2023.01.18
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不適切保育と経済の停滞

不適切保育がメディアで取り上げられています。保育者養成校にいる立場からお伝えするとともに、日本経済につながる話にも言及したいと思います。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

昨今のニュースで不適切保育について取り上げられています。逆さ吊りにしたり、罵声を浴びせたり、様々なことが表面化してきています。その内容を見ると、2歳の娘を持つ親としては胸が痛むばかりです。
しかし保育者養成校の立場から見ると、また少し見方が変わります。保育者養成校の視点からお伝えします。

保育者養成校の現状

女性の社会進出が進み、また核家族化が進み、保育園に入れない待機児童問題を解消するため、株式会社も参入できるようにして保育園を増やしてきました。また同時に、幼稚園に保育園の機能を持たせた「認定こども園」にするよう推し進めています。この認定こども園に就職するためには、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方が求められます。そのようなことから、保育者養成校では大学・短大・専門学校いずれの種別でも両方の免許を取得できるようにしているところがほとんどです。特に専門学校は保育士資格しか取れないところが多いですが、通信課程を持っている短大と連携し、併修いわゆるダブルスクールという形で幼稚園教諭免許を取得できるようにしています。

保育系を希望する高校生は専門学校という選択肢があるため、確実に入学できるよう進路を早めに決める傾向にあります。志の高い高校生も多いですが、安全策を取る高校生や受験勉強から早く離れたいために進学先を決めてしまう高校生がいるのも事実です。それでも保育を希望する高校生はかなり減少しており、定員を満たせる保育者養成校はほんの僅かでしかありません。

岸田内閣に期待

その様な状況ではありますが、保育者養成校として子どもの命を預けられない学生には資格を出してはいけないと思って指導にあたっています。それは大学・短大であろうが専門学校であろうが同じ想いです。しかし約10年毎に変わっていく保育指針や教育要領(新しい子どもの教育の教科書みたいなもの)に対応できない現場の忙しさがあり、昔のやり方や手っ取り早いやり方が残ってしまっていることも考えられます。そのため実習に行った学生から「こんなことをしていていいの?」という話を聞くこともあります。保育者のやったことは許されることではありませんが、これ以上子どもが犠牲にならないためにも、システムそのものを見直す必要もあると思います。

先日、岸田首相が「異次元の少子化対策」について3月末を目途に発表する方針を打ち出しました。以下の3つについて議論されるそうです。

1.児童手当など経済的支援の強化

2.学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充

3.働き方改革の推進

教員の働き方改革だけでなく、保育者の働き方改革や処遇改善も進めていってほしいと思っています。以前少し紹介しましたが「ペリー就学前プロジェクト」と言うものがあります。幼児教育を良くしたら14歳の時の学力に大きな差が出たり、40歳の時の年収があがったり、持ち家率が上がったりするというものです。就学前教育の投資利回りについても試算されましたが15~17%と言われています。つまり3歳の時に10万円投資するのは20歳の時に100万円投資するのと同じくらいの価値であるとのことです。優秀な人材が幼児教育に携わりたいと思えるような待遇やシステムになっていくと社会を根底から変えることができそうです。「異次元の少子化対策」をするとのことだったため、にわかに期待しています。

最後に

保育の世界では先日の園バス問題に引き続き、いろいろな問題が表面化してきています。対処療法でなく根治療法が求められています。幼児教育をないがしろにしてきた結果が逆のペリー就学前プロジェクト効果となり、現在の経済の停滞感にさいなまれてしまったのではないでしょうか。そんな今だからこそ大胆な行動が必要なのかもしれません。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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