2021.09.15
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「学びを止めるな」って言うけれど......

コロナ禍・再度の休校が取りざたされる中で登場した、「学びを止めるな」という合言葉。
胡散臭いなーと思うのは私だけ?

東京都内公立学校教諭  カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)  特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事 林 真未

学びを止めるな

学校を継続することが、学びを止めないために必要不可欠である、という意見に異を唱える人はいません。
休校、または始業延期すべきという意見の人も、学校が「学び」を支えているという前提は認めた上で、「学びより命が大事」と主張しています。
でも、ほんとうに、学校が止まると、学びも止まるのでしょうか。

学校は27%

そもそも、子どもが学校にいる時間は、睡眠時間を除く子どもの年間生活時間の約27%(部活等を除く)。
睡眠時間も計算にいれたら、子どもが学校にいるのは年間365×24時間のうち、なんと、約16%です。
放課後、週末、夏休み、冬休み、春休みなど、もともと、子どもは、学校外で過ごす時間のほうがずっとずっと多いのです。
学校がストップすることで学びが止まるというのなら、コロナがあろうとなかろうと、毎年、約73%の子ども時間は、学びが止まっていたということ?

学校が提供するのは「学び」? それとも…

義務教育である小・中学校が提供しているのは、「学校教育」です。大人たちが、子どもにこれだけは身につけてほしいと考えて用意したプログラム。昔は「躾」と呼ばれて家庭教育の範疇だったものも、ずいぶん学校が担っているしなあ。

そして、制度的には、学びたい希望者だけが行くはずの高校、大学でも、用意されたプログラムを受動的に学んでいる人が多いように思います。中には、自分を殺してひたすら「受験勉強」をしている人も多いのではないでしょうか。

「学び」ってこういうもの

本来、「学び」は、どこにいてもだれであっても、意思さえあれば成立する、生涯続く自由な営みです。

学校に行っているか行ってないかで制約されるものではないはずです。
「学びを止めるな」なんて耳触りのいい表現で、学校が「学び」を司っているイメージが世間を覆ってしまったことは、私には「学び」の矮小化に見えます。
「学び」という言葉を、そういうふうに使ってほしくない。
「学び」という言葉やそれが持つイメージは、私にとって、いつも命の隣にあるようなもの。
だから、学校が通常通りに営まれないと「学び」が止まると恐れ、オンライン授業が提供されることが至上命題のように語られることに、背中がざわつくような居心地の悪さを感じます。
コロナ禍とはいえ、図書館も博物館も美術館も開館しているし、スマートフォンやパソコンを使えば、自宅にいるだけで学ぶことも可能です。
学校がなくたって、教科書を読むことはできます。
たとえオンラインでも、人と出会い語り合うことで得るものはあるし、「休校だから、なにもしないができるんだ」で書いたように、なにもしないで、頭の中で自分なりの考えを巡らすことさえ「学び」です。

息を吸うように、どこでも、人は学び続けることができるはずです。

学びは止まらない

子どもたちの「学びたい」というほとばしる激情に応え、学ぶ喜びをたっぷり味わわせる。
それこそが学校。
現実の学校を見れば、それは実現不可能な理想と嗤われながら、そう想い続けている私です。
けれど、そう想うのと同時に、「学び」は、学校だけに幽閉されてしまうような小さなものではないし、子どもは、たとえ学校がなくても、あらゆるものから学ぶ力を持っているとも思っています。
だから「学びを止めるな」なんて余計なお世話。
休校になっても、本人に学びたいという意思さえあれば「学び」が止まることはありません。止まりっこないのです。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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