2022.04.01
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大学スポーツ(部活動)の今後の動向と中学高校の教育や部活動の在り方

大学スポーツ(部活動)界で大きな変革がありました。今後、組織立って文武両道が求められていくことが推測されます。そしてその影響は中学高校にも間違いなく影響していきます。今のうちからスポーツだけをがんばっている子どもへの関わり方を考えていってほしいと思います。

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

31期も執筆をさせていただけることになりました。皆様及び関係者の方々のおかげです。ありがとうございます。今期も大学・短大の視点から教育等についてお伝えしていく所存です。

今回は大学スポーツ(部活動)の新しい動きと、それに伴い中学・高校に求められる教育や部活動の在り方についてお伝えします。

大学スポーツ協会UNIVAS(ユニバス)の新設

2019年に、大学スポーツ(部活動)で大きな変化がありました。それは文部科学省及びスポーツ庁が主導して大学スポーツ協会「UNIVAS」が設立されたことです。中学校では中体連(中学校体育連盟)、高校では高体連(高等学校体育連盟)が存在していますが、これまでの大学スポーツ界には、そのようなものがありませんでした。各競技で「学連」が存在するのみで、それぞれの競技でそれぞれの運営方針で行われていました。そのためか2018年に各競技で指導者-選手間で大きな問題が次々と勃発してしまっていました。このUNIVASはそのような問題についても真摯に取り組むように、大学横断的かつ競技横断的統括組織となっています。

また世界一のスポーツ大国アメリカでいうNCAA(全米大学体育協会)の日本版と謳ってもいます。NCAAではいくつのかの取り組みがなされていますが、そのうちの一つに「スポーツと学業の両立」があげられます。つまり学業を疎かにしてスポーツだけ取り組んでいても試合に出場することができないシステムとなっています。UNIVASが日本版NCAAと言い切っていることからも、日本でも将来的にそれに似た制度が設立され、施行されていくことになると推測できます。

大学だけでなく中学・高校にも影響がある

このことは大学スポーツ界で大きな変革となるでしょう。スポーツ特待で大学に進学した選手は、これまでは競技成績で次年度以降のスポーツ特待を獲得していましたが、単位が取れていなと試合に出場することができないため、勉強についてもしっかりと取り組む必要があります。また、もう少し発展して考えると、中学高校にも影響してくるでしょう。

これまでは学力が困難な高校生についてはスポーツをがんばることで大学への道が拓けていましたが、今後は最低限の学力が伴っていないと大学側は見向きもしなくなるということです。

別の観点からでは、体育コースがあるような高校では、部活で成績を上げるために、座学の授業を最小限にして部活動の時間を長くするなどの取り組みをしたり、部活動を体育として取り扱ったりすることもあるようですが、そのようなカリキュラムや仕組みを今のうちから見直しておく必要があるということです。

また高校進学時にも影響する可能性が出てくるため、中学生の時からも文武両道の姿勢をつけるような教育を施していかないとその子どもの人生は先行きが見えなくなってしまうということです。

最後に

これまでの日本では「スポーツをがんばっているなら勉強はできなくても仕方ない」というような風潮がありましたが、近い将来そうではなくなります。スポーツができる子どもこそ、将来につながるように勉強を促していくべき時代が間違いなく来ます。今のうちから、先生方はその子どもの将来の選択肢が広がるよう、そのような態度で子どもたちの教育に携わっていただけたらと思っています。

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赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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