2020.08.31
みんなの問いに!Zoom!~個別最適化のために~
最近、「個別最適化」というキーワードをよく耳にします。AIがその子の習熟度に合った問題を判断して提供してくれるということ?個別に立てためあてを追究していくこと?まだまだイメージがあいまいです。今回は、算数の授業における個別最適化を私なりに考えてみました。
名古屋市立御器所小学校 教諭 松田 翔伍
対角線を1本引きます。合同な2つの図形に分けられますか?
微妙に正方形ではない四角形を最初に提示した
実際にこの図形を配付し、対角線を引かせ、はさみで切り取って重ね合わせてみると……見事に重なりません。実は、微妙に正方形ではない図形だったのです。
言葉でまとめると、知識のあいまいさが明確になる
ここで私が、学習のまとめを半ば強引にしていきます。「四角形は、対角線で切っても合同な図形には分けられない」と板書していきました。すると、「え!ちがいます!」と猛反発(このやりとりがとても楽しいのです)。すかさず、「何がちがうの?」と問い掛けました。子どもたちは、「さっきの図形は台形だったのでできなかったけれど、もしも他の四角形、たとえば正方形だったらできると思います」と説明してくれました。
「正方形ならできるの?」と聞くと、うなずく子どもたち。正方形を配付して、対角線で切って重ねたらどうなるか確かめていきました。
「正方形ならできるの?」と聞くと、うなずく子どもたち。正方形を配付して、対角線で切って重ねたらどうなるか確かめていきました。
ボケですか?先生!
正方形を確かめた後、学習のまとめに入ります。「正方形……」と書いた時点で、子どもから出た言葉は、「ボケですか?先生!」(このやりとりも楽しいのです)。そして、「他の図形も確かめないといけません」と、何とも頼もしい言葉を言ってくれました。ここで、今自分が思っていることを付箋に書いてもらいました。そして、それをB4の用紙に貼り付けて分類しました。「長方形を調べたい」「平行四辺形はどうかな?」「台形は?」「正多角形は?」「合同ができる図形の共通点は?」など、みんなの問いが一目で分かります。
みんなの顔が一目で分かるZoomから連想したので、この振り返りの仕方を、「みんなの問いに!Zoom!」と名付けました。これを見て、子どもたちに追究を促しました。この時点で子どもたちのもった問いは、ばらばらです。でも、多くの子が前向きに取り組んでくれた楽しい授業になりました。
みんなの顔が一目で分かるZoomから連想したので、この振り返りの仕方を、「みんなの問いに!Zoom!」と名付けました。これを見て、子どもたちに追究を促しました。この時点で子どもたちのもった問いは、ばらばらです。でも、多くの子が前向きに取り組んでくれた楽しい授業になりました。
問いは見えない
授業をしていると、私たち授業者にとっては見えにくいものがあります。それは、子どもたちの思考や感情です。そして、どんなことに知的好奇心をくすぐられているか?つまり、子どもの問いです。これまで私は、教材の内容や見せ方を工夫することで、多くの子に共通の問い、つまり、「見えない同じ」をつくろうとしてきたのだと思います。それが学習のめあてになります。でも、全員が同じ問いをもつわけではありません。今回のように、ちがう問いをそれぞれがもっているのだということを知ることには、多くのメリットがあります。
「みんなの問いに!Zoom!」を見て、同じ問いをもった子と学習グループが自然と発生します。自分とはちがう問いを見て、「あ!その問い、面白そう!」と学習計画を変更することもできます。
「みんなの問いに!Zoom!」を見て、同じ問いをもった子と学習グループが自然と発生します。自分とはちがう問いを見て、「あ!その問い、面白そう!」と学習計画を変更することもできます。
まとめ
ここまで書いてきて、個別最適化の条件として、その子のもった問いを追究する場を用意することが必要であることに気付きました。いずれは、大人のサポートなしで学び続けていかなければならない目の前の子どもたちに、自主的な学び方を習得させるためにはどうしたらよいのでしょうか。私の問いもまた、発展していきそうです。
松田 翔伍(まつだ しょうご)
名古屋市立御器所小学校 教諭
すべての子が考える楽しさを味わえる算数学習を目指し、面白い問題の開発や指導法、子どもとの関わり方について毎日考えています。「できる」「分かる」だけではない、「楽しい」算数授業について私と一緒に考えてみませんか?未来を生きる子どもたちの笑顔のために。
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