2021.03.04
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学級がうまくいっている先生は何をしているのか?(No.8)

教育の目的は「人格の完成を目指す」ことです。そのためには、児童を「向上的変容」させることが必要です。 今回は向上的変容をさせるための小ワザを3つご紹介します。

市原市立八幡小学校教諭 木更津技法研所属 山本 裕貴

「向上的変容」

私たち教師の仕事は、教育を行うことです。これは、みなさん分かっていると思います。
では、なんのためにするのですか。目的はなんでしょうか。このように、行うことの目的や本質、根本について考えることはとても大切です。

教育基本法の第1条に教育の目的が明記してあります。
「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない」

つまり教育の目的は「人格の完成を目指す」ことです。では、どうすればそのようなことができるのでしょうか。私は授業によって児童を「変容」させることが目的を達成する手段だと思います。しかし、その変容は「向上的」なものでなくてはなりません。つまり、児童を「向上的変容」させることが、教育の目的を達成することになると考えます。

というわけで今回は児童を「向上的変容」させるための小ワザを3つご紹介します。

【小ワザ1 叱る三原則】

学級担任をしていると、子どもに対して厳しく指導しなければならない場面があります。そのようなとき、あなたは「怒って」いますか。それとも「叱って」いますか。どちらでしょうか。
そもそも両者の違いはなんでしょうか。手元の辞書を引いてみると、次のように記載されています。

怒る「不満があり、我慢できない気持ちを表す。腹を立てる」
叱る「相手の非を指摘し、説明、注意する」

私たち教師に求められるのは、叱ることなのですね。でも、叱るのは難しいですよね。叱ることで信頼関係が深まることもあれば、崩れてしまうこともあります。

なぜ難しいのか。それは基準がないからです。基準があればそれを元に、教師も叱るタイミングを迷いません。子どもが、叱られた理由が分からないということもありません。

では、どうすれば良いのか。ここで小ワザを使いましょう。小ワザ!叱る三原則!!具体的に説明していきます。
これは、野口芳宏先生(植草学園大学発達教育学部教授)の叱る三原則を私なりにアレンジしたものです。4月の学級開きのときに子どもたちに伝えます。

◯手順

・怒ると叱るの違いを教える
・叱る三原則を伝える
1 危険なことをしたとき
2 友達を傷つけたとき
3 三回注意しても、直そうとしないとき

・なぜ、この3つが大切か子どもたちと話し合う
この3つをしたときに、先生は厳しく指導するということを子どもに理解させることが大切です。教師が明確な基準をもつことで、ぶれない指導をすることができます。

【小ワザ2 自己決定の提示】

私たちはどのように子どもを成長させたいのでしょうか。板書をそのままノートに写す子ども、先生の言うことを聞くだけの子ども。少なくとも私はそのようには成長させたくはありません。

私は自ら考え、課題解決するような子どもを育てていきたいと考えています。
そのように成長させたいなら、願うだけでは育ちません。そのような練習の場を学校生活の中で私たち教師が与えるべきです。

では、どのようにすれば良いのか。ここで小ワザを使いましょう。小ワザ!自己決定の提示!!具体的に説明していきます。
ここでは、子どもが漢字ドリルの提出日を守れなかったときを例に考えてみます。

◯手順

・期限を守れなかった理由を聞く
「習い事があって、終わらせることができませんでした」 

・どれくらい終わっていないか具体的に報告させる
「12ページから18ページの書き写しが終わっていません」 

・どのように終わらせるか計画を立てさせる
「月曜日に12~14ページ、火曜日に……」

・再提出の日付を決めさせる
「3月1日の朝、提出します」

ここでは、厳しく指導する必要はありません。なぜ、終わらせなければならないのかを説明します。そして、いつなら提出ができるのか自己決定させることが大切です。
決定したことは、教師がメモを取って子どもと確認するとより良いです。

【小ワザ3 児童信託】

そろそろ令和2年度も終わろうとしています。4月に始まった学級は、もうすぐ終わります。次の学年への準備が始まる時期です。
この時期、みなさんは子どもとどのように関わっていますか。4月はじめと同じように関わっているでしょうか。

結論から言うと、児童と教師の関わり方は、時期によって変えていくべきです。4月には教師の介入を多くし、丁寧に活動を行います。
しかし、時間の経過に伴い教師の介入を減らし、児童主体の活動を多くすることが求められます。よって、3 月にはほとんど教師の手を離れ、児童の主体的活動で学級生活を送ることが望ましいと私は考えます。

では、どうすれば良いのか。ここで小ワザを使いましょう。小ワザ!児童信託!!具体的に説明していきます。

◯具体例

・図書のとき、教師は先に図書室へ行く
「図書係、時間に間に合うように連れてきてください」

・体育のとき、練習内容をチームリーダーに伝える
「リーダーは、話し合って練習内容を決めてください」

・学級会のとき、学級委員長に任せる
「自分たちで解決できなくなったら、先生に相談してください」

子どもの自主性を高めるには、自主性を高めるための場を与えるしかありません。しかし、得てして教師はそのような場に臆病です。しかし、子どもを信じて、腹を括って任せることが必要だと考えます。

「教師の一言は運命を変える」

あなたはなぜ、教師になったのですか。この連載を読んでくださっている方は、ほとんどが学校の先生だと思います。なぜ、なろうと思ったのですか。どのタイミングで教職を志したのですか。
私が小学校に配属になって、感じたことがあります。それは「なんと熱心で情熱的な先生が多いのだ」ということです。多くの先生は子どもが大好きで、真面目で、熱意があって、勉強熱心です。

となると、1つ疑問があります。そんな先生方はなぜ、教師になったのでしょうか。気になった私は聞いてみ ました。すると、次のような回答がほとんどでした。

・親(または身近な人)が教師で、その姿に憧れた
・子どもが好きで、教えることが好きだから

そのために教職課程のある大学へ進み、夢を叶えたということです。ううむ。かっこいいですね。とても納得のできる理由です。

え。私ですか。私もありますよ。教師を目指したきっかけというものが。あれは、高校三年生の進路が決まったあとのことでした。
私が進学を決めた大学は、第1志望ではありませんでした。そのことを不満に思っていた私は、進路指導の先生に愚痴をこぼしていました。今思うと、本当に恥ずかしいですね。小人とはまさにこのことでしょう。
しかし、そんな私を否定することなく、先生は受け入れてくれました。そして、次のように言いました。

「山本くん、この大学は教員養成で有名だよ。君は教師に向いていそうだな」

この一言で世界の見え方が変わりました。そして即座に答えました。

「先生、僕は教師になります」

たったこれだけなんです。私が教師を目指した理由は。この先生と話していなければ、私は別の職業についていたかもしれません。
先生にとっては、何気ない会話の1つだったかもしれません。でも、私にとっては、生涯忘れることのできない一言になりました。

教師の一言は、これほどまでに変容させる力を持っています。

というわけで、今回は「向上的変容」をさせるための小ワザを紹介しました。今回で連載8回目となりました。次回が最終回となります。

ここまで小ワザを紹介してきましたが、次回はその小ワザを支える「教師としての修養」をテーマにお話したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

市原市立八幡小学校教諭 木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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