2023.10.04
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

睡眠と運動は子どもの成長に欠かせないもの

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。赤ちゃんの睡眠に関する悩みは少なくありません。赤ちゃんはなかなか寝てくれず、お世話する親も睡眠不足です。そして、大変な思いをして寝かしつけても、すぐに起きてしまいます。今回は「睡眠と運動は子どもの成長に欠かせないもの」をテーマに考えました。

新生児の親はいつでも寝不足?

赤ちゃんは1日16時間くらい眠っています。あまり寝てないように見えて、実際には小刻みに寝たり起きたりしながら十分な睡眠をとっています。親が寝たいときに眠ってくれないだけなのです。
新生児の場合、赤ちゃんが寝ているときにはお母さんは一緒に寝てください。赤ちゃんが寝ている間に、家事をしようとか思わないことです。ご飯も作らないで、テイクアウトでもいいです。とにかく寝られるときは寝ること。赤ちゃんが生まれて1ヶ月~8週間くらいは, 寝る暇がありません。赤ちゃんは夜、寝ないうえに、小刻みにしか寝ません。赤ちゃんが寝ているときには、一緒に寝ることを優先して、家事は赤ちゃんが起きているときにやりましょう。パートナーにも助けてもらって、交代で睡眠をとって、手が空いた人が家事をしたり、ご飯を作ると良いです。これは赤ちゃんが生まれる前に、夫婦で話し合って約束しておいたほうがいいかもしれません。12週間くらいになって、個人差はありますが、赤ちゃんは長く寝る様になります。
赤ちゃんが長く寝てくれたときのありがたさは感動的です。「朝まで寝た!」と本当に嬉しいものです。

そして良い睡眠のために、赤ちゃんと遊ぶことが大事です。楽しく遊んで、ストレスも無く、オムツを替えて、涼しくて快適な状態にあれば自然に寝ます。人間は疲れたら眠りますから、赤ちゃんも同じです。
体力が余っているときは眠れません。私達も一日中、じっとしていたら、夜はなかなか眠れません。食べ過ぎたり、お腹がすいていたり、暑すぎ、寒すぎでも眠れないのは、大人と全く一緒です。
5ヶ月になれば、大半の赤ちゃんは夜通しに寝ます。親が寝不足なのは数ヶ月だけです。
赤ちゃんから幼児に成長していくときに、眠りに入るためのジンクスをつくることも良いでしょう。スポーツ選手が実践するルーティンのようなものです。お風呂に入って、歯を磨いて、本を読む。本を読んだら、布団に入って子守唄を歌うなど、小さなときから流れを作ってしまえば、身体が自然と慣れて寝るようになります。
どうしても眠れないときは、子どもの気持ちを安定させるために、私はホットミルクを飲ませたり、本を読んだり、スキンシップをしたりしました。安心できる人がそばにいると、幸せホルモンが分泌されてホルモンの環境が変わります。気持ちが落ち着けば眠ることができるはずです。
それでも、眠らないこともありますが、「どうしよう。全然寝ない!」と焦らないことです。たまに夜更かしすることは全く問題ありません。子どもはどこかで必ず寝るので大丈夫です。

良い睡眠と脳の発達のためには、適度な運動が大切です

少し成長した子どもたちにとって一番の問題は、スマホやゲーム、動画などの刺激です。色や音に刺激されて、アドレナリンが過剰に分泌されたり、ホルモンがアンバランスになって脳が興奮してしまうのです。私もコンサートが終わった夜は、気分が高揚して一晩中眠れないことがあります。大人でもそうですから、子どもの場合はほんの少しのホルモンで大きな影響があります。寝る前のゲームや怖い映画などは避けたほうがよいでしょう。
現代生活は不自然なことが多いです。私たちは自然に眠れなくなってしまったのです。夜は遅くまで明かりが付いています。テレビも深夜まで番組を放送していて室内に篭りがちです。日が昇ったら起きて、外で活動を行い、日が落ちたら、夕飯食べて寝るという生活ができないのが現状です。だからできるだけ子どもが外で体を動かせる機会を多く作ってあげたいのです。都会に住んでいでも、公園に行ったり、散歩に行ったり、外に出て大気を浴びて、運動することが大切です。

運動が足りない子は、脳の成長が遅いという研究結果もあります。アメリカの小児科医は1日1時間の自由遊び、それもできれば外遊びをすることを提唱しています。運動が足りないと心身に悪い影響を与えます。コーディネーション能力が悪くなると転びやすくなったり、骨折したり、身体の動きが衰えます。体を動かさないと、脳力も低下します。集中力が無くなったり、覚えが悪くなったりして学習に影響します。走ったり、ブランコに乗ったり、かくれんぼしたり、外で思い切って遊ぶ事は子どもの健康に欠かせないものです。外に出られないときは部屋の中でストレッチをしたりダンスを踊ったり、体を動かしましょう。

子どもとのスキンシップは疲れを癒し、幸せに眠るための秘訣

ママの育休が終わり仕事に復帰したときや保育園に入園したタイミングで、眠れなくなってしまう子どももいます。丸一日、一番愛している人に会えていないのだから当然です。ママが帰ってくるのを楽しみに待っていたのだから、ママに会えたら元気になって眠れなくなってしまっているのです。
だから、家に帰ったら、仕事や家事のことは忘れて子どもと10分でも15分でも思い切って遊んでください。散歩したり、歌ったり、踊ったりして一緒に楽しむのです。「仕事で疲れていてできない」と思うかもしれませんが、頭の中のホルモンをコントロールすれば疲れません。不思議なことに仕事から帰ってぐったりと座っているより、子どもとスキンシップをした方が疲れないのです。子どもと遊んで愛情を感じると、セロトニンやエンドルフィンといった幸せホルモンが分泌されます。それらのホルモンの働きによって脳が気持ち良く感じて、ポジティブで元気な気分になります。そして、自律神経が整い、親も子もお互いに深く眠ることができます。

これは人間の生態を考えれば当たり前のことです。多くの人は会社で働いて、人間関係に疲れているのです。これは身体の疲れではなくて、脳の疲れです。だから、好きな人とスキンシップをして一緒に遊ぶことは、脳に栄養を与えてあげることになるのです。深い眠りであれば、5~6時間でも十分な睡眠です。脳が疲れないように、脳のホルモンをコントロールする方法を覚えれば、忙しくても元気で若々しく過ごすことができます。
我が子といっぱい遊んで、お互いに幸せな気分になって、ぐっすり寝て、元気な毎日を過ごしてください。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

ご意見・ご要望・気になることなど、お寄せください!

「アグネスの教育アドバイス」では、取り上げて欲しいテーマ、教育指導や子育てで気になることなど、読者の声を随時募集しております。下記リンクよりご投稿ください。
※いただいたご意見・ご要望は、企画やテーマ選びの参考にさせていただきます。
※個々のお悩みやご相談に学びの場.comや筆者から直接回答をお返しすることはありません。

pagetop