2020.05.30
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オンライン授業を実施して~子どもも、教師も学びをとめない~

熊本市では、各小学校にタブレットが3人に1台配備されています。
本校は2019年度からタブレットが導入され、授業や学力テストの結果分析・活用などに使ってきました。3月の休校の段階からZoomが使われ始めました。
卒業式は、来賓と在校生の参加なし、卒業生、保護者、教職員のみの参加でしたので、Zoomを使って、用事で来られない保護者の方等向けに卒業式を中継しました。
2020年度4月の休校からオンライン授業を行うことになりました。誰もが経験していない初めての経験。試行錯誤の連続でした。
新型コロナウィルス感染症による、第二波、第三波がきて、また休校にならないことを祈りながら、オンライン授業を実施してきて感じたことをつづっておきたいと思います。

熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二

3年生以上の全員に授業を達成するためには(環境調査)

3年生以上の全員にオンライン授業を受けてもらうことを目標としました。そのためには、環境調査をしなければなりません。
まずは、4、5年生に学校にあるタブレットを貸し出し、授業を開始しました。健康観察プラス1日1コマ程度の授業。教師も子どもも慣れることから始めました。

その間に、3、6年生では各家庭のタブレットやスマホ、PCを使って、どの程度Zoomに参加できるかを調査しました。
臨時登校日を使って、4、5年生のタブレットを回収。今度は3、6年生にタブレットを貸し出して授業をし、4、5年生で同様の調査をしました。調査を何度か繰り返して、学校のタブレットと各家庭の機器を使えば3年生以上全員の授業が可能と分かりました。
そこで、5月に入り、健康観察と1日1時間2コマ程度の本格的な授業が始まりました。最初は「つながらない」「よくわからない」などの電話が多くあり、対応が大変でしたが、だんだん減少し、5月11日の週からはほぼなくなりました。

試行錯誤の連続が連帯感をうむ

毎日が試行錯誤の連続でしたが、みんなで話し合っていくと、さまざまなアイディアがうまれます。
例えば最初、健康観察は各クラスの教師のIDでZoomに入るため、そのまま授業でも3台のタブレットを使って撮影する形でした。Zoomの有償機能活用が5月末までに延長されたこともあって(時間制限なし、人数は300人まで)健康観察のあと、その授業を行う教師のIDで入り直すことにしました。1台のタブレットで済むわけです。その分、他の教師はアシスタントにまわることが可能になりました。
モニターはタブレットでは子どもの顔が一画面9人が最大ですが、学校のPCでは25人。子どもの顔を見やすくなりました。
win winの関係もうまれます。若い先生はICTは得意です。「ICTはちょっと……」と思われるベテランには経験値があります。
若い先生が開発してくる技について、ベテランは「これはこう使えば効果がある」と考えたり、「こんなふうにできないかな」と提案したり、経験をもとにして考えていきます。そして、授業に生かしていきます。
若い先生は、ベテランの授業を見ながら学ぶことが多くなります。私が若い頃、先輩の授業を見て学ぶことが多かったような形がうまれています。
まさに、試行錯誤の連続が連帯感をうむます。ファイルをMicrosoft Teamsで共有しながら、チームになっていくのです。

理科の授業づくり 試行錯誤が向上心をうむ

その日の方向性を示す(上)と使用動画のキャプチャー(下)

その日の方向性を示す(上)と使用動画のキャプチャー(下)

理科の授業は、正直準備が大変です。外出自粛中なので、観察をすすめるわけにはいきません。実験も「みなし実験」となります。「観察」と「実験」をそがれる理科授業。
授業に使うための動画撮影にはものすごく時間がかかります。例えば、「空気の流れを線香の煙を使って見せる」は相当に困難です。
さらには、それを使って構成するにはものすごい時間がかかります。最初は1コマの授業をつくりあげるのに数日かかりました。
教材研究をしていくうちに「ここはこういうふうに見せる」「こんなふうに提示する」などの新しい発見がうまれてきました。
特に効果があったかと思うのは、以下の2点です。
1 今日の方向性を最初に示し、進めていきながら提出する課題を最後に示すようにする
2 視点を与えて、動画を見せること
試行錯誤の連続ですが、もっといい授業をするためにはというモチベーションが高まり、向上しようとする気持ちが高まっていきました。

オンライン授業で心掛けること 

予想の場面で、少人数での対話を取り入れる

予想の場面で、少人数での対話を取り入れる

オンライン授業で特に心掛けることを5つ挙げます。
① ねらいをハッキリさせること
② 子どもたちの願いや思いをできるだけ入れること(主体的な学び)
③ 双方向の授業を心掛けること(対話的な学び)
④ 再開に向け、できるだけシステムを確立すること
⑤ 1コマに1回は笑いがうまれる授業にすること

①については、授業をする上では当たり前なのですが、オンライン授業ではもっと大切になります。「何を教えて、何を考えさせるか?」「そのためにはどんな仕掛けをするか?」綿密に計画をたてておかねばなりません。
授業時間が25~30分程度なので、指導案を書き、授業のシナリオを一字一句書き出し、授業をビデオに撮影して、後で反省をする、こんなことをしています。
②については、授業支援クラウドで提出された子どもたちの考えや思いから、次の問題をうみ出す工夫をするようにしました。
③が最も難しいです。本校では学年合同で授業をしています。例えば、6年生は120人以上となります。残念ながら、全員の発言を取り上げることは困難です。Zoomのブレイクアウトセッションで意見を交流する場面をできるだけ確保するようにして、少人数で交流することで、少しでも対話的な学びに近づけようと工夫しています。
④については、ノートの書き方を指導したり、オンライン授業でもチャイムを鳴らしたりして、ルーティンを決め、学校再開後を見据えたシステムの確立を目指しています。
⑤については、アイスブレイクや効果音などの小ネタを入れたり、オーバーなリアクションをしたりして、楽しい雰囲気をつくりあげようとしています。

成果と課題 

現時点で考えられる成果と課題を挙げてみます。
<成果>
〇子どもたちと教師、子どもたち同士をつなぐことができること
〇家庭学習プリントを印刷する量がかなり少なくすんだこと
〇有名な先生の授業ビデオ、優れたコンテンツなどはもちろん有用であるが、子どもたちを把握しているその学校の教師が授業する良さを味わえること
<課題>
〇授業時間が短いので(25分程度)言葉を削る必要があること
〇保護者が一緒の場合もあり、常に授業参観の雰囲気であったり、慣れていなかったりすることもあって、授業に疲れをいつも以上に感じること
〇Zoomでは、子どもたちからの起案が難しいこと
〇全員の状況を把握することは、かなり困難であること
〇さまざまな子どもがいるので、個に応じた対応が大変なこと

ブレイクアウトセッションに加えて、授業のあと、質問がある子どもには「質問タイム」を設けて、そのままZoomに残ってもらったり、午後から、今日の学習がよくわからなかったという子どもがZoomに再度入ってくるような機会を設けたりして、できるだけ課題を解決しようと工夫しています。

まだまだ、問題点が多いオンライン授業です。第二波、第三波の休校で、全国各地でオンライン授業とならないことを祈りながら、今回の休校でのオンライン授業についてまとめてみました。


笹原 信二(ささはら しんじ)

熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。

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