2022.11.14
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

入学者選抜と進路選択

大学入学者選抜をきっかけに、高校生の進路選択について話を進めていきたいと思います。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

11月になると大学・短大受験では学校推薦型選抜がはじまります。こちらの試験では面接試験や小論文を課す学校が多いです。今回はこの面接試験から高校生の進路選択に話を進めていきたいと思います。
この話は私が勤務する短大ということではなく、大学・短大・専門学校を何校か経験してきたり、同じ大学教員の話を聞いたりして感じていることです。データに基づいた話ではないですが、全入時代においてよくあることで、大学側としてもいろいろ工面しています。予めご承知ください。

大学の面接試験の意図

大学や短大で面接試験を行う理由は、学部・学科によっても異なりますが、上手く話ができたかというよりは「人物を見たい」「進路のミスマッチを防ぎたい」ということが主になります。例えば、実習を行ったり、人命を預かったりするような学部・学科は、特に重要視する傾向にあります。そのため学校推薦型選抜では、面接だけの判断ではなく、これまでの高校での様子を判断に取り入れるようにし、「学校長の推薦」や「全体の学習成績の状況(=評定平均)」を求め、また「専願」としているところが多いです。

そのようにして受験を行っていますが、意外なことに学校推薦型選抜で入学した学生が進路変更つまり退学等を希望するケースが多々あります。総合型選抜(=AO入試)よりも指定校推薦の方が多い学校もあるほどです。そのようなケースの理由としては「高校時代の最初の頃は希望していたが終わりごろはそうでもなくなった」「進学してみたら思っていたのと違った」「早く進路を決めたかった」というものです。そのため、1年生の前期をもって辞めてしまったり、なかには4月の前半で早々に辞める決断したりするケースもあります。このような選択は、本人だけでなく保護者も辛いことでしょう。

高校側の想い

推薦というと優れている生徒が受けると印象が強いですが、そうとも限りません。学力のある生徒は一般選抜でより偏差値の高い学校を受け、そうでない生徒が推薦試験を受けることもしばしばあります。もちろん優秀な生徒が受けてくることが多いです。こういう高校は思っているよりも多いでしょう。
こう書くと高校の批判と受け取られかねないのですが、高校に勤めていたこともあるため事情も分かります。実際のところ、学力や学校生活で難のある生徒には、「推薦をもらえるようにがんばれ」と言った方が指導の効果が上がります。そしてがんばったご褒美として推薦を出す意味もありますが、大抵そのような生徒は一般選抜で合格することが厳しい傾向にあるため進路を早く決定させて浪人というリスクをなくすようにしています。本人にとっても保護者にとっても喜ばしいことであります。高校側が苦心し、がんばっている結果でありますが、進路のミスマッチが起きてしまうこともあるのです。

高校生の進路決定

今の高校生たちは、いつ進路について考えたらいいのでしょうか。平日はびっしりと授業や部活動が詰まっており、部活動や補習が終わって帰ってきたら20時を過ぎてしまいます。土日も部活動に追われ、高校では「進路を早く決めるように」と急かされますが、いつどこで何を根拠に進路を決めたらいいのかさえわからないでしょう。

昔の私のことに置き換えると、私は中学時代に「バスケのコーチ」をしたいと思い、それならば「部活動を受け持ちたい」と考え、本道とはそれた動機ですが教員養成を選びました。結局のところ高校や中学校の教員にはならずにバスケコーチの道を進みました。指導や運動理論の研究をし、周りの人たちに恵まれたおかげで、現在は大学教員をさせていただいています(現在は一番やりたいコーチができていないですが…)。たまたまやりたいことが見つかったので、それに向かって進むことができましたが、バスケに出会えなかったら…と考えると、何の職についているか、何をしているか全く考えつきません。
きっと今の高校生はこのような状況で進路を決めています。天職かもわからずに、また本当にやりたいことかもわからずに進路を決めて動いていくことになります。果たしてこれは本人たちのためになるのでしょうか。また日本の将来につながるのでしょうか。

制限される進路選択

また、北海道に来て思ったことは、第一希望の進路を選べない学生がいるということです。本州だと、例えば教職系の道を進みたいならば、いくつかの大学から選択でき、落ちたとしても他校の教職系の大学を選択できます。

しかし地方になると、学校数が少ないため、そうはいきません。もし落ちてしまったら進路を変えることになります。例えば「教員になりたかったが、落ちたので保育に来た」ということが実に多いです。18歳そこそこで就きたい仕事に就けなくなってしまうのです。

最後に

このような立場になり、昔に助けていただいた人たちへの恩返しを、次の世代にしていくべきだと思っています。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

同じテーマの執筆者
  • 江尻 寛正

    倉敷市立連島南小学校 教諭

  • 高橋 英路

    前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
    山形県立米沢東高等学校 教諭

  • 高橋 朋子

    近畿大学 語学教育センター 准教授

  • 川村幸久

    大阪市立堀江小学校 主幹教諭
    (大阪教育大学大学院 教育学研究科 保健体育 修士課程 2年)

  • 赤羽根 和恵

    東京福祉大学 国際交流センター 特任講師

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 藤井 三和子

    兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭

  • 川島 隆

    浜松学院大学 現代コミュニケーション学部 子どもコミュニケーション学科 教授
    前浜松学院大学短期大部 幼児教育科 特任講師

  • 都築 準子

    愛知県公立中学校勤務

  • 山口 小百合

    鹿児島市立小山田小学校 教頭

  • 大村 高弘

    元静岡大学教育学部特任教授兼附属浜松小学校長

  • 友弘 敬之

    明石市立鳥羽小学校 教諭

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop