2020.05.08
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休校中のサポートは誰のため?

新型コロナウイルス感染症の拡大で休校期間がだいぶ長引いています。期間中の学習支援や心のケアなど、さまざまなサポートが話題になり、どの学校でも皆で知恵を出し合い創意工夫していると思います。そんなサポートのあり方について、考えたことを書きました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

いろんなアイディアが

休校中のサポートについてはニュースやSNSの投稿など、さまざまなところで目にするようになりました。ICTを駆使したものから、郵送などアナログなものまで、地域や学校事情によって千差万別ですが、本当に苦労しながら考えられているんだなぁと、改めて感じました。

(1)そもそもやっていたところでは
生徒が1人1台タブレット端末を持っていたり、オンラインの教育サービスを全員が利用していたり、このたびの休校前からICT活用が進んでいた学校では、それをさらに強化する形で学習・生活サポートが行われています。
動画配信では、授業動画や入学式、SHRなど、さまざまな場面に活用されています。また、配信される動画も、通常の授業1コマ分をそのまま配信するだけではなく、要点のみを解説したり、授業プリントと併用したりするなどの工夫がされているようです。また、オンラインでの会議アプリ等を利用してHR活動を行ったり、教科に関する質問会を行ったりするなど、一方通行でない双方向のやり取りも実現できます。さらに、生徒からの成果物の回収でも、教育系のオンラインサービスを活用して提出、添削、採点といったところまでサポートしている学校もあります。

(2)環境が十分でなくとも
他方、ICT環境が十分整っていない学校であっても、現時点でできる支援ということで、最大限の工夫をしているようです。郵送や電話連絡といった対応はもちろんですが、そこにでき得る範囲でのICT活用を組み合わせている学校も多いです。
例えば、学習教材や指示は郵送にして、その中に既存の無償サービス(動画、学習サイト、参考資料など)へのアクセス方法を記載したり、質問やレポートの提出をメールやウェブ回答、郵送によって求めたりするものです。全国的に注目されがちな(1)のような事例を見て、「うちはICT環境がないから……」と諦めず何とか工夫しようという先生方の想いが表れている感じがして、こちらも素晴らしいなぁと思います。

目的を忘れずに

前述のようなさまざまなサポートがある中、少し気になることがあります。休校前ですと、授業がニュース等で取り上げられると、生徒たちの姿が中心になっていました。授業に臨む表情や態度、事後の感想などが中心に紹介されるといったケースが多かったと思います。一方、このたびの休校中のサポートについては、生徒側の様子がほとんど紹介されていないと思います。動画配信している教員の姿、会議アプリでHRをしている教員の姿、工夫してつくったプリントなどの紹介が多いのではないでしょうか?現実問題として、生徒側の様子を紹介することは難しいのだと思いますが、実際の生徒たちの学びの様子はどうなのかな?と気になります。

教科の学びもそうですが、例えば「総合的な探究の時間」では、さまざまな知識・技能を活用して生徒が主体的に何らかのテーマを掘り下げていくような活動が求められていたはずです。ですが、休校で生徒が登校できない・授業が進まない焦りから、一方的に大量の情報を送り続けてしまい、生徒はそれを受け取るだけで精一杯になり、やることはすべて指示されるといった感覚に陥ってしまうのも困りものです。そのように考えると、サポートのあり方にさらなる工夫が必要になるかもしれません。

最後に

前回の記事では授業を通して生徒につけたい力について記事を書いています(下記リンク参照)。
「年度初め つけたい力は?」

さて、私は「発信力」をつけたいと考えているわけですが、休校中の学習支援の内容がそれに沿っているだろうか?ということも考える必要があるかな~と思います。

こうした工夫のあり方は休校に関係なく、常日頃の教材研究と同じであり、終わりもないし正解もないのだろうと思います。ただ、このような視点での検討・改善を忘れてはいけないと思い、記事にしてみました。全国で休校中のさまざまなサポートをされている皆さんは、それを受けている生徒たちの姿をどのようにイメージしているでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。全国的に休校措置がなくなることを祈るばかりです。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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