2023.08.02
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舞台に立つ

私の個人的なことになるが、授業というものに対する思いを述べさせていただく。
「今日の授業は楽しみだな」「今日は子どもたちとどんな話ができるかな」
そんな想いで学校に行くことは何日ぐらいあるだろうか。
「毎日そんなことを考えながら学校へ行っています」そんな声を学校現場から届けてほしいと思う。
教員採用試験真っ只中で、学生たちもそして既卒生たちも頑張っている。
幸にも現職を続けられていることのありがたさをもう一度考えられる、そんな内容を伝えたい。
教師は毎日舞台に立ち続けている。

大阪大谷大学 教育学部 教授 今宮 信吾

教師を志す

私は、医者と警察官と教師にはなりたくないと高校2年生までは思っていた。理由は簡単で「怖い人たち」という印象だったからだ。
そんな時に同級生から「面白い本があるから読んでみたら」と勧められたのが灰谷健次郎の『私の出会った子どもたち』であった。文庫本を購入して一気に読んでしまったことを覚えている。「子どもって面白いんやな」という印象と共に「子どもは単なる大人の雛形ではない」ということばの意味を知りたいと思った。
親戚一同教師になっている人はいなくて、商売人の家系に生まれた私には小さい時から「笑顔と愛想で商いを行う」ということが幼いながらに感じていたことであった。高校生の時に理系のコースを志していたが、方向転換をして教師をめざすことにした。進路指導の先生からは「君は就職浪人をしたいのか。学校の先生なんて倍率が高くてなれないよ」、そんなことばもかけられた。それでも教師になろうと決めていた。

夢を掴む

無事に教育大学に入学することができて大学生活を楽しんでいた時に、大学院生(現職教員)から大阪市にある「こども詩の会」というところに誘っていただいた。児童誌雑誌『きりん』の跡を継ぐ会で、私が憧れた灰谷健次郎さんとも繋がりがあるところだった。大学の児童文学の授業ではゲストとして灰谷健次郎さんと今江祥智さんとも出会うことができ、運命的に児童詩教育の道へ進むことができた。
あとは採用試験に合格して無事に先生を目指すことであった。今とは違って、懇切丁寧に面接指導や筆答問題対策も行ってもらった記憶はなく、なんとか自力で勉強し、これもまた無事に兵庫県の教員として採用されることになった。この頃から「自分には教師しかできないな」といううっすらした感覚が芽生えてきていた。教師になって「教師を辞めよう」と思ったことはなく、周りの人に恵まれていたと思う。

働きがいは自分で創る

高校生が考えた未来の学校

働き方改革が求められている。教師の仕事が再評価される良い機会だと思っている。しかし、報道が伝えれば伝えるほど、教師のブラック化が強調され、「大変な仕事だから自分にはできるかな」と思ってしまうのではないだろうか。働きがいは自分で創るものだと思っている。夢も自分で見つけるものだと思っている。楽しみも自分で見つけるものだと思って、いつも行動している。
時間的な忙しさは今でも変わらないが、「結構一生懸命生きているなあ」という実感はある。それは教師という仕事を通じていろんな人生を知ったからだと思う。そしてこれからもいろんな人生を知っていくことだろう。これは灰谷健次郎が『ひとりぼっちの動物園』の前書きで述べていることばである。そんな教師の学校の素晴らしさを伝えてオープンキャンパスで高校生が考える未来の学校を書いてもらった。夢に溢れていることが未来の可能性を感じた。

喜びを共有する

教育学部はいいところです

喜びや楽しみは人と一緒に共有したいと思う。
それができるのが学校であり、それをコーディネートするのが教師である。
AIの時代が近づいてきて、人が人と一緒に何かをするということが少なくなる危惧はある。
今まで以上に積極的に人と出会っていくことがもとになる。そんな出会いを創る場が学校でもある。
先日開かれたオープンキャンパスで私が伝えたことばである。
自分の人生を豊かに楽しく過ごすために教師になりましょう。そしてそのために教育学部へようこそ。

今宮 信吾(いまみや しんご)

大阪大谷大学 教育学部 教授


国公私立の小学校で教員を経験し、現在未来の教師を育てるために教員養成に携わっています。国語教育を核として、学級づくり、道徳教育など校内研究にも携わらせていただいております。ことば学びのできる教師と学校づくりを目指しております。

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