2023.04.05
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勉強が苦手でない子どもを育てるために

私、アグネス・チャンがこれまで学んだ教育学の知識や子育ての経験をもとに、学校や家庭教育の悩みについて考える連載エッセイ。中高生に聞いた勉強の悩みとしては「やる気が起きない」「上手な勉強のやり方が分からない」が多いそうです。今回は「勉強が苦手でない子どもを育てるために」をテーマに考えました。

勉強の基本は文字に対する拒否感を無くすこと

勉強が苦手でない子どもを育てるために、まずは文字が嫌いじゃない子にすることです。本を開くのは怖くないと思える子は、勉強が苦にならないのです。何を学ぶとしても文字が基本ですから、文字を拒否しないように、文字が簡単に読めて、文字が好きな子にするのが大切です。文字が嫌でなければ、学校に行った時に、勉強はさほど難しいと感じないのです。
学校の勉強の仕方は、日頃の読み聞かせで訓練できます。本を読んであげたら、「次は君が読んで」と声に出して読ませる訓練をさせます。そうすると読み間違いがあるかどうかは、チェックできます。その次に本を閉じて「パパはこの物語知らないから、教えてあげて」と頼むのです。誰かに内容を説明するために、子どもは本の内容を理解しないといけない、要約することも必要となります。パパに物語を教えている時に、子どもがどのくらい理解できたのか、大切な部分をはずしてないか何分かります。最初はうまくできない子も、そのうちにうまくなります。繰り返しの訓練で、子どもは上手に本を読めて、理解して、説明できるようになるのです。それが学校で学生に要求する勉強の仕方なので、就学前に子どもがその形に慣れれば、学校での勉強は楽勝に感じます。嫌いにはならないのです。

もう一つ大切なのは「聞く力」です。大人の会話をしている時は、子どもたちを別室にせず、参加させるのが大事です。そして、時々、「君はどう思う?」と聞きます。聞いていないと内容は分からない、意見も出せません。これは常に大人の話に耳を傾け、内容をできるだけを把握して、自分の頭の中で意見を用意して、聞かれた時に話す準備ができている訓練です。このプロセスを繰り返すことで、自然に人が話している時に注意して聞くようになります。文字が苦手でないのなら教科書も楽に読めます。大事なことを要約して、自分の言葉で伝えるという力が自然と身につくようになります。
この基本の力をしっかりと鍛えておけば、「勉強を大変」と思わないし、成績も良くなると思います。自分は勉強ができると感じれば、勉強は嫌いにならないのです。

そして、学びたい気持ちを育てるためには、好奇心を絶対に殺さないことです。目の前に机があると「どうやって作ったんだろう?大工さんかな?工場かな?」と、何を見ても想像や質問がいっぱい出てくる子どもに育てましょう。そうすると子どもは永遠に学習欲を持ちます。沢山知識があれば、周りからも「面白い人」「頭がいいな」と言われます。そして、何よりも大事なのは、自分の人生が豊かになります。

子どもを観察して、合った勉強方法を見つけよう

子どもによって勉強しやすい方法は違います。「うちの子は勉強しない!」と思っている保護者もいますが、勉強のやり方が子どもに合ってないだけかもしれません。私たちには、勉強とは机に向かって静かにするものというイメージがあります。まさに、長男がそのタイプです。ドアを閉めて静かな場所で、机に向かって勉強します。次男は読むよりも耳で聴くことが好きで、声に出して読むと覚えやすいです。三男は静かな場所では集中できません。みんなが別のことを話しているようなざわざわした場所で、寝っ転がったりして勉強します。

私自身は歩きながら勉強するのが好きです。原稿を書く時も、場所を移動しながら書きます。「この喫茶店で8ページ書いたら次のカフェに行こう」とカフェの梯子をするのです。場所を移動しながら書くことが多いです。

必ずしもみんなが同じ方法で勉強をすることが良い事ではないのです。一人で勉強したい子もいれば、みんなで一緒にやりたい子もいます。子どもによって勉強方法は違うので、自分の子どもを理解してサポートしてあげることが必要です。子どもをよく見ていたら、その子にあった方法を見つけることができると思います。

プレッシャーをかけすぎず、子どもの選択肢を尊重すること

もし、子どもが受験生なのにのんびりとしているように見えても、プレッシャーはかけすぎない方が良いと思います。まずはどうして受験するのか?パパとママが望むから?それとも子ども自身がその学校に入りたいために?パパとママのための受験なら、子どもが乗り気にならないのは当然です。まずは子どもを説得して、子どもが受験に意味があると納得する事が大事です。

学校に入れなくても世の中にはいろいろな生き方があるし、大学に行かなくて大成功する人もいます。ストレスで世の中が嫌になったり、身体を壊してしまったりしては台無しです。大事なのは精神と身体の健康です。これさえあれば、親として文句ありません。だから、子どもがストレスなく勉強できるようないろいろな方法を試してあげてください。

子どもにやる気がなければ、無理してやらせるのはお勧めできません。子どもがやる気が出るように、子どもが本気に入りたい学校を探すべきです。入りたい学校が決まったら、合格した時の事を想像して見ましょう。「通学している自分は素敵」と自分の姿を描くことができた段階でやる気が出てきます。子どものやる気が出たら、半分くらいの苦労で済みます。たとえ失敗しても、やるだけやったと達成感はあると思います。親からのプレッシャーではやる気は起きません。たとえ親と違う理想を持ったとしても、子どもの選ぶ道を尊重することが大切です。

勉強は人生の全てではないです。でも学習は人生の中でとっても大切な事。学習意欲がある限り、子どもは大丈夫です。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

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