こまめな振り返り
全国各地で臨時休校からスタートした今年度ですが、ようやく1年の半分が終了、2学期制の学校では前期が終わり後期の授業が始まっているかと思います。年度当初はバタバタしたものの、現在は比較的落ち着いて授業や部活などが行えている学校も多いのではないでしょうか?
一方、年度当初の授業の遅れに対する危機感もあり、できるだけ早く遅れを取り戻したいという焦りもあるかもしれません。そんな状況下で、教員はもちろんですが、生徒はどのように感じているのか?こまめな振り返りが大切だと思います。
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
やはりイレギュラーだった今年度
(1)授業スタイルの変化
ペアワークやグループワーク、発声、教具の共用など、これまで当たり前のようにおこなってきたものにも対応が必要になりました。逆に、オンラインや映像資料の活用、書く活動など、感染予防の観点から行いやすい活動も注目されました。十分な時間をかけての変化というより、コロナの流行によって急に求められた変化であるため、現場としてもだいぶ苦慮して対応しているのが実情です。心配なのは、授業中の他者との対話が減ることで、価値観の共有の機会が少なくなり、集団で学習する学校ならではの、自分以外の多様な価値観に触れるという貴重な体験が失われることです。
(2)学校行事の変化
授業の遅れや感染予防の観点から学校行事を縮減したり、やり方を変更したりする学校が増えました。行事が変われば、それに向けた準備も変わるので、その影響は行事当日だけにとどまりません。
(3)部活動の変化
授業の再開がなされても、部活動の再開までは時間を要した学校も多かったと思います。また、そのあり方も従前と同じというわけにはいかず、様々な面に配慮しながらの実施になっていると思います。それは、部活動中の感染予防という観点はもちろんですが、夏休み短縮や放課後の補充授業などで生徒の負担が例年より増えており、さらに休校中に十分な運動ができていない状況で、「感染予防は徹底しているから、あとは例年どおり……」というわけにはいかないでしょう。
(4)休日の過ごし方の変化
生徒たちの生活の変化は学校だけではなく、平日の放課後や休日にも及びます。例えば、授業進度が例年より速くなれば、それに追いつくための予習・復習で放課後や休日にしわ寄せがくることにもなります。また、学校行事や部活動が縮減されれば、これまでそれに割かれていた放課後や休日の時間がなくなり、自由な時間が増えるかもしれません。友人との外出や遠方への移動を控えようという気持ちになれば、1人で家で過ごす時間が増えることに繋がります。
このように、今年度が異例だというのは、授業だけではなく様々なものに及び、学校にいる時間だけでもありません。だからこそ、我々教員はもちろんですが、生徒はどう感じているのか?困っていることはないか?例年と違った課題はないか?こまめに振り返っていく必要があると思います。
振り返りには良い時期
振り返るといっても、年度末に振り返ったところで、それを生かす道は限定されてしまいます。今なら、年度のちょうど中間地点であり、見えてきた課題を後半に生かすという意味でも、非常に良い時期だと思います。もちろん、毎時間の授業や行事で振り返りをすることもあると思いますが、それとは別に、ある程度中長期的なスパンでの振り返りで見えてくるものもあります。
私が振り返りのアンケートを実施する際は、現状分析と今後の展望の2点を書いてもらうようにします。現状分析だけだと、どうしても自分を責めるような記述や愚痴のような記述に終始し、建設的な考えに繋げられない人が出てしまうからです。
(1)現状分析
授業であれば、とりあえずは「ついてこられているか?」というシンプルな問いかけをし、その理由もあわせて記述してもらいます。また、授業中の小テストや定期考査の後であれば、それに対する取り組み具合と理由などです。休校による遅れを取り戻そうと、速く進み過ぎていないか?定期考査前の様子から、他教科とのバランスを考えた範囲・出題だったか?など、いろんなことが読み取れるはずです。また、部活動でも、体力的についてこられていない生徒はいないか?学習とのバランスがとれた活動になっているか?活動内容は生徒のやりたいという気持ちに添っているか?などを確認できると思います。普段の生徒とのやり取りではうまくいっているつもりでも、アンケートをとってみると新たに見えてくるものもあるかもしれません。
(2)今後の展望
授業であれば、今後どのように学習を見直すか?どんなことを目標とするか?といったことを年度途中で書いてもらうことで、現状分析にとどまらず、後期からの授業で自分がどうしていくかを考える機会にしてもらいます。部活動では、どんな練習を取り入れたいのか?次の大会ではどんな目標を立てるか?といった具合でしょうか。アンケートは実施する教員が参考にするのはもちろんですが、生徒たちにも、それを機会に様々なことを考えてもらうというのが大切だと思います。
ただ、アンケートをとることが目的ではなく、現状を把握することと、それを後期に生かすことが最大の目的です。とったからには、どのような形であれ、それ以降の取り組みに生かさなければいけません。
アンケートがすべてでない
私たち教員は、普段から授業や行事、部活動において、観察法により生徒の様々な部分を見取っているはずです。特に、1番近くにいるHR担任や教科担任、部活動顧問は、言葉にできない微妙なニュアンスや感情までも理解し、それぞれに応じた細やかなサポートをしていると思います。確かに、アンケート調査では目に見える文字や数値で結果が見えるので分かりやすいです。また、観察法で見落としてしまう部分を補完できるというのも大きいです。しかし、普段から生徒と対面で接することで声にならない声も含めて見取るという、教員の最も大事な部分の一つを疎かにしたのでは本末転倒のような気がします。「いつも見ているから大丈夫」という教員の勘に頼った判断も危険ですが、同様に、「アンケートでは何も書いていないから大丈夫」という判断も危険だということです。両者の特徴を理解し、うまく使い分けていくことが重要だと思います。
さて、今年度後半が始まりましたが、皆さんは前半をどのように振り返っていますか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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