2021.03.12
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

動き始める生徒たち

以前「学校から飛び出そう!」というテーマで記事を書きました。「学校の活動として」でなく、学校と関係なく学びの成果が広がっていくことが大事だという内容でした。

学習指導要領の改訂により、「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」となることが先行実施され、勤務校でも様々な創意工夫ある活動が行われています。そんな中で、こちらが準備したもの、想定したものを超えて、自分たちだけで動き始めた活動もありました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

最初は……

「総合的な探究の時間」に、テーマを決めて課題解決を目指すために活動しよう!となったとき、初めて取り組む生徒たちの姿はどんな様子でしょう?それまでに経験があって、どんどん積極的に進める生徒もいるかもしれません。が、多くは、やりたいことのアイディアや関心はあるけれど、どう行動したら良いか分からなくて悩んでいるといった印象を受けます。

特に、高校に入ると、それまで以上に自分たちが自由にできることが増えます。ところが、それをやった経験がないわけなので、自分たちでやって良いものなのか?ここまでは先生がやってくれるのかな?といったラインが見えずに苦労している様子もありました。

例えば、活動の一環で外部機関に連絡を取るとなったとき、先生が連絡してくれるのか?(というより、自分たちで直接連絡してはいけないと思っている場合もあります)、電話番号は教えてもらえるのか?といった具合でしょうか。校内での活動で言えば、全校生にアンケートをとりたいといったとき、先生が教頭や学年主任など関係の先生に許可を取ってくれるのか?パソコンやプロジェクターなどの機材を借りたいとき、先生が借りておいてくれるのか?といったことです。

今挙げた例は、高校生であればすべて自分たちでできる内容ですが、はじめのうちはこういったことにも躊躇してしまうケースもあります。

もちろん、それが悪いということではなく、少しずつ経験したり、他の生徒や先輩がやっているのを見たりして、自分たちでできるように成長していきます。ただ、やろうとしないと判断してすべてを教員がやってしまうと、逆に成長の機会を奪うことになり、せっかく1年間探究活動をやったはずなのに、次年度以降まったく発展しないということになってしまいます。

いろんなことができるように

前段のような状態からのスタートであっても、活動を通していろんなことを学んでいきます。例えば、外部機関の電話番号は自分で調べられるし自分でかけられるという経験をすれば、次からは何も言わなくても自分たちで連絡できるようになります。何か企画するときに口頭で言ってもイメージがわかないことが分かると、次からはパソコンで企画書を作って持ってくるようになります。

もちろん、すべてがうまくいくわけではありません。電話で失礼な言い方をして相手に不快な思いをさせてしまったり、企画したイベントの集客の読みが甘く全然集まらなかったり、ワークショップで知り合いの参加者しか話しかけられなかったり、頑張って企画を考えてきたのに途中で実現不可能だと投げ出してしまったり……。それでも、これらは「失敗」でなく、それぞれに「学び」があるんです。行動しなかったら、これらの事態は起こらないけど、それと同時に「学び」もありません。

こうした生徒たちと接していると、教員側の意識も変化します。最初のうちはあれこれ手助けしていたのが、自分たちで動いている生徒たちを見れば、多少の失敗には目をつむって生徒に任せることができるようになります。また、新たな企画・挑戦には慎重であった先生でも、そうした提案が何度もなされて生徒たちの成長を見ると、その心理的なハードルが少しずつ下がっていきます。結果として、やりたいことは失敗しても良いからとりあえずやってみよう!という雰囲気ができ上がり、生徒たちのチャレンジ精神があふれてくるんです。学校の中でこういうことが繰り返されてくれば、それが校外の自分たちだけの生活の中にも生かされてくると思います。

「学校から生徒へ」から「生徒から学校へ」

様々な活動のきっかけを学校(教員)が提示して、それに生徒が取り組むというのはよくあると思います。そこで前述のような経験を積むと、生徒たちは学校に関係なく、放課後や休日に自分たちで活動し始めます。そこで得たこと・気づいたこと・考えたことを、今度は自分たちから学校(教員)に提示してくることもあるわけです。

勤務校であった例をいくつか紹介します。

(1)地域のイベントワークショップの学校開催

地域で毎年行っている祭りの企画会議に参加してきた生徒が、市内各地で行うワークショップを、本校会場でもやりたいと提案してきたことがあります。イベントの企画会議での大人とのやり取りがあり、学校側の大人とのやり取りがあり、それぞれの事情もあるわけで、調整するのは大変ですが、昨年度も今年度も無事に実現することができました。校内向けのチラシや教員に提案するための企画書などは自分たちで作成しており、校内で窓口になった私とイベント実施側の大人同士のやり取りはほぼありませんでした。もちろん、多くの方々の協力のおかげで成立したことは言うまでもありませんが、そうした行動力は素晴らしいものがあります。

(2)オンラインイベントの企画

コロナ禍でリアルのイベント開催が難しいため、オンラインで地域を語るイベントを企画した生徒がいました。こちらはまだ実施に至っていませんが、企画書や自分たちの準備スケジュール、TO DOリスト、チラシなど、一通り必要な書類を整えた上で私のところに相談に来ました。提案すること自体も素晴らしいのですが、実現に向けてすでに様々な準備をした上で、大人の協力が必要な部分だけを相談に来ている点に感心したところです。

(3)ユーチューバーに

面白い地域動画を作りたいという生徒たちがYouTubeを始めました。動画の長さや好みなど、アンケート調査なども行った上で、いろいろ研究しながら作成しているようです。

ちなみにコチラです↓

おたみや - YouTube

この生徒たちは、起業家の方の話を聞く講座に参加した際に「新たな企画をPRするコツは?」と質問し、「1番手軽にできるのはプレスリリース」とアドバイスされていました。その直後、実際にプレスリリース用に作成された文書などを参考に、「プレスリリース資料」を自分たちで作り、「学校からプレスリリースしてもらえませんか?」と相談に来ました。こちらもまだ実現に至っていませんが、こういう行動力って素晴らしいと思いませんか?

こういう成長が見られると、本当の意味で探究学習が成果を上げているのかな~と感じます。これからも、学校の中だけとか、教員から言われた範囲だけとか、そういった枠を超える動きが出てくるのを楽しみにしたいと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

同じテーマの執筆者
  • 前川 修一

    明光学園中・高等学校 進路指導部長

  • 村上 稔

    陸中海岸青少年の家 社会教育主事

  • 中村 祐哉

    広島県公立小学校 教諭

  • 泊 和寿

    石川県金沢市立三谷小学校 教諭

  • 高岡 昌司

    岡山県教育委員会津山教育事務所教職員課 主任

  • 笠原 三義

    戸田市立戸田第二小学校 教諭・日本授業UD学会埼玉支部代表

  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

  • 赤堀 達也

    旭川大学短期大学部 准教授

  • 藤井 三和子

    兵庫県立兵庫工業高等学校 学校心理士 教諭

  • 荒木 奈美

    札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授

  • 笠井 縁

    ユタ日本語補習校 小学部担任 小学部主事

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop