はじめに
保育者養成校における施設実習に関する学生の実際をお伝えします。
保育者養成校における施設実習の実際
保育者養成校に通って保育士資格を得るためには、合計3回の実習に行くことになります。1回ずつ行われる保育所実習と施設実習、そしてもう一つのどちらかを選択する選択実習です。そのため、保育士資格を取得するということは施設実習に行くことが必須条件となります。
しかし、中にはこの施設実習を理解できない学生も一定数います。特に地方では近くに実習先がないことも多く、泊まりがけで実習に行くこともあります。そうなると益々理解を得るのが難しくなります(最終的には渋々行くことになりますが……)。
そのような実習生の言い分としては「施設実習が嫌」ということではなく、「障がい児・者が怖い」と思っているということです。実習先に「怖いから本当にやりたくない」と言ってしまう実習生もいました。事前に施設で働く卒業生を呼び、話をしてもらってもそのような状況です。
その恐怖を抱く理由を探ってみると「嫌な体験があったから」ではなく「よく知らないから」。つまりこれまでに関わることがなかったからです。
その証拠にかなり多くの実習生が施設実習から帰ってくると「楽しかった」「施設への就職を考えたい」「かわいかった」と言います。前述した「怖いからやりたくない」と実習先に言い放った実習生でさえ「就職してもいいかも」と言っていました。実際に施設実習で感化されて就職をする学生もいます。
「恐怖」という負の気持ちを抱いて実習に行ったにもかかわらず、このような気持ちにしていただいた施設職員の方々にどんな魔法かけていただいたのか驚くと共に、感謝の気持ちでいっぱいになります。
ボランティアの大切さ
しかし、毎回それでは申し訳ないので、少しでも心のハードルを下げるために、ゼミで事前に障がい児・者のボランティアに参加することにしました。
そのボランティアはスペシャルオリンピックス日本という障がい児・者の陸上競技会の運営スタッフです。やはり最初は不安だったようですが、ボランティア活動だったためそこまで毛嫌いすることなく入ることができました。
そしてしばらくすると直ぐに友達の様に競技者と話しており、駆け寄ったり駆けて来たりして、とても微笑ましく有意義な時間となったようです。そして実際のところ、この代のゼミ生は施設実習に恐れることなく入ることができたようです。
最後に
現在の教育システムでは、障がい児・者は区別されています。そのためこのような感情を抱きがちです。
インテグレーション保育(統合教育)やインクルーシブ保育といったものも徐々に普及されてきては来てはいるものの、まだまだ少数であります。「もっと早く進むといいのに……」と思っています。小中学校や高校にいる頃から交流があれば、このような感情を抱かずに済むはずです。教育システムとして制度化してほしいとも思いますが、まずは交流活動が行われてほしいと思います。
このような隔たりを少しでも改善するためにも、また支援をしたいと思う人材をより多く社会に排出できるようにするためにも、学生や生徒の施設ボランティアが大事なことでしょう。
私のゼミでは年3~4回は障がい児・者のボランティアに参加させていただくようになりました。そのような機会をいただき感謝しています。

赤堀 達也(あかほり たつや)
旭川大学短期大学部 准教授・元パーソナルストレッチトレーナー・バスケットボールコーチ
幼児体育指導、小学校のスポーツ少年団指導、中学校の部活動指導、高校の体育指導、大学の体育指導及び部活動指導と、全年代の子どものスポーツ及び体育指導の経験を生かし、子どもの運動能力の向上を図る研究を行う。
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