2020.12.28
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学級がうまくいっている先生は何をしているのか?(No.5)

言語活動とはなんでしょうか。それは「話す」「聞く」「書く」「読む」の4つです。これは、学習するための基盤となるためのものであり、すべての学習活動内に取り入れなければなりません。

では、どのように取り入れればよいのでしょうか。今回は言語活動の指導に役立つ小ワザを3つご紹介します。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

「言語活動ってなに?」

みなさん、授業の中で言語活動に力を入れていますか。昨今、言語活動の充実が求められています。
言語活動が大切とはよく聞きますが、そもそも言語活動の定義とはなんでしょうか。私は以下の4つに定めています。

「話す」「聞く」「書く」「読む」

つまり、これらの4技能は子どもの学力形成の基盤となるものであり、すべての教育活動の中で指導していく必要があります。
国語授業でのみ行うものではありません。
では、言語活動はどのように指導すればよいのでしょうか。今回は言語活動の指導に役立つ小ワザを3つご紹介します。

【小ワザ1 語彙力形成板書術】

語彙力とはなんでしょうか。手元の辞書を引いてみるとこのように書いてあります。

「その人が持っている単語の知識と、それを使いこなす能力のこと」  

つまり、言葉を知って、それを使えるようにする必要があるわけです。私たちがまず取り組むことは言葉を教えることです。
多くの言葉に触れさせることが、子どもの知識量を増やしていきます。
では、どのようにすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。


「小ワザ!語彙力形成板書術!」
詳しく解説していきます。
これは植草学園大学発達教育学部教授・野口芳宏氏が考案された語彙力を高めるための指導法です。
一つの単語が出てきたとき、対義語・類義語などを合わせて教えます。
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〇手順(4年生国語科 『プラタナスの木』の場面にて)  
●文章の中で、子どもが未習得と予想される単語を板書します。
 一例として「熱中」という単語を板書します。
●「熱中」という単語の読み方を教えます。
●「熱中」の対義語・類義語を板書します。
(退屈・夢中・没頭・情熱・熱情・熱心・熱狂・熱意)

授業の中で、熟語を教えるときに付随して他の熟語も教えることで、子どもの語彙力を形成していきます。
「ノートに書かなくても良いですよ」と伝えても、子どもは自主的にノートに書くことが多いです。
子どもは新たな知識が増えることに喜びを感じます。

【小ワザ2 具体的記述法】

小学校の教室には、多くの掲示物があります。それは「学期のめあて」であったり、「学習をまとめた新聞」であったりすると思います。それらに共通することは、自分の考えを文章にするという点です。

教室に長期間掲示しておくにもかかわらず、量が膨大であるために教師の指導が抜け落ちることが多いです。
私が初任者の頃、教室に掲示してあった子どもの「学期のめあて」は次のようなものでした。  

「算数をがんばる」

このように高学年としてふさわしくないめあてになっていました。教師はこの子の文章力を向上させるために指導しなければなりません。
では、どのようにすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。

「小ワザ!具体的記述法!」
詳しく解説して いきます。

〇手順(4年生特別活動 学活 1学期のめあてを書く場面にて)
●めあてを書く意義を伝えます。  
●どのような文章がふさわしいか子どもと考えます。
 例:「【算数をがんばる】は4年生としてふさわしいめあてでしょうか」  
●具体的に書くことを伝え、作例を提示します。
 例:【算数の文章問題が苦手なので、自主学習で毎日1ページ練習する】
●できた文章を教師が添削します。

文章を書くことはすべての学習の基盤となります。これは学期のめあてを書くときのみに指導することではありません。日々の教育活動全般において、根気強く指導することが大切です。慣れてくると、子ども同士で具体的に書けているか確認することができます。

【小ワザ3 アクティブ新出漢字】

すべての学年で学習内容に含まれているのが新出漢字の指導です。みなさんはどのように指導していますか。
恐らく、多くの小学校で漢字ドリルを使った指導をしていると思います。

では、漢字ドリルを使ってどのように教えていますか。私が初任者の頃は、教師が空書きをして、教えていました。
でも、ある日思いました。

「これでは、子どもの主体的な活動が少ない」

漢字を教えるという授業展開の性質からそうなってしまうのも仕方ない。とあきらめるのは簡単ですが、力のある先生の学級でもそうなのでしょうか。
違いました。やはりそのような先生方が漢字指導も子どもの主体性を生かされていました。
では、どのようにすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。

「小ワザ!アクティブ新出漢字!」
詳しく解説していきます。

〇手順(4年生国語科 新出漢字の場面にて)
●教師が子どもを指名します。  
●指名された子は、音読み・訓読み・熟語の意味をみんなと確認します。
 【笑】の場合
 「音読みはなんですか」 → 『ショウです』
 「訓読みはなんですか」 → 『わら・うです』
 「分からない熟語はありますか」 → 『失笑はどんな意味ですか』
 「失笑の意味が分かる人はいますか」 → 『笑うのにふさわしくない場面で笑うことです』
●熟語の確認が終わったら、指名された子を中心に全員で空書きをします。
 「手を挙げてください。空書きをします。せーの」
●1つの漢字が終わったら、児童が次の担当者を指名します。これを繰り返します。

このスタイルは教師の指示がなくとも成立します。しかし、ここで大切なことは「教師が確認を怠らない」ことです。
例えば、書き順を間違えている、指名される子が偏っている、などは教育活動としてふさわしくありません。子どもの主体性を生かすことは大切ですが、教師の確認も同様に大切です。

「言葉は人を救う」

私たち人間は、言語活動によって生活しています。言葉は人を傷つけることもあれば、人を救うこともあります。
たった一言が何年も心に残り、その人の人生に影響を与える。それが言葉です。だからこそ私たちは、望ましい言語活動を通して、子どもの言葉を育てるべきです。

みなさんは教師を辞めようと思ったことはありますか。私はあります。それも何度も。
初任者のとき、学級が上手くいきませんでした。学習規律は乱れ、子どもとの人間関係も崩れていました。 何度も何度も辞めようと思いました。

「なぜ、私だけが上手くいかないんだ。教師に向いていないからだ」

ずっとそう思っていました。校長先生に辞表を出す段階までいきました。本当に毎日がつらかったです。
でも、なぜ私は辞めずにここにいると思いますか。
それは、私の初任者指導の先生に救ってもらったからです。その先生は私がどんなに失敗しても、間違ったことをしても、優しく導いてくださいました。そして、毎回の指導後に必ずこう言ってくれました。

「大丈夫。先生の学級経営はうまくいっているよ」

この言葉がなかったら、私は今ごろ違う仕事をしていると思います。先生は私の恩人です。この言葉は今も私の耳に焼き付いています。
先生、あの時は助けていただき、本当にありがとうございました。

というわけで今回は言語活動の指導に役立つ小ワザをご紹介しました。次回は教師の仕事術に関する小ワザを紹介します。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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