6年生を送る会などの行事を動画編集でより良いものに(1)
年明けからオミクロン株の流行が拡大しています。休校や学級閉鎖なども増えていく中で、思うように教育活動を行えないことも多くなっています。こういった情勢の中で、いわゆる「送る会」シーズンに突入していきます。多くの学校が6年生を送る会などの行事を動画視聴によって行おうとしています。コロナ禍こそ求められる動画編集のスキルについて、2回に分けてまとめます。
浦安市立美浜北小学校 教諭 齋藤 大樹
敷居が低くなった動画編集
この記事をご覧になっている方の多くが何らかの形で動画編集を経験されていることでしょう。スマートフォンなどで撮った動画を、TikTokなどのSNSアプリを使って簡単にショートムービーを作ることができます。また、iPhoneにプリインストールされているiMovieなどを使えば基本的な動画編集の機能のほとんどが使えます。
私は10年以上前まで、市の委託を受け有志たちと視聴覚教材を作成していました。夏休みになると市内の工場や博物館に大きなカメラを持って撮影に行ったものです。当時はノートパソコンに動画を転送するのにも時間がかかるので、撮影現場で撮れ高を確認することも難しかったですが、現在は撮った動画をすぐにノートパソコンで編集したり、そのまま指先1つでスマートフォンやタブレットを使って編集することができます。
当時、先輩教師の方々から教えて頂いた編集ソフトが、Adobe社のPremiereです。多くのYouTuberやプロの編集者が愛用している定番中の定番ソフトですが、ある程度使い方を習熟する必要がありますし、マシンパワーも必要とされるものでした。今では、ソフトというよりもCreative Cloudという月額サービスの提供となっています。
このように10年前は動画編集というとパソコンで行うもので、なんとなく敷居が高いものという印象でした。それが今では、子どもでも簡単に編集できる時代となり、子どもたちのなりたい職業にYouTuberがランクインしたり、有名TikTokerが子どもたちのアイドルになったりするようになりました。
子どもたちによる動画編集
新型コロナウイルスが流行する前、6年生を送る会は一大イベントでした。体育館や講堂などに全校児童が集まって、各学年ごとに出し物を行うスタイルが定番だったと思います。全校児童が一つの場所に集まることがなかなか難しくなった現在、動画で出し物を紹介し合う形で「送る会」を行っている学校が多いのではないでしょうか。成績処理も忙しくなるこの時期、動画編集に多くの時間を取られてしまうのは本当に大変だと思います。
昨年度、私は思い切って動画編集を子どもたちに任せてみました。小学校生活の思い出や在校生へのメッセージをGIGA端末で自ら撮影、編集をさせました。幼少期からYouTubeなどの動画投稿サイトを見て育った「Z世代」と呼ばれる今の子どもたち、動画に求められるポイントが何なのかは肌感覚で理解しています。あっという間に優れた動画をクリエイトする子どもたちの姿を見て、正直驚きました。後ほど紹介するテロップやCGなどを適切に用いたり、ジョークを交えたりするなど、今の子どもたちの動画編集の技術には驚かされるばかりでした。
はじめは、私自身の編集時間を削ることが目的でしたが、子どもたちが意欲的に工夫を凝らす姿を見て、これまでは教師主導の押し付けだったのではないだろうかと自問自答することが多かったです。
動画編集ソフトの選択について
現在、GIGA端末はGoogle Chrome OS、iPad OS、Windows OSがシェアを分け合っている三国志のような群雄割拠の状況になっています。私は自分自身の勉強も兼ねて、職場ではWindows、自宅ではiOSとiPad、外出時はChromebook OSとそれぞれ分けて活用していますが、それぞれのOSではプリインストールされている動画編集ソフトが異なります。
Adobe製のPremiereやDaVinci Resolveなど、数多くの動画編集ソフトがありますが、自治体によってはアプリやソフトのインストールに許認可申請が必要となるでしょう。更に有料のソフトやサブスクリプションタイプのソフトも多く、インストールの手間もかかることから、手間のかからないプリインストールソフト(最初からインストールされているソフト)で済ませたいところです。Windows OSには、フォトアプリに「ビデオエディター」という機能があります。スタートメニューのビデオエディターもしくはフォトをクリックすると起動します。iPad OSの場合には☆のマークである「iMovie」アプリで動画編集ができます。
なお、Chromebook OSはそもそもクラウドでの利用を想定しているため、端末によってはプリインストールされている動画編集ソフトがインストールされていない端末も多いです。ウェブ上での動画編集サービスやAndroid用の動画編集アプリなどを使わせると良いと思います。
タイトルや字幕などの基本的な編集技術を使ってみよう
動画投稿サイトの動画の多くがテロップと呼ばれる字幕を使っています。これまでの送る会などの行事では、話者が体育館などで直接話している声を聞くことができましたが、動画というスタイルで行う場合、話者が何を言っているのか不明瞭なことも多くなります。
テロップをつけると何を話しているのかが分かりやすく、視覚的に文章で読むことができます。話している言葉の下にテロップをつけていくので編集が面倒な部分がありますが、子どもたちは慣れてくるとサクサクと作業していきます。
送る会の進行自体はZoomやTeamsで行い、出し物の発表を事前に編集した動画ファイルの共有する学校が多いと思います。スクリーンを長時間見続けると、体育館で行っている場合と比べて集中力を削がれます。長時間字幕がない動画を見ていると見ている子たちが集中できない部分があるでしょう。せめてタイトルやポイントとなる言葉だけでも字幕をつけると、見ている子どもたちの負担軽減につながると思います。
著作権について学ぶ機会に
BGMやイラストなどを使いたがる児童も多いと思います。著作権フリーのサイトから音源やイラストを使うことは大前提ですが、「フリー」の定義もサイトによって異なります。著作者の名前を載せることを条件にしていたり、素材の改変を禁じていたりする場合があるので、教師側で確認した上で児童に著作権フリーの素材サイトを紹介したほうが良いと思います。引用などの著作権のルールを伝える良い機会としてほしいと感じています。
終わりに
今回は動画編集ソフトの選択と児童に行わせたい簡単な動画編集の技術について紹介しました。知っている方も多い内容だったと思いますが、今一度まとめさせて頂きました。次回は、教師が動画編集をする際の工夫について紹介します。
齋藤 大樹(さいとう ひろき)
浦安市立美浜北小学校 教諭
一人一台PC時代に対応するべくプログラミング教育を進めており、市内向けのプログラミング教育推進委員を務めていました。
現在は小規模校において単学級の担任をしており、小規模校だからこそできる実践を積み重ねています。
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