2020.06.11
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素朴な見方・考え方を「同じ」として捉え直す 統合の考えを伸ばす算数学習

算数の学習における「見えない同じ」は、状況が変わった時に、今と過去を比べることで見えるようになってくることがあります。今回は、数学的な見方・考え方の見えない同じに着目します。異なるものをある観点から見て同じものとしてまとめる思考を、統合といいます。指導要領の算数科の目標にも出てくる言葉です。統合というと難しそうなイメージですが、子どもの持つ素朴な見方・考え方を言語化しておくだけで、統合する必要感が生まれた事例を紹介します。

名古屋市立御器所小学校 教諭 松田 翔伍

「共通点は?」と尋ねればいいんでしょ?

統合すると、どんなよいことがあるのでしょうか。まず、見方・考え方をばらばらのままにしておくよりも、1つにまとめておいた方が思考の節約になります。また、問題を発展させていこうとする態度を育てていくためにも、まずは統合を意識すること大切です。とはいえ、教師が「1つにまとめればいいんでしょ」と考えて、問題解決後に「これらの考え方の共通点は?」と尋ねていくだけでは、自分から「同じ」を見出そうとする態度は育ちません。
統合を意識すると、「共通点は?」という発問ばかり思い浮かべてしまう私は、まだまだ勉強不足。しかし、この発問ではない方法で、これまでの実践で手応えを感じたこともあります。5年生「整数と小数」の授業でのことです。

素朴な見方・考え方を言語化しておいた

私は、年度始めにノート指導も兼ねて次のような簡単な問題を解かせ、書き方を指導していきます。
 205×10=2050
 205×100=20500
 205×1000=205000
「簡単だよ」とつぶやく子どもたち。私は、「どうして簡単なの?」と問い掛けました。「×10や×100は、0をつけるだけでいいから簡単です」と、理由を説明してくれました。続けて次のような問題も出しました。
 701000÷10=70100
 701000÷100=7010
 701000÷1000=701
ここまで解いて、「何か気付いたことがあれば、ノートに書きましょう」と指示を出しました。「わる数が増えると、商は減っていく」「わる数の0の数だけ、わられる数の0を消せば答えになる」。このような気付きをノートに書いてくれました。

この授業の最後に、「今日の学習の中で、他の場面でも使えそうな考え方をまとめましょう」と言って、それをこの授業のまとめをしていきます。
この日のまとめは、「10倍、100倍、1000倍すると、0が増える。÷10、÷100、÷1000すると0が消える」になりました。これが私の考える素朴な見方・考え方です。子どもたちは、この段階では、×10、÷10などの計算は、0をつけたり消したりするというイメージを強く持っています。そのイメージをあえて強くするために、言語化させておきました。

整数の場合『も』!!

「整数と小数」の学習の第2時です。 「1枚2.09グラムの紙があります。この紙、10枚、100枚、1000枚の重さは何グラムですか。」という問題です。 小数でもこの手の計算は学習済みです。多くの子が、次のように正答を導き出しました。

 2.09×10=20.9
 2.09×100=209
 2.09×1000=2090
ここで、気付いたことを発表させます。すると、「10倍、100倍、1000倍すると、小数点が右に1つ、2つ、3つと動いていく」という小数点の移動に着目した見方に気付いていきます。

ここですかさず、「整数の時は、10倍、100倍、としていくと0が増やしていくと考えればよかったけど、小数の場合は仕組みが違うんだね」と投げ掛けてみました。すると、「いや、仕組みは同じです」「整数の場合も……」と整数と小数を比べようとする言葉が出てきました。「整数の場合もと言ったけど、何が『も』なの?」と問い返しました。子どもたちは、整数の場合も小数点の移動とみればよいことを説明してくれました。

この場面で、「たとえば、12×10=120があったとします。12の右には見えない小数点があって、それが右に1つ動くと考えればいいんです」と、例示しながら説明してくれたことを覚えています。話は逸れますが、自分で数を持ち出して例示しながらする説明は、とても価値あるものです。

この日の授業のまとめは、「整数でも小数でも仕組みは同じ。10倍や÷10をしたときには小数点が動いたと見る」になりました。さらに、整数の場合を小数点の移動と捉え直すことで、0.25×100=250のような0をつけ忘れてしまう誤答を減らすことができます。0をつけたり消したりするのではなく、小数点の移動と見ていく方法が強く印象に残ったのでしょう。

「見えない」から、言語化するためにまとめる

今回は、子どものもつ素朴な見方・考え方を、復習問題の解決を通して言語化することにより、統合の必要が生まれた事例を紹介しました。

見方・考え方は、言葉で出来ています。普段は見えないのです。だから、「まとめ」をして言語化していくのだと、私は考えています。また、見方・考え方は繰り返し働かせることで成長していきます。教師は、教材研究する際に、その見方・考え方をいつ使ったのか、どれくらいの頻度で使ったのかという視点を持つ必要があるでしょう。逆に、今日の授業で働かせる見方・考え方が次のどんな学習で生きるのかという視点も必要です。いずれにしても、子どもにとって無理のない素朴な見方・考え方が成長していくような授業をしていきたいです。

松田 翔伍(まつだ しょうご)

名古屋市立御器所小学校 教諭
すべての子が考える楽しさを味わえる算数学習を目指し、面白い問題の開発や指導法、子どもとの関わり方について毎日考えています。「できる」「分かる」だけではない、「楽しい」算数授業について私と一緒に考えてみませんか?未来を生きる子どもたちの笑顔のために。

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