういった、言葉に表れない子どものしぐさを見ておくことも必要です。私は、子どもが黒板で発表するときは、教室のドアの入り口付近にいます。そして、発表する子と聞いている子に目を向けます。割合としては、発表する子が3、聞いている子が7と言った感じです。どうして発表する子が3の割合でいいかというと、机間指導でその子の考えを見取っているからです。ですから、聞いている子の方をじっくりみることができるのです。

(3)子どものノートを見る

子どものノートに自分の考えが書いてあるかを見てみましょう。板書を写しているだけだったら、もしかしたら授業の内容を理解していないのかもしれません。その場合は、どれくらい授業の内容を理解しているか、その子に聞いてみると良いでしょう。

学習感想をみることもおすすめです。学習感想に「楽しかったです」「今日の授業がわかりました」などの具体的な内容が記述されていない学習感想は要注意です。一見、これらは授業を理解しているように思いますが、そうでない場合があるからです。学習感想を書いている時に見つけたら、次のように聞いてみましょう。

「例えば、どういうところが楽しかったの?」
「どんなことがわかったの?」

きちんと授業の内容を理解していれば、本時のまとめにつながるような話をするはずです。

今回の内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っていきます。また、話し合いの進め方などについては『子どもがなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)をぜひ参考にしてみてください。

算数の授業のお悩みごとや困っていることを募集中

教育つれづれ日誌の私のコーナー限定ですが、先生方が日頃ご指導されている算数の授業についてのお悩みごとや困っていることを募集しています。
もし現在(2022年10月~2023年3月)、算数の授業でお悩みや困っていることがありましたら、下記の入力フォームをクリックして、お知らせください。不定期ですが、応募のあった内容を整理して、解決していけるようなコーナーを私の連載の中で作りたいと思っています。無記名のアンケートですので、記入フォームには、ご自身の名前やメールアドレス等の個人情報、その他、学校や地域、他の個人が識別できるような情報は記入しないようにお願いします。
全てのお悩みにお応えすることはできないかもしれませんが、少しでも先生方の力になりたいと思っています。

<算数の授業のお悩みごとや困っていること入力フォーム>   
※学びの場.comの外部サイト(Googleフォーム)にリンクします。

※※アンケートにご記入いただいた内容は、学びの場.com編集部と共有させていただく場合があります。

神保 勇児(じんぼ ゆうじ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭


2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/

同じテーマの執筆者
  • 樋口 万太郎

    京都教育大学付属桃山小学校

  • 酒井 淳平

    立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)

  • 羽渕 弘毅

    兵庫県公立小学校 教諭

  • 松田 翔伍

    名古屋市立御器所小学校 教諭

  • 森 寛暁

    高知大学教育学部附属小学校

  • 丸山 裕也

    信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭

  • 宮澤 大陸

    東京都東大和市立第八小学校

  • 川島 隆

    浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
    前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師

  • 五條 晶

    沖縄県宮古島市立東小学校 教諭

  • 平野 正隆

    東京都品川区立学校

  • 古市 剛大

    岡山県赤磐市立桜が丘小学校 指導教諭

  • 長田 夢

    北海道旭川市立末広北小学校 教諭

  • 山口 小百合

    鹿児島市立小山田小学校 教頭

  • 石川 雄介

    沖縄県那覇市立さつき小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop