2023.02.07
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保育界の就職事情から考える福祉に強い保育者養成の必要性

待機児童が減少し、保育園が定員を満たせない時代が間もなく来ます。園の生き残りをかけて、質の高い保育やオリジナリティのある保育が求められるでしょう。一方で、障がい児施設や児童養護施設といった福祉施設系への就職が増えてきています。それに伴い保育者養成で求められていく内容も変わっていかなくてはなりませんが、それができない現状になりつつあります。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

保育や幼児教育に所属している学生の就職活動の現状と、そこからみえる将来の保育士資格・保育者養成の在り方についてお伝えします。

保育界の就職事情

この時期は就職が決まり、卒業式を迎える時期となります。保育や幼児教育に所属する学生たちも同様に就職活動をし、内定をもらい、資格を取得して卒業していくことになります。保育・幼児教育をはじめ、専門職の就職活動では「専願」がほとんどです。一般職の就職活動では併願が認められており、いくつも内定をもらうことが普通です。しかし、保育や幼児教育のような専門職では、就職活動を一園ずつ進めていくことになるため、いくつも内定をもらうことはありません(ただ公務員保育士等の公務員や一部併願を認めている園の場合はその限りではありません)。
そのため採用試験の結果がはっきりしてから次へと動いていくことになります。もし残念な結果だった場合、求人を探し、園見学に行き、自分に合っているようだったら履歴書を書いて応募し、採用試験を受けていくことになります。この時点で1カ月近くかかります。場合によってはもっとかかります。
履歴書を出した後は、採用試験の日取りを決め、採用試験を行い、その結果を待つこととなります。そのため更に1カ月近くかかります。年内の求人は採用試験日が決まっているところが多いですが、12月ぐらいからは「随時」行うところがほとんどです。そのため1つの園に1~2カ月近くとられてしまうことになります。上手く行かない人ほど長期化してしまう傾向にあるため、少し不憫に思ってしまいます。

そのような中、先日ニュースになりましたが待機児童の数が解消され、保育園の定員が満たせない現象が起きることになりそうです。そうなると保育者も余ってしまうのではという不安が出てきます。専門学校でも短大でも四大でも取得可能な資格であるため、資格を使った就職ができない人があふれてしまうのではないかという懸念です。

汎用性が高い保育士資格

実は保育士資格は保育園だけで有効な資格ではありません。障がい児施設・障がい者施設・児童養護施設・就労支援施設など福祉施設系でも求められる資格となっています。今の日本はこのような福祉施設系の人員がまだまだ足りません。クラスでは障がいを抱えていたり、グレーゾーンといわれる子どもが約2~3人は居たりするようになってきました。より医療や福祉に重きを置いた保育士資格が求められていくでしょう。
そのため保育士資格はまだまだ世の中で求められていきそうです。現に私の勤める旭川大学短期大学部では年々福祉施設系を希望する学生が増えています。昔は1割程度だったと思いますが、現在は4割近くが希望するようになってきました。

このような現状があるため、4月から公立化し旭川市立大学短期大学部になるにあたり、未来を想定して、今後もより一層、福祉施設系に力を入れた保育者養成を行っていきたいと考えています。

保育士資格の将来

保育系の進学を希望する高校生が減少してきており、どの保育者養成校も定員を減らして対応しています。そうなると教員の人数も減らさなくてはいけなくなります。その時にはどうしても福祉施設系を指導できる教員を減らす傾向になりがちです。しかしそれでは今後に求められていく保育者養成とは異なったものとなってしまいます。
公立短大はこの20年間で55校から13校にまで減少し、時代にそぐわない私立短大の公立化かもし20せん。しかし、しっかりと現場と将来を見据え、時代を反映した保育者養成を実践していきたいと思っています。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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