2016.07.01
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キャンパスデザイン講座をつくる ~目玉授業を設計せよ!~(1)

明光学園中・高等学校 進路指導部長 前川 修一

みなさん、こんにちは。

今回は、本校で独自に開発した学校設定科目「キャンパスデザイン講座」についてご紹介します。
まず、この授業が生まれた経緯からお話します。

1.目玉授業を設計せよ!


2010年の12月、進路指導部長3年目の冬でした。
突然、当時の教務部長がやってきて、こう言いました。
「来年4月に始まる、新しいコースの目玉授業を設計して欲しい。」

みなさんなら、この問いにどう答えますか?

来年の4月!
あと3か月あまりで新入生が入ってくる、間に合うのか?

私の勤務する明光学園中・高等学校は、旧産炭地である福岡県大牟田市に位置し、
人口減少と少子高齢化のモデルのような場所にある小さな学校です。
「女子校!カトリック!普通科だけ!」という、
今の時代には、どちらかと言えばマイナスに振れる条件下で、生徒数の減少に悩まされてきました。

従来の特進コースでは国立大学医学部をはじめ、それなりの進学実績を出してはいました。
しかし、成績中・下位層が占める文理コース(のち進学コース)は、同じ大学進学指導を主としながらも、
地域の中堅大学にさえ合格できない生徒が大半を占める状況が続いていました。
普通科のみの学校にとって、経営的にはここで生徒数を確保すべきところ、厳しい状況にあったといえます。

そこで、2009年に着任した新校長を中心に大幅なコース改編に着手し、
それまでの中高一貫の特進コースをソフィアコース(※ソフィアはギリシャ語で叡智の意味である)としてまとめ、
ほかに高校から入学できる選抜英語、総合進学、総合音楽、総合美術の普通科5コース体制として、
順次改編・新設することにしたのです。

このときの課題は、成績中・下位層の受け入れ先である、総合進学コースの特色をどう作るかということでした。

当時の検討会議は、
英語コースや芸術系のコースはもとより、
難関大への合格という明確な目標のあるソフィアコースに対しては、細かなカリキュラムをつくりました。

総合進学コースについては、特色を出すために、看護科など職業科への転換や単位制の導入などのさまざまな案が浮上しました。
しかし財政上の問題もあり、普通科の枠内での改編にとどまった結果、結論を得ず、
いわば私にお鉢が回ってきたのです。

まずは、時間との勝負だなと思いました。
かなりのスリルです。

2.高大・高専連携に注目する

まず考えたのは、多様な成績層の生徒たちが入学しても、高校3年間でさまざまな体験ができ、かつ確実に進路を決めていけるキャリア教育に主眼を置いた授業を設計することです。

そのためには、大学・短大や専門学校など、上級学校との連携による体験型のキャリア教育授業がよいと判断しました。

高大・高専連携に注目した理由は、いわゆる「出前授業」がさかんであり、受け入れの素地が整っていること。
これを利用することで、経費が安くすむ可能性があること、の2点です。
計画段階で注意したのは、あくまで高校側が主体的に設計し、任せきりにしないことです。

「キャリア」の文字を入れなかったのは、当時の私としては職業教育のイメージが強かったからです。
インターンシップも検討したのですが、当該地域の経済は冷え込んでおり、
企業側が受け入れたとしても、お客さん扱いで終わってしまう可能性が高いと判断して断念しました。

あくまで普通科進学校の枠組みで、上級学校への進学を前提とすることから
「次のキャンパスをデザインする」という意味で、この名前にしました。

まず、講座の目標について、以下のように定めました。

日本の将来を担える若者を、長期的な視野で大切に育てていくには、不幸にして未だ垣根のある高校と上級学校(大学・短大・専門学校)間の連携が必要である。明光学園では、大学などの最先端の学問・技術などを高校生に紹介することで、身近なものに興味を抱かせ、高校で勉強することの意味づけをはかる。また、学習対象、あるいは学問そのものへの興味を引き出すため、そのきっかけづくりを行い、あわせて上級学校にスムーズに移行するための基礎的能力の養成をはかりたい。

指導上の留意点としては、まず上級学校側に

1)高校生が楽しみながら理解できる内容、
2)普段の授業がいかに大切かを実感できる内容、
3)将来を展望できる情報、を提供していただき、
4)現状高校生の気質や習熟度、反応を知ってもらうことで、上級学校側の授業充実に役立ててもらう

としました。

また、高校側としても、

1)講座の目的説明と十分な打ち合わせ、
2)高校生の習熟度や普段の授業態度の情報提供、
3)高校教員側の積極参加、
4)事後アンケートの実施と上級学校側へのフィードバック、

を課すこととしました。

これらは、連携事業はあくまで双方向であるべきであり、両方の教育活動にとって有益であるべきとの信念に基づいての立案でした。

おおまかな骨子はできました。
しかし、具体的な案をつくるまでには課題がありました。

次回は、周辺部に位置する学校が、いかにして都市部の上級学校と連携を進めたか。
その葛藤に触れてみたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

参考資料
  • 松尾龍美「地方私学と教育改革 明光学園中学高等学校のとりくみ」(『私学経営』484. 2015.6)

前川 修一(まえかわ しゅういち)

明光学園中・高等学校 進路指導部長
インタラクティブな学びの場がどうしたら実現できるか、有効かを、日本史・中学公民のAL授業や進路指導を通じ考えています。平成28年度日本私学教育研究所委託研究員。

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