2022.03.01
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高学年ブロックで教科担任制を実施した一年を振り返って

学級担任がほとんどの教科の学習を教える学級担任制を基本としてきた小学校で教科担任制を実施する動きが加速しています。本校ではこれまでに一部の教科で実施してきましたが、今年度は5学年と6学年の教員が連携する形で高学年ブロックによる教科担任制を実施しました。
全国的な教科担任制の本格導入を前に、未実施の学校の参考になればと思い、本校で一年間取り組んできた感想をお伝えしていきます。

浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹

時間割編成まで

教科担任制を導入した背景について、いくつかの目的があったことは以前の記事で紹介しました。教材研究の時間を確保するという学習指導の面や複数の教員で多面的に児童を見るという生徒指導の面の目的などです。

小学校高学年ともなると学習内容が高度化し、教材準備の時間が求められるようになります。それぞれの先生方には、指導が得意な教科や指導してみたいという教科があります。そこで、カンコーマナボネクト株式会社によるAIを用いた時間割編成ソフト「コマわり君」で時間割を作成しました。

学習指導への効果

教科を絞って教材研究に取り組めるため、重点的にかつ効率的に授業準備を行うことができました。同じ教科の学習を複数回実施できることで、教師の教材研究に対する熱量も変わります。教科書には載っていないような知識を伝えてみようと考えたり、クラスの実態に合わせて指導方法を変えたりするなどの工夫につながりました。

同じ授業を何度も行うことができるということは、教材研究の時間を何分の一にもすることができるわけですから、働き方改革にもつながると感じました。本校の教員アンケートでも、授業準備の効率化のほか、同じ授業を複数回実施することによる授業の改善と、教材研究が充実できるといった授業の質の向上につながる効果を感じたという肯定的な回答が多かったです。

本校児童に対して行ったアンケートでも、9割以上の児童が教科担任制による学習によって学習内容の理解につながっていると答えていました。教材研究をじっくりと行うことで、児童の学習意欲の向上や学習内容の定着に結びついているのだなと感じました。

チームで生徒指導を行う意識の向上

多くの先生方が児童に関わるので多面的な児童理解が進みました。同性の先生、ベテランの先生、お兄さんのような先生など、それぞれの先生方の目線から児童を包み込んで見守ることができました。教師も人間ですからどうしても児童との相性があります。

例えば高学年の女子児童は体の変化が著しい時期になりますが、女性の先生だからこそ相談できるような話もあります。男性の担任とだけ関わるような場合にはこうした多様な児童の悩みに対応することが難しくなります。担任の視線だけでは気が付かないようなきめ細やかな個別に最適化された生徒指導を行うことができました。

私たち教員同士もお互いの学級の児童に関するコミュニケーションが増えて「学年担任」の意識が高まり、学年で組織的に問題を解決していこうという気持ちが高まりました。

学級担任が休んだときにこそ力を発揮した教科担任制

オミクロン株が流行する中、学校では学級閉鎖や休校が相次いでいます。また、教職員も新型コロナウイルスに罹患することも増えてきました。仮に学級担任が新型コロナウイルスに罹患した場合、一週間以上、場合によっては更に長い間担任が不在となってしまいます。

これまでは、学級の児童のことに関しては、基本的に学級担任しか把握していないことが多かったのですが、前述のように他クラスの他の学級の児童の悩みや学習状況もある程度学年の教職員で把握しています。児童の悩みや生徒指導にもチームで対応することができます。

また、一週間ごとなどに掃除や給食指導の学級を入れ替えるなどの対応も平時から行っており、万が一の場合には、他クラスの先生が朝や帰りの会の支援、給食指導などもスムーズに行うことができました。いつでも柔軟な対応ができる教科担任制の価値を改めて感じました。

終わりに

今回は一年間実施してきた高学年ブロックによる教科担任制の実践についてのメリットを中心にお話ししました。もちろんメリットばかりではなく課題もありました。次回は見つかった課題とその改善策についてお伝えします。

齋藤 大樹(さいとう ひろき)

浦安市立美浜北小学校 教諭


一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。

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