2022.08.25
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夏休みの変化と学校における働き方改革


「夏休み」の変化から見え隠れする学校における働き方改革について述べていきます。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに…「夏休み」

「夏休み」と言ったら私たちの時代は8月31日まででした。
しかし最近は1週間ほど短くなり、8月25日前には終わってしまうところもあるようです。
この点だけでもいろいろな課題点を感じているのは私だけでしょうか。

「夏休み」の存在意義2つ

夏休みの存在は次の二つの側面があります。一つ目は「児童・生徒の夏季の暑熱回避のため」、もう一つは「教員の研修のため」です。

一つ目について、最近は温暖化が進み昔よりも暑くなっています。北海道を例に挙げると、昔の北海道では30度越えはほとんどなく冷房なしでも快適に夏を過ごせていたようです。しかし今では連日のように真夏日どころか猛暑日となっており、冷房なしでは暮らしていけなくなっています。全国各地で見ても9月の猛暑日が多くありますが、それでも夏休みを短縮している状況となり矛盾を感じます。

二つ目について、欧米を中心とした加盟国約30か国で構成される国際機関OECD(経済協力開発機構)の調査TALISによると、日本の教員の1週間当たりの職能開発の時間(0.6-0.7時間)は参加国平均(2時間)の約3分の1となってしまっています。2018年度より幼稚園・小学校・中学校と新学習指導要領が実施され、今年の4月からは高校でも実施されており、新しい教育に向けた研修等が必要となるはずなのですが、その絶好の機会である夏休みを短縮するということを選択せざるを得ない状況にあります。

そもそもOECDでは「日本の教員の1週間当たりの仕事時間は参加国中で最も長く人材不足感も大きい」と問題視しています。その仕事時間の長さ(54-56時間)は、OECD参加国平均(38.3時間)の約1.5倍となっています。そのため学校における働き方改革を急ピッチで進めようとしているのに対して、夏休みを短縮させるのは逆行しているように感じます。

カリキュラムの見直しが必要

これらの原因は、カリキュラムの抜本的な見直しに臆病であることだと思っています。そもそも授業時間数を減らさなければ、これらの問題は解決できないはずです。それなのに増やすだけ増やして削減していかないところがこのような状況を招いてしまっています。
外国語・道徳・ICTを取り入れ増やしていくことはとても大切で、時代にもあっていると思います。しかし、それに伴い何かを削減していかなくては教育現場の負担は増えるばかりです。

こんな先生が多いです…

度々、教員が仕事を家に持ち帰った際に、個人情報の入ったUSBを紛失したというニュースを聞きます。失くしてしまう教員は確かに悪いのですが、家でも行わなければならない仕事量を抱えている背景があることを思い、気の毒に感じます。

また部活動指導員をしていた時に、よく顧問の先生が「今日はお休みの日で…」と言って学校に来て仕事していました。それを本当に休みと言っていいのでしょうか。

最後に

多分以前行っていた「ゆとり教育」を経験した際の弊害から、削減することへの懸念があるのかと思います。また部活動が地域移行したら、今のままの授業時間数でも行えると思っているのかもしれません。
しかしOECDで調査した

「仕事時間の合計(54-56時間) - 課外活動時間(7時間) = 49時間」

を計算しても、参加国平均の仕事時間(38.3時間)に遠く及びませんので、他のところにもメスを入れなければと早く気付く必要があります。
日本の学校における働き方改革はまだまだこれからのようです。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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